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異世界行っても面倒なものは面倒  作者: くもりのちはれ
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召喚と暗殺と命の価値と

 

 side.秀


 浮雲君、大丈夫だろうか。

 浮雲君が追い出されて6時間たった。

 あの後、王族の皆さんに浮雲君のことを言うと、「どう言うことだ⁉︎」とさっきの副長さんを呼び出し怒っていて、食事どころじゃなかった。

 副長さんは「明日には呼び戻します」と言っていたが、目には嘲りの色が浮かんでいた。

「呼び戻す」、か。

 彼はどうも他人を見下すきらいがあるな。


「皆すまない、この通りだ。」


 ダレジャンさんに頭を下げられたが、ダレジャンさんは悪くはない。

 そう伝えると、


「いや、部下を管理しきれていない私にも責任はある。明日すぐにウキグモ殿を迎えに行って欲しい。宿は私の信頼出来る部下に調べさせよう。」


 と言っていた。


 僕たちは遅れて昼食をとった後、各自自由にしている。

 僕は図書室で魔法などを調べ中。

 流石お城の図書室、広いね。

 他の皆はなにをしているだろうか?

 特に宇多川さん。浮雲君が追い出されてショックだったようで、元々口数が少なかったのが、余計に喋らなくなった。夢さんが慰めてくれて応答くらいはしてくれるようにはなったけど。

 心配だが、彼女のことは夢さんに任せようか。女性同士だし夢さんは優しいから、話相手にはもってこいだろう。

 しかし彼女は何でそこまで浮雲君に懐いているのかな?面識はここに来るまでなかったようだけど。

 今度聞いてみようかな。


 お、こんな魔法があるのか、今度試してみようかな?






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 side.祐志


「クシュッ!」

「大丈夫かい?」

「あ、はい。鼻がムズムズしただけです。」


 なんだろ、風邪じゃないハズだが。ステータスの状態は良好になってるし。誰か噂した?

 俺は今、宿「熊の手」で夕飯を待っている。

 午後6時の鐘がなったし、街を歩きまわっていたら腹減ったから、帰って来て食堂で食事を頼んだ。買い食い?金が心配なのよ・・・。

 街で面白い物や美味しい物を見つけたから、仕方ない。


 まあ、いいじゃないの、高級宿屋の料理だぜ?楽しみだ。


「お待たせしましたー。」


 来た来た。運んできたのはこの宿屋の娘さん、受付の男の人の娘さんらしい。あの人店長さん?だったのね。


「今日の日替わり定食は『虹エビフライ』定食でーす。」


 エビフライ、だと・・・?

 この世界、エビフライもあるの・・・?

 マジか・・・。

 いや、個人的にはエビフライ好きだからありがとうごさいます。

 大変美味しいです、ハイ。

 ソース?あるの?あ、あるんすか。じゃあ頂きます。

 段々驚かなくなって来た。

 ちなみに、虹エビってのは殻が虹色で、身は普通のエビだから虹色のエビフライではなかった。虹色のエビフライとか怖いけどね。



 腹がいい感じに膨れたので、部屋に戻る。

 そろそろ暗くなってきたので、戻る時に渡されたランプに魔力を込める。すると、ランプの中に光魔法「ライトボール」が出来る。

 このランプには光魔法「ライトボール」が付与されており魔力を込めると発動する仕組みらしい。ちなみに「ライトボール」に攻撃力は無い。アンデット系にはこうかはバツグンらしいが。

 高いものだから、壊したり無くしたりしたら弁証、金貨15枚。

 盗まれないのか、と聞くと、宿から出る時に必ず返してもらう、さらに建物自体に耐性系のスキルが付与されていて、普通なら壊せないようになっているから大丈夫なんだと。

 建物に付与とか可能なんだ。



 さて。眠くなる前にやりたいことをやってしまおう。

 まずはスキル≪感知≫を改良して、≪地図≫にしたい。「スキル作成」、よろしく!

(ユニゾンスキル≪地図≫はスキル≪感知≫、スキル≪鑑定≫、スキル≪空間把握≫のユニゾンスキルです。スキル≪空間把握≫を習得しますか?)

 ハイします。ぷりーず。

(スキル≪空間把握≫を作成、習得します。・・・・・・・・作成、同時に習得しました。スキル≪感知≫、スキル≪鑑定≫、スキル≪空間把握≫をユニゾンし、ユニゾンスキル≪地図≫を習得しました。)

「スキル作成」さんマジパネェっす。マジリスペクトするっす。あざーす!


 ユニゾンスキル≪地図≫・・・スキル≪感知≫とスキル≪鑑定≫、スキル≪空間把握≫のユニゾンスキル。行ったことのある場所やそこにある生物、無生物を地図にして表示出来る。


 褒めちぎったところでもう一丁。

 スキル≪召喚≫を見て思いついたのだが、俺の憧れ、妖怪とか召喚出来ないだろうか。

 普通のスキル≪召喚≫だと契約した魔物を召喚するスキルらしいが、それだと魔物と契約するのが面倒。なら最初から契約状態で強いの召喚すればいいじゃない!あと妖怪と友達になるのは俺の夢です!

 と、いうわけで、どうよ!「スキル作成」!貴様にこの俺の夢が叶えられるか⁉︎

(スキル≪創造召喚≫を習得しますか?)

 出来んのかい!マジか!驚きのあまりマジかしか言えねえ!

 するする!習得しちゃう!

(スキル≪創造召喚≫を作成、習得します。・・・・・・・作成、同時に習得しました。)


「我が世の春が来たぁ!」


 おっと失礼、嬉しさのあまり声が。

 妖怪を召喚してしまえばどんな相手だろうが勝てる!

 クックックッ、フッフッフッ、ファッハッハッ!



 しばらく勝ち誇った笑いをしていたら、落ち着いた。

 とりあえず召喚してみよう。まずはどれを召喚しようか。

 そんなことを考えていると。


「感知」スキルに反応あり。敵対3。

 来たな。昼から俺を交代で見張ってた奴らだ。その時は敵対反応が無く、ただ監視されてただけだからほっといた。宿に入ってからは反応が無くなったから、陛下が送った隠密かなんかだと思ってたが、違ったようだ。あの副長さんかな?しかし、あの人そんな権力あるのか?ない気がするが。

 しかもバラバラに来たな、どう言うことだ?

 まあそれは後だ。そんなことよりどうする。

 なんかいい手、ないかなぁ・・・・・。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 side.キース


 私は今日、とある依頼である人物を監視していた。

 陛下に命じられその人物を監視していたが、その任務が終わった後、とある偉いお方に呼ばれた。そして依頼を受けたのだ。


「監視対象の暗殺」を。


 彼が何故暗殺対象になるのかは知らない。陛下は彼のことを気にかけていたし、見つかっても失礼の無いようにしろと言われていた。素人に見つかるほど低い腕では無いとは自負しているが、陛下のお言葉だ、心にはとどめておいた。心配はいらなかったようだが。

 しかし、その彼を暗殺するとはどう言うことだ、そう聞きたかったが・・・。

 報酬の多額の金に私は何も言えなくなった。あれだけの金があれば、私は・・・。

 しかし、それが貰えるのは暗殺成功者だけだ。

 ならば、どうするか。

 先に暗殺を成功させる。それだけだ。

 同じ依頼を受けた同僚2人による妨害も警戒していたが、彼らは私と争うより、先に暗殺した方が効率がいいと判断したらしい、急いで暗殺対象の元に向かった。

 私も負けるわけにはいかない、彼らの後を追った。


 到着した時には、彼らが宿に侵入するところだった。

 暗殺対象が停まっている部屋は確認済み、さらに明かりが消えているから寝ているのだろう。

 彼らはその周辺の誰もいない部屋の窓の鍵を開け、侵入。部屋の扉から入り、殺すつもりか。

 私は直接窓から行こう。危険だが、こうでもしなければ先に暗殺など出来ない。

 しかし冷静に。急ぎたいのは山々だが、焦っては隠密失格だ。慌てず、静かに急ぐ。

 窓には鍵がかかっているが、この程度の鍵は一瞬だ。

 音を立てずに侵入する。よし、対象は寝ているようだな。同僚達は来ていない、だが一刻も早くしなければ。

 ん?今、足がチクッとしたような・・・?

 いや、それより早く殺さなければ。

 すまない、君に恨みは無いが、死んでくれ。出来るだけ楽に殺してあげよう。

 手にしたナイフを、喉を切り裂こうと振り上げる。

 だがその瞬間、同僚達が入ってきて、妨害しようとしてくる。が、しかし私のナイフの方が速い!貰った!




  しかし、ナイフは喉に触れる前に止まった。いや、ナイフだけではない、私の身体が動かなくなった⁉︎

 ど、どういうことだ、何が起こっている⁉︎

 よく見ると同僚達も固まっている、う、動けない。


「よし、やっぱり出来たか。」


 なっ⁉︎暗殺対象が・・・起きている⁉︎

 まさか、これは、彼が⁉︎

 馬鹿な、どうやって・・・、いや、それもあるが、私達に気がついていたのか⁉︎


「うん?信じられないって顔だね?別にいいよ、信じ無くても。信じようが信じまいが、何も変わら無い。どのみち君らは死ぬ訳だしねぇ?」


 くっ、しまった。このままでは・・・。私はまだ死ねない、私はまだ・・・・・。

 すると、彼は私を見る。


「え?えー、なんで?・・・・・なるほどね。うーん、でもな〜。」


 な、なんだ?誰と話している?私は何も言っていないぞ!


「ふーむ・・・仕方ないかぁ。分かった、この人だけは生かしておこう。後は・・・」


 な⁉︎何故だ?何故私だけ・・・。


「情報は取ったか?よし、ならば用済みだ。楽にしてやれ。」


 そう言って彼が親指で首を切る動作をすると、


「「あ、がああぁぁぁぁ⁉︎」」


 同僚達が苦しそうに唸り声をあげる。そして・・・固まった体制のまま息を引き取った。

 な、何をした⁉︎触ってもいないのに、殺した、だと?一体どうやって・・・?私の知らない魔法か?だか、彼は魔法は素人だと陛下が言っていたし、監視していた時にも魔法なんて使っていなかった。ならば、なんだ、これは?


「あ、死体は適当な路地裏に片づけといて。終わったら帰って来てね。」


 彼が同僚達の死体に話しかけると、死体が動き出し、窓から出て行った。

 な、なんだ?なんなんだコレは⁉︎一体なんなんだ!訳が分からない!


「さーて、お兄さん?だよね?あれ、男だよね?顔とか見えないからわかんないや。違ったらごめんね?」


 お、男だが・・・。


「へんじがない ただの・・・って、ああ、口も封じてたか。お兄さん、うるさくしないなら喋らせてあげる。どう?」


 わ、分かった、分かったから解放してくれ。


「よし。口の中に毒とかカミソリとかは?ない?なら顔は解放してあげて。うん。」


 !顔が動かせる!良かった!


「き、君は一体・・・」

「それより、お兄さん。誰に命令されたのかな?言ってくれない?」

「そ、そんなこと、言えるはずが・・・」

「じゃあ名前言うから、合ってたら頷いてね?オブリン侯爵」


 ⁉︎な、なぜその名が?


「その反応、間違いないみたいだねー。お兄さん本当に隠密?顔に出すぎだよ」


 しまった!驚きすぎてばれた!ど、どうすれば・・・。


「そんなお兄さんに提案。お兄さんの奥さん助けてあげるから、俺に協力してくれない?」

「な⁉︎何故それを⁉︎」


 私の妻はしばらく前に病にかかってしまった。いくら回復魔法をかけても治らない。

 回復魔法をかけてくれた神官が言うには、「この病を治すには、もっと上級の回復魔法をかけるしかない、それには高い金がいる」とのことだった。

 娘もまだ成人していないし、何より私の妻だ。なんとしても治してやりたい。しかし、それには金が・・・。

 そんな時に舞い込んできたのが今回の仕事。この金さえあれば、妻を診てもらえる!そう思って依頼を受けたのだが・・・。

 何故それをこの男が知っているのだ⁉︎


「君の考えてることなんて、筒抜けだよ?思考、読めるから。君をすぐに殺すことも出来るし、操ることも出来るよ?」


 そんな、馬鹿な・・・・・。


「別に信じなくてもいいけど、あの世で後悔するのは君だからね?」


 くっ・・・。


「本当に、助けてくれるのか・・・?」

「ああ、俺の全力をかけて助けてやる。」

「分かった・・・・・。」




「それで、なにをすればいい?」

「とりあえず、帰って陛下に保護してもらいな。あ、あまりしゃべるなよ?君が喋りそうになったら警告はするから。それと、その前に奥さんに手紙書いてよ。しばらく帰れないってことと、俺を信用してもらえるようにして。」

「か、帰れないのか?」

「そりゃあ、依頼失敗したから、口封じに来るでしょ。だから陛下に保護してもらえるように言ってんの。」

「そうか・・・ってことは、妻や娘も!」

「ああ、そっちはなんとかしとくよ、ハイ、書いて。」

「わ、分かった・・・・・本当に助けてくれるのか?」

「どっちにしろ今は君、俺に頼るしか選択肢無いから。」


 悔しい・・・。私が弱いばかりにこんなことに・・・。

 くそっ・・・・・。


「・・・・書けたぞ。」

「ん、ありがと。んじゃお帰りなさいな。俺寝るから。またねー。」


 そう言って私は、宿を追い出された・・・。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 side.祐志


 いやはや、ホントは全員殺しとこうと思ったんだが。まさか、召喚した妖怪に各自意思があるとは思わなかった。

 彼の経緯に同情して、助けてあげて欲しい、なんて言ってくるとは。

 妖怪にも色んなのがいるんだねぇ。

 予定がずれたし、仕事も増えたが、まあいいか。


 俺が今回召喚した妖怪は「応声虫」。伝承では身体に入り、腹の中から本人の意思とは関係なく喋ったり、口のような痣を作ってその口で物を喋り、食事を要求したりする妖怪だ。

 しかし、俺はこの伝承は力が弱い応声虫で、本来は相手の身体を乗っ取る妖怪なのではないか?と考えた。力の強い種は、あまりに高度に真似るので、気づかないのだろう、と。


 このイメージで召喚したところ、見事相手の身体に潜り込み、身体と記憶や思考を読み取りそれを利用する妖怪が召喚された。


( (ただいまー))

「お、帰ってきた。お帰り」


 今窓から入ってきた小さな赤い一本角の生えたトカゲみたいなのが、応声虫だ。虫じゃないって?仕方ない、トカゲっぽいけど応声虫って呼ばれてんだから。

 ちなみに、身体に入る方法は、相手の身体に噛みつくとスーッと身体の中に霊体のように入る方法だ。決して傷口からグチャグチャ入るようなグロいやり方ではない。

 しっかし、まさか初めて召喚する妖怪がこいつらとはなぁ。マニアックすぎる。


  (僕ら、ダメだったー?)


 ん、いやいや、そういうわけじゃないさ、お前達は良くやってくれたよ、ありがとう。


  (良かったー)


 愛い奴め。よし、もう戻ってくれていいぞ、お疲れ様。


  ((はーい))


 スーッと消えていった。脳内で意思疎通出来るのは便利だな。


 そう言えば、あの酔っ払い共、何してんだろ?

 地図地図、と。



 そう言えば俺、人殺しちゃったなー。

 にしてはなんと言うか、あまり何も感じない。

 ・・・少しだけ、自分に恐怖を感じた。まさか自分が殺しに何も感じないなんて、な。

 ・・・・・死、か。深く考えたことは無いが、この世界では多分、地球より命の価値が軽いだろう。だからこそ、命について考える必要がある。自分の命の価値とか、な。

 ・・・・・まだ、分からないな。空っぽの俺には、まだ、何も分からない。

 でも。いつか、分かる時が来るだろうか。




 今は7時くらい、まだ時間はある。さっきのお兄さん、名前は確かキースさんか、さっさと奥さんと娘さんを助けに行くか。

 ついでに。あの酔っ払い共も、なんとかしないとな。




キーワードに「妖怪」を追加しました。

いやー、妖怪って種類多過ぎ。該当する性質の奴探しまくってやっと見つかるって感じだもん。怖いわー妖怪。更新速度まで遅らせようとしてくるとは。

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