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異世界行っても面倒なものは面倒  作者: くもりのちはれ
9/39

召喚祭じゃあああ!!

 

 side.祐志


「ふぁ〜・・・」

 欠伸をしながら、街を歩く。

 俺は今、キースさんの家に向かってる。ついでにあの絡んできた酔っ払い共も探しながら。

 確かこの辺だと記憶にあったらしいが・・・同じような家が多くて分かりにくい。えっと、ここかな?

 扉をノック、しようとした瞬間に。酔っ払い共の一人を見つけた。

 こっちを見つけて、走って行った。仲間を呼びに行ったのかな?

 まあ、後でいいや。今はこっちの用を片付けよう。


「すいませ〜ん、キースさんのお宅ですか〜?」

「は、はーい」


 扉を開けて出てきたのは、小学生くらいの背丈の少女。金髪で青い目をしている綺麗な少女だ。

 何の用だと言わんばかりの表情で俺を見てくる。まあ、今8時くらいだしな。この世界では9時10時が基本的就寝時間らしいから、仕方ないが、あまりいい気分ではないな。


「キースさんのお宅で合ってるかな?」

「はい・・・」

「良かった、この手紙お母さんに渡してもらえるかな?お父さんからだ。すぐに読むように伝えてね。」


 手紙を受け取ると少女はすぐに扉を閉め、バタバタと母親らしき気配の元に走る。

 ずいぶん用心深いな。嫌いじゃないよ?



 しばらく扉の前で待っていると。

 キィ、と小さく音を立て、扉が開いた。

 中から出てきたのはさっきの少女をそのまま成長させたらこうなるだろうな、といった感じの美人さん。お母さんかな?だが顔色が少々悪い。


「娘が失礼しました、どうぞお入り下さい。」

「手紙は読まれました?」

「はい、少々震えてましたが、間違えなく夫の字でした。」


 ならば、入らせて貰うことにしよう。変なのに見つかりたくないからね。

 さっきの娘さんと奥さんの正面の席を勧められ、テーブルにつく。


「すいません、夜分遅くに。あ、ユージと申します。

「キースの妻、シルナです。この子は娘のシャクティです。あの、夫は大丈夫なのでしょうか・・・」

「キースさんは少々事件に巻き込まれましてね。今は城で陛下に保護されているので、大丈夫です。怪我もしていません。ですが、命の危険もあるかもしれませんので、城から出れません。」

「そ、そんな!ッツ、ゴホッ、ゴホッ!」

「お母さん!」


 動揺して、症状が出たか?

 どんな病気なのかは分からんが、さっさと治した方がいいか。


「シルナさん無理をなさらないで。シャクティちゃん、ベッドにお母さんを運べるかい?」

「え、ええと、それは・・・」

「だ、大丈夫よ、シャクティ、すぐ収まるわ。心配、いらない・・・」


 ふむ。

 しばらく咳き込むと、シルナさんの咳はおさまった。


「す、すいません、最近身体が重くて・・・」

「いえ。実はそのことをキースさんに頼まれましてね。僕の知り合いに少々回復魔法の心得がある人がいるんです。よければ、呼んで診させてもらってもいいですか?」

「え?夫が?ですが、初級、中級の回復魔法では効かなかったのです。お気持ちは嬉しいのですが・・・」

「少々普通とは違う回復魔法なのです。なに、きっとすぐに治りますよ。」

「で、でも・・・」


 まあ、渋るわな。想定内だが、納得させるのは難しい。さて、どうするか。

 すると、シャクティちゃんが俺につっかかってきた。


「そ、そんなこと言ってあなた何する気よ!まさかお母さんを・・・そんなことさせない、お父さんの知り合いだかなんだか知らないけど、あなたなんか私が・・・!」

「ケホッ、や、止めなさいシャクティ!」


 ちょ、手に魔力集めないで!家で魔法打つのはダメだろ!

 シルナさんが抑えているが、魔力はおさまっていない。さて、どうするか・・・。


「いやいや、そんなことするつもり無いよ、そんなことしたら俺君のお父さんに殺されちゃうよ。」

「な、ならお母さんの治療に私も立ち会う!変なことしたらタダじゃおかないから!」



 え、マジ?どうしよう。あいつ大丈夫かな?

 とりあえず、その知り合いの回復魔法の使い手を呼ぶと言って、家の外に出る。

 人がいない裏路地に入り、辺りを確認。

 右よーし、左よーし。一番、浮雲祐志、行きまーす。

 パンっ!

 俺は魔法を発動する時、ルーティーンとしてどこぞの鋼の錬○術師よろしく、両手を胸の前で合わせるようにしている。そうした方がイメージがしやすいからだ。別に無くとも出来るが、俺はそれが無きゃ魔法が打てないと思わす意図もある。


「召喚。来い、馬肝入道(ばつかんにゅうどう)」


 魔法陣を地面に展開。そこから俺のイメージした妖怪が出てくる。

 現れたのは、天狗のような鼻をした、赤い目の和服の老人。

 これが馬肝入道だ。


「お呼びかな?主殿。」

「ああ、治してもらいたい人がいる。お前なら出来るだろう?」

「ホッホッホ、そうですな、いいでしょう。主殿の頼み、断る理由がありませぬ。」

「頼む。それと、治す時にその人の娘さんがいるんだが・・・」

「分かっておりますよ、死なせないようにすればいいのでしょう?儂らは主殿から生まれた存在、主殿の記憶も承知しておりますよ。そう心配なされるな。」


 中々話の分かる爺さんで良かった。

 そう、俺が呼び出した妖怪達は皆、召喚されるまでの俺の記憶を持って召喚される。だから話が早くて助かるのだ。



 裏路地を出て、また家にお邪魔する。

 2人は馬肝入道に驚いていたが、熟練の回復魔法の使い手だと説明して、納得して貰った。

 シルナさんには寝室のベッドに横たわって貰う。


「さて、始めますかのぉ。」

「お、お願いします」


 流石に老人に魔法を打つのは気がひけるのか、シャクティちゃんはぺこりと頭を下げる。俺との扱いの差が・・・。


(主殿、このおなごのステータスを見てくれ)


 ん?なんだ?ステータス?どれどれ・・・。



 シルナ 28歳 女 状態:毒


 Lv28


 種族:人族


 職業:町人


 適性:水


 スキル:家事Lv3、算術Lv2



 一般人のステータスってこんなものなのか。

 って違う違う!状態:毒っておま!これは・・・。


(うむ。まあ心配はいらん、すぐに取り除ける。後のことは主殿に任せるぞ。)


 分かったよ。ったく、面倒な・・・。

 馬肝入道はシルナさんの腕に手を当て、呪文を唱える。唱え終わると、手を少しづつ遠ざける。すると、腕から黒く濁った何かが出てきた。


「それか?」

「うむ。お嬢さん、気分はどうかね?」

「なんだか気分がいいです・・・あっ、身体が軽い!すごい、まさか本当に・・・」

「治ったの⁉︎お母さん‼︎」


 見るからに顔色も良くなったな。

 馬肝入道は、病にかかった者を瞬時に治してしまう能力を持つ妖怪だ。もう一つ能力はあるが・・・今はいらんな。

 これで約束は果たしたな。


(馬肝入道、お前にはもう一つ頼みたい仕事がある。)

(ふむ、あの酔っ払い共の始末ですか。承りましたぞ。)


 馬肝入道が外に出ようとすると、抱き合って涙を流していた親子が気づき、お礼がしたいと言い出した。

 しかし、馬肝入道は丁寧に断る。


「そのようなものはこの年寄りにはいらない。儂をここに連れてきたのはこの者じゃ。礼ならこの者にしなさい。」


 そう言って家を出て行った。

 やべー、我が眷属ながらカッコええ。なんだあのイケメン。



 親子が落ち着くのを待ってから、ここに来たもう一つの目的を話す。


「実は、キースさんにもう一つ頼まれたことがありまして。貴方方を安全なところに送り届けることです。」

「安全なところ、ですか?何故私たちが?」

「キースさんを狙って、追っ手がこの家に来るかも知れません。だから、避難して欲しいとのことです。急ぎで悪いのですが、今すぐに必要な物を持って避難しましょう。こうしているうちにも追っ手が来るかも知れません。」

「そんな、私、学校が・・・」

「シャクティ、仕方ないわ、ユージさんのおっしゃる通りにしましょう。」

「シャクティちゃん、学校なら、俺が掛け合ってなんとか頼んでみるよ。」

「は、はい。」


 この人達になんかあったら、俺が約束破ったことになっちまう。約束ぐらい守らなきゃな。


 しばらくした後、必要な物をまとめた親子を連れ、家を出る。怪しい奴がいないことを確認しながら適当に裏路地を入っていく。親子は少々怯えながらついて来ている、裏路地は危険な奴やスラムの人がいるから、警戒しているんだろう。

 もちろん、そういうのがいるところは確認しながら避けて進んでいる。

 ここらでいいか。


「隠蔽の魔法を解きますので、目を閉じていて下さい。なるべく人には見られたくないのです。」


 親子に目を閉じさせ、さらに聞こえないように小声で召喚する。

 パンッ。


「召喚、マヨイガ」


 魔法陣から黒い門が出てくる。

 マヨイガ、当て字で迷い家は、山中にいきなり人の前に現れる家の怪異だ。害はなく、むしろ暖かく迷い人を迎えてくれる。無欲な者には富を与えるが、欲を欲したものにはマヨイガを見つけることさえ出来ない不思議な家だ。

 親子に目を開けるように言う。


「もう良いですよ。」

「・・・えっと。門しか無いのですが。」

「入れば分かりますよ。」


 俺が門に入っていくと、後を追って親子も戸惑いながらも入る。

 すると・・・。


「不思議・・・。」

「わぁ・・・。」


 そこには日本の田舎にあるような、木製の屋敷があった。

 いつまでも立っているのも疲れるし、時間が無いので、中に入るよう促す。

 そろそろ10時に近い。宿に入れなくなる!俺は今日はベッドで寝たいんだ!


「これは・・・。」


 家の中は、まるっきり日本の古屋敷そのものだった。いや、外観見た時から予想はしてたけど。


「不思議なお部屋ですね。」

「なんか、落ち着くなぁ。」


 気に入ってくれたならいいけど。こっちの人は生活出来るのか?


「俺はそろそろ行きます。ですが、俺が出ていけば事件が解決する数日間はこの屋敷からは出ることが出来ません。忘れ物はありませんか?」

「ありません、でも、食料やこのお屋敷のお掃除は・・・。」


 確かに、その辺は気になるな。どうなんだろう、俺が毎日持っていけばいいのか?


(主様、心配いりません。食料は常に減りません。掃除や私の中でのマナーは、申し訳ありませんが、他の妖怪を召喚して頂ければ・・・。)

(ん?お前、マヨイガか?)

(あ、はい、ご挨拶が遅れました、マヨイガです。)


 まさか無機物にも意思があるとは。いや、期待はしてたけど。でもこの手の怪異って狸とかが化けたものが多いし、不思議じゃないのか?


(私は化けてませんよぅ、正真正銘マヨイガです、グスッ)

(ああ、悪かった、俺が悪かったから、泣くな。)


 ゴメンよマヨイガ。ていうか泣くの?


 シルナさんに食料の心配は無いことを伝えると、不思議な顔をされた。そんな顔になるのは分かるけど。

 それよりも、お世話係を誰にさせるか。決まっている、あの子だ!

 ちょっと屋敷の中を確認してくる、と言って親子の目から離れる。

 別の一室に入り、イメージを固める。よし。


 パンッ。

「召喚。おいで、座敷わらし。」


 魔法陣から、おかっぱ頭の可愛らしい少女、いや幼女が出てくる。シャクティちゃんより小さい背丈だ。にしても、みんな人型は和服なのかね?当然だとは思うが。


「えっとぉ、おにーさんが、あるじさま?」

「うん、そーだよ。」

「わぁい、あるじさまだー!えへへ〜」


 抱き着かれた。

 天使や!天使がおるでー!

 っていかんいかん!シャンとせねば!ワシには時間が無いんや!


「座敷わらし、お手伝い、頼めるかい?」

「うん、わたし、できるよー!こーみえて、かじはとくいなんだよ!」


 ええ子や・・・。

 思わず頭を撫でてしまう。えへへ〜、と座敷わらしも嬉しそう。

 イヤイヤ、あかんて。ワシロリコンちゃうねん。

 流石に座敷わらし1人に色々任せる訳にも他の妖怪も呼んでおくか。


「召喚、猫又、化け猫。そして狛犬。」


 一気に呼び出す。最早慣れたものだ。

 召喚されたのは、猫×2、犬と・・・ライオン?


「猫じゃニャーい!」

「そうですニャン!」

「私も犬じゃないし・・・」

「俺も・・・いや、外見はそうだが。」


 分かったから落ち着け。

 一番最初に叫んだのが猫又。尻尾が二つに分かれた黒猫だ。

 二番目が化け猫。外見はただの三毛猫だな。

 三番目と四番目が狛犬だな。ライオンが口の開けた方の狛犬、阿形(あぎょう)。犬が口を閉じた方、吽形(うんぎょう)だ。


「てかお前達、喋れるのか。」

「我らは有名な分、力が強いですから。そういう者は人型でなくとも喋れます。」


 なるほど。


「よーし、猫又と化け猫は座敷わらしのお手伝い。狛犬ズは俺のお手伝い。分かった?」

「りょーかいニャー!」

「がんばろうね、お姉ちゃん。」

「「はっ!」」

「わたしもがんばるー!」


 あ、猫又って化け猫のお姉ちゃんなのね。



 シルナさんとシャクティちゃんに座敷わらしと猫又、化け猫をお手伝いさんだと紹介した後、俺は狛犬ズを連れてマヨイガを出る。

 そして、マヨイガを一度帰す。マヨイガの中にいれば、中の時間は普通に進むので、出なければ問題はない。出たら?分からん。タダでは済まないだろうね。



 マジで10時が近い。走ってじゃ間に合わない。というわけで。


「おおお⁉︎速ぇぇ‼︎」

「主、しっかり掴まって下さい!」


 俺は今、阿形の背に掴まって空を駆けている。めちゃくちゃ速い。時速いくらだよ、これ!


「主、着きました。」

「早っ⁉︎」

「これでも遅い方なのですが・・・。」


 ものの1分ほどで着いた。

 俺があそこまで行くのに10分はかかったのに・・・。


 宿の近くの人気の無い裏路地に降りる。

 流石に宿には連れ込めないだろうし、阿形には帰ってもらうか。吽形は窓から入れば・・・。


「主、俺と吽形が小さくなれば良いのでは?」

「え、出来んの⁉︎」

「他の妖怪達には難しいでしょうが、ある程度変化が使える者ならば可能でしょう。」

「じゃ、頼む。」


 そう頼むと、二匹はみるみるうちに手のひらサイズまで小さくなった。可愛い。

 二匹をズボンのポケットに入れ、宿に入る。


「おかえり、ユージ君。遅かったね。」

「ただいまです、スヨルさん」


 受付には相変わらず店主ことスヨルさん。本当にギリギリだった様で、俺が帰ってきてすぐに扉の鍵を閉めていた。


 ランプを受け取り、自分の部屋に戻る。ポケットから狛犬ズを出し、ベッドに寝転がる。

 流石に疲れていたようで、とても眠くなってきた。


「お休み、阿形、吽形・・・」

「お休みなさいませ、主。」

「後は私たちにお任せを。」


 任せた。もう寝る〜・・・。





獣神祭全然良いの出ねぇ・・・。

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