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規則七条 お水は大切に

 熱い体を冷やすべく風呂に駆け込む。

 外に建ててある風呂なだけあって割りと広い。

 大人四人は入れる、シャワーとお風呂の内装も露天タイプだ、最初に利用した時は温泉旅館かと間違ったほどだ。

 脱衣所で汗臭い服をスパっと脱ぎ勢いをつけて扉を開く。

 お風呂場の湯気で前が見えない。

「あちゃー換気しないと、前が見えん。ま、いっか」

 シャワーの場所に立ち勢い良くぬるめの水を出す。

「はーきもちいい」

 頭からシャワーをかけて頭も洗う。

 俺の入ってきたドアが強くノックされる。

「シューイチ君~アヤメいなかったからアイス冷凍庫いれといたよー」

「あ、ありがとう御座いますー。シャワー中ですみませんー」

「ええでええで~ほなな~」

 雪乃さんが部屋に居なくて言伝までしてくれたマルタの声も小さくなっていく。

 シャワーで気が付かなかったが、なんだか人の気配がする。

 鏡には俺となぜか雪乃さんの顔が写っている。

 俺は頭を洗い終わったあと不穏な気配を感じてゆっくり振り向いてみる。

 俺が振り返った先には前身を小さいタオルで隠した雪乃さんが忍び足で歩いていた。

「え……」

 俺が出した言葉で雪乃さんも此方を見てる。

 俺の視線の先には雪乃さんのタオル一枚で隠されているがぴっちりとした胸や腰が映されている。

 雪乃さんのほうは脱衣場へ行くつもりだったのだろう、扉近くでこっちを見ながら固まってる。

 顔が赤から白に変わりはじめて。良く見るとちょっと泣いてる。

 雪乃さんの物凄い悲鳴とともに俺の体は頭から足まで雪で埋まったのであった。


 風呂場の外の扉が閉まる音で我に返った。

「へーっくちょん。あ、やばい謝らないと」

 雪で動けない体から必死で手足を出す。

 手探りでシャワーを出して雪を溶かす。

 雪というか氷に近くて中々溶けないがそれでも這い出る事はできた。

 すぐさま服を着て雪乃さんの部屋目掛けて廊下を走る。

「シューイチ君どったー?」

「あ、マルタ。雪乃さんは!?」

「さっき部屋いったみたいや」

「サンキュ」

 短い会話で打ち切り階段を駆け上る。

 雪乃さんの部屋の前でドアのノックを連打する。

「えっと、雪乃さんすみません。取りあえず訳を。ドア!」

 ドアの前で必死に弁解をする。

「ごめんなさい。ワザとじゃ……」

 ドアが小さく開けられる。

 ドアの前に立ちすぎていたのかおでこにドアが当る。

「いっつ」

 そして再び閉じられるドア。

「あ、まって!」

 ドアの向こうから声がする。

「ドア開けますので。少しその場所を引いてください」

 何時ものおっとりとした声が聞こえてくる。

「うい!」

 動揺して変な返事が出る。

 再度ドアを開けてもらった先には赤い顔の雪乃さんが立っていた。

「廊下じゃなんですし部屋にどうぞ」

「良いんですか!」

「あの、そうでもしないと……」

 雪乃さんが階段を見詰めるので、その先を見てみるとマルタの顔が階段覗いてた。

「なるほど、ではお邪魔します」

 

 初めて雪乃さんの部屋に通された部屋はこれそこ女性だって言いたくなる良い匂いがした。

 小型のテレビにタンス。小型冷蔵庫などにベッドにテーブルが置いてある。

 おっと、それ所じゃない。

「あー。雪乃さんすみませんでした」

 俺は土下座。土下座のオリンピックがあれば銅は取れるんじゃないかってぐらい綺麗な土下座をする。

「まさか、入ってるとは知らずに!」

「頭を上げてください」

 おっとりとした声が頭上から聞こえてくる。

「私も突然で」

 次に聞こえてきた場所は土下座をしている俺の頭のすぐそばだ。

「近藤さんが慌ててお風呂場に入ってくるので、私も声を出せずに。シャワーを使って私に気が付いてなかったのでこっそり出ようと思ったのですが」

「此方こそ雪など、寒かったでしょ。ごめんなさい」

 何をおっしゃるウサギさん。

 俺はは顔を上げて雪乃さんに迫る。

「それでも確認しなかった俺が悪いので、本当にごめんなさい」

「此方こそすみません」

 お互いに謝り変な空気になる。

「そだ! 何でもします」

 俺の迫力に負けてかちょっと怯えてる。

「そうは申されても、此方も不注意ですし」

「お互い忘れたほうが、きっと良いと思います」

 お互いって何を言ってるんだ。俺が雪乃さんの裸を見たのを忘れろって事だろ。あ……

「お互いって、もしかして俺の裸ってみまし……た……?」

 雪乃さんのみるみる顔が赤くなる。

 顔を手で隠し始めた。

「いや、思い出させてごめんなさい。そう。そうしましょう!雪乃さんがよければ俺の裸であればいつでも見てくれていいですし」

 赤い顔の雪乃さんをみて少し混乱してきた。

「そだ!私ったら、部屋に招いて何もしないてすみません。お……お茶のみませんか!」

 突然大声を出す雪乃さんは冷蔵庫からペットボトルのお茶を湯のみに移し変えて持ってきた。

 いつまでも土下座をしてる俺に『其処に椅子があるので座ってください。』と促してくる。

 

 俺はなんで風呂に行ったのかを椅子に座って説明した。

「そうですか、事情はわかりました」

 お互いに謝り。水に流そうと言う事になった、この場合は雪に流そうになるのか。

「そういえば、雪乃さんはどうしてあの時間の風呂に?」

 風呂の決められた時間は特に無いのだが、話題ついてに聞いてみる。

「実は故郷から手紙が来てまして」

「うん」

 相槌を入れる。

「困った事が出来てしまい。お風呂に入りながら考えて居た所でしたの」

「困った事ってどんな?俺に協力できる?」

 俺の申し出に顔をマジマジとみてくる。

「ん?俺変な事いった??」

「いえ。そうじゃないんですけど」

 何時にもまして歯切れが悪い。

「来週、故郷からお父様が来るんです」

「へぇ……あ、もしかして俺がここに住んでいたら不味いって事?」

「いえ! 全然それは大丈夫なんですか」

「んじゃ、何が困ったの?」

「あの……言いにくいんですが、父が私の将来の伴侶探しに来るらしく」

「はんりょ?グループのリーダーみたいな?」

「シューイチ君それ班長」

 突然天井から声が聞こえて俺も雪乃さんも同時に上を向く。

「マルタ!」

「あかん、つい口に出してしまった」

 天井の一部が横に動くとマルタの顔が出てきた。

「いつから其処に」

「アヤメの部屋に消えてからや」

「マルタさん理由を聞いていいですか?」

 雪乃さん丁重な言葉とは裏腹に背景に赤い炎が見える。

「そうおこんないでや。将来このアパートに家族が増えたら楽しいだろうなとおもってな、視察してたんや」

 家族が増えたらってアレですか!俺と雪乃さんが部屋でランデブーみたいな事をしてたと。

 意味を悟ったのか雪乃さんも赤い顔になった。

「んでなシューイチ君、伴侶ってのは将来夫になる人や。簡単に言えばアヤメの見合い相手を探しにくるみたいやな。あのおっちゃんの事だから見合い相手は既にきめてそうやな」

「あのおっちゃん、もとい。アヤメの父ちゃんも気合いれてくるからなー誰か決まらないと連れて帰りそうな……」

「見合いって! まだ俺も雪乃さんも一六歳ですよ! それに今の時代恋愛とか、そういうのじゃ……」

 俺の語尾が小さくなっていく。俺も恋愛経験がないからだ。

 横にいる雪乃さんを見ると暗い顔をしている。

「そうなんです。手紙には恋人候補が居なければ一度故郷に帰ってみたらどうかと」

「アヤメが帰るならウチもココには住めへんな。そーなるとシューイチ君もプーやな」

 俺も一気に暗くなる。

「なんや二人とも暗い顔して」

「いやだって」

 一人明るい顔をしている、マルタ。

「問題は簡単に解決や。アヤメの父ちゃんが来る間シューイチ君がアヤメの恋人になればいい」

「え!」

「は?」

 驚いた雪乃さんと俺でマルタを見詰めた。


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