私、気になります。
視点変更、始めました。
細部修正(12/7)
side.咲
私には6歳年上のお兄ちゃんがいた。
優しいお母さん、お父さん。そして大好きなお兄ちゃん。私は恵まれた家庭に生まれた。いつも笑って私を見守っていてくれた。危ない事をすれば叱られたけど、私を思って怒ってくれていることを、私は小さいながらも理解していた。
だから、私は家族が大好きだった。
特にお兄ちゃんはいつも私を助けてくれた。近所の怖い犬に吠えられた時も、いじめっ子に泣かされた時も、いつも私をかばって相手に立ち向かってくれた。
私にはそれがまるで絵本の中の王子様のようで。いつもお兄ちゃんにべったりくっついていた。将来はお兄ちゃんと結婚する、と言って、お兄ちゃんを困らせたりもした。
あまりにお兄ちゃんにべったりだったので、よくブラコンだとからかわれたが、私は気にしていなかった。
そんな日がずっと続くと、そう思っていた。
私が小学校2年生になったある日、私は家族と買い物に出ていた。その日は何かイベントでもあったのか、大通りにも人が大勢いて、誰かの手を掴んでいないとすぐに離れ離れになってしまう気がして、ぎゅっとお兄ちゃんの手と、お気に入りの小さなバックを掴んでいた。
でも。人とぶつかったのがいけなかった。衝撃でバックを放してしまった。私には人が多くて拾いに行けない。しゃがんだら危ない。それに気付いたお兄ちゃんが泣きそうになる私の頭を撫でると
「僕が取りに行く。だから咲はお父さんたちと離れて待っていて。すぐに戻るからね。」
お父さんは危険だ、自分が行くと言ったけど、
「大丈夫。僕はもう子供じゃないよ。何かあったら携帯で連絡するから」
と言って止める暇もなくすぐに行ってしまった。仕方がないので人が少ない目立つ場所に移動して、お兄ちゃんを待っていた。
でも、お兄ちゃんは帰ってこなかった。
探しに行った場所で、事故が発生したんだ。
スピード違反の車がスリップして道路に突っ込んで来たのだ。死者も出た。運転手も怪我を負い、重症者の人も一人亡くなった。
その事故の死者の一人に、お兄ちゃんの姿があった。弾かれた衝撃でコンクリートの地面に強く頭を打ち、即死だった。手には、私のバックが握られていた。
私は、泣いた。家でも、お葬式でも。受け入れられなかった。お兄ちゃんが、私の大好きな人が、私のせいで死んだ、なんて。信じられなかった。信じたくなかった。
みんな私のせいじゃないって言ってくれた。でも、私は自分を責め続けた。私がバックを放さなければ、私が人とぶつからなければ、私が、私が・・・。
しばらくすれば、普通に学校に通えるようにはなった。でも、私は滅多に喋らなくなってしまった。友達も少なくなってしまった。
人と関わるのが怖くなってしまったんだ。私のせいでお兄ちゃんは死んでしまった。また私のせいで親しい誰かが傷つくかもしれない、そんなのは嫌だ!
勉強はちゃんとした。中学校では部活も弓道部に入った。お兄ちゃんが弓道部だったから、少しでもお兄ちゃんと繋がっていたかったから。でも、つまらない。お兄ちゃんがいなくなってから、毎日がつまらない。
分かってる。お兄ちゃん離れしなきゃいけないのは。でも、でも、私は・・・。
そんな日が何年も続いた。気付けばもう高校生だ。
こんなつまらない毎日がいつまで続くんだろう。
助けて、お兄ちゃん。
そう思いながら過ごしていた高校1年生のある日。
起きると、知らない場所にいた。
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ここは、どこだろう。
頭が回らない。王様?勇者?何、なんなの?夢?
頭を下げろ。そう言われたから、頭を下げる。
え!下げないの⁉︎大丈夫なのこの人⁉︎もう訳が分からない。
でも・・・なんだろう。この人、何か安心する・・・。あ、そうだ、お兄ちゃんだ。顔も似てないけど、お兄ちゃんみたいな感じがする。何故だろう・・・。
浮雲さんって言うのかぁ・・・。いつも眠そうな目なのは何でだろ?
見てたのがばれたみたい。怒ってるかな。あの人に嫌われるのはなんか嫌だな・・・。
良かった、怒ってないみたい。話してみると、ますますお兄ちゃんに似てる気がする。でも、お兄ちゃんのことを言ったら黙っちゃった。どうしようと思ってたら、橘さんに誤解された。別に浮雲さんは何もしてないのに。橘さんは浮雲さんが嫌いなのかな?ガクガクしないで。苦しい。
鹿嶋さんと王妃様に助けて貰った。お礼を言うと、「いいのよ〜」「夢でいいわよ〜」と私の背が小さいからか、可愛がられた。この人たち似てる。
そう言えば橘さんに名前で呼ばれた。なんかゾワッてする。警戒しておこう、またガクガクされるの嫌だし。
あ、そうだ、ステータスプレート・・・ 。
浮雲さんにステータスプレート見せれた。それに、ゆ、祐志さんって呼んじゃったし・・・。か、顔が真っ赤だ・・・。
それを夢さんにからかわれて、さらに真っ赤になっちゃった。
服がパジャマだと気付いたのは、案内された部屋に入ってからだった。
あああ、恥ずかしい!もしかして明日もこのパジャマなのかな⁉︎嫌〜!
・・・で、でも、仕方ないよね、コレしかないし、仕方ないよね⁉︎も、もう寝る〜!
あっと言う間に1日が終わってしまった。
朝起きてから、気づいた。帰れないのかな。
お父さんもお母さんも心配してるだろうな。魔族をどうにかしたら、帰れるのかな。
さみしいよ、お母さん、お父さん・・・。
しんみりしていると、相川さんと夢さんに呼ばれた。お城を見て回るのか。・・・うん、行こう。こんな所でウジウジしていられない。
途中で橘さんとゆ、祐志さんを誘って行く。まだ恥ずかしい、早く慣れなきゃ。
王様に挨拶しに行こうと思ったけど、みんな王様がどこにいるのか分からない。仕方ないから、適当に歩くことにしたらしい。私はついて行くだけ。
?なんだろう、祐志さんにしばらく見られてた気がする。もしかして、パジャマだから可笑しいと思われた⁉︎そうだったら恥ずかしい!
途中から祐志さんが「俺の勘で行っていいですか?よく当たるんですよ。」言いだした。私はもちろんいい。相川さんと夢さんもいいって。橘さんは渋っていたけど、祐志さんにアイコンタクトされて頷いていた相川さんが諭して納得していた。悔しそうな顔をしていたけど。
そこからは祐志さんが先頭に立って歩いた。
しばらくすると、人がいた。き、筋肉が凄い。
その人はギルドマスターだという。ええと、ギルドって、ゲームとかのあのギルドかな?
なんでも私たちをギルド登録させるために王様に呼ばれたらしい。
話している内に昨日いたメイドさんが来て、王様のところに案内してくれると言っていた。私たちも呼ばれているらしい。
その途中で、「む⁉︎」いきなりギルドマスターさんが何かに反応したらしい。なんだろう。
「ふむ・・・?気のせい、か?いや、確かに感じた・・・」
どうしたのか、私たちが心配そうに見ていると、「いや、なんでもない」と言って笑顔を見せてくれた。
少し警戒しているみたいで顔がかたくなったけど、私たちとは気軽に話してくれる。いい人だ。
王様の部屋についた。メイドさんがノックをする。
「陛下、バージス様と勇者様御一行をお連れしました。」
「うむ、入れ。」
扉を開けると、王様が机に座って何か書類と格闘していた。隣にはダンディな白髪の執事?さんもいる。
「うむ、来たか、バージス。」
「どうも、陛下。今回はこいつらをギルドに登録させればいいんですな?」
「うむ、ギルドの依頼を通して、この世界に馴染んで貰いたいのだ。」
依頼、かぁ。やっぱり、魔物退治とか、するのかなぁ。
昨日の食事の時の王様からの説明によると、この世界には魔物っていう、普通の生き物とは違う生き物がいるんだって。大体の魔物は自分の欲望の為に暴れるらしいんだけど、それを押さえ込んで進化した魔物は超獣っていわれていて、言葉を喋ったり、強い力を持っていたりするんだって。所によっては崇められている超獣もいるらしいから、気をつけろって言われた。
「分かりました。んじゃ、ギルドにこいつら連れて行っても?」
「ああ、承知した。ついでに勇者諸君、このバージスに街を案内して貰うといい。」
「え?まぁ、いいですけどね、今日は暇ですし。」
街に行けるの⁉︎服!服買いたい!パジャマから着替えたい!
「うむ、買いたい物があれば、バージスに言うといい。買ってくれる。」
「ちょっ⁉︎陛下!俺が払うんですかい⁉︎今月の小遣いも残り少ないんですよ⁉︎」
「なんだ、バージスお前まだ嫁さんに尻にひかれているのか。仕方ない、セバス、勇者たちに金を渡してやれ。」
「畏まりました。」
執事さん、懐から、財布のようなものを出した。
「ん?ちょっと待てセバス。その財布、私のじゃ・・・」
「どうぞ、勇者様方。」
「ちょ!お前、金貨!それ金貨!」
金貨って確か一万円相当しなかったっけ。いいのかな。
「問題ございません、陛下はお酒を買うお金が沢山あるのですからな。」
「ちっ。セバス貴様、こないだお前に内緒で酒を飲んだこと、根に持っておるな?」
「さて、なんのことでしょうか?おっと、申し遅れました、私セバスチャンと申します。セバス、とお呼び下さいませ。」
出来る執事って感じ。
「・・・仲が良いんですね。」
「そうですな、陛下がまだヨチヨチと歩いていた頃からお世話させて頂いておりますからな。」
「ちっ、バージス、勇者たちを連れて早く行け。セバスが私の昔を語り出したら長くなるぞ。」
「おっと、そうですな、では、失礼いたします。ほらお前たち、行くぞ。」
追い出される様に部屋を出た。
びっくりした。王様、あんな風に話すんだ。私たちにはまだ気を使ってるんだろうなぁ。
「まずはどうする?ギルドに先に行くか?」
「いえ、先に服屋に寄らせて下さい。この服しか今持っていないんですよ。」
「よし、分かった。付いて来い。」
相川さんナイスです!
私たちはギルドマスターさんに付いてお城の出口に向かう。出口までが長い。ようやくお城の出口が見えた。部屋から出て20分くらい歩いたかも?
門には騎士さんたちがいて、検問所みたいになってる。あ、出たらちゃんと帰れるのかな?騎士さんたち入れてくれるかな?
あれ?なんか騎士さんたちこっち見てる。というよりは、祐志さんを見てる?なんだろう?
「どうしたんだい、咲ちゃん?行っちゃうよ?」
橘さんに心配された。何でもない、と首を振り、立ち止まっていた足を動かす。
・・・祐志さんは気付いているのかな?ちょっと心配。
何かあったら、力になりたいな。
うー!にゃー!うー!にゃー!うー!にゃー!・・・・・っは!こ、これは違うんだ!巷で有名なニャルラトホテプが俺の身体を乗っ取ったんだ!俺じゃない!だからそんな目で見ないで!いやー!