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校則ニ条

 一時限目の授業が終ると俺とアヤメさんの周りには人の山が出来ていた。

 女子は主にアヤメさんに集まり以前の高校や俺との関係を黄色い声で喋っている、まぁアヤメさんなら他の女子と直ぐ打ち解けるだろう、問題はこっちだ。


 裁判官に扮した久留米が俺の罪状を伝えてくる。

「汝、近藤秋一。これは説明してもらおうかな、何故転校生である雪乃さんの彼氏情報を先生が、貴様に言うのかな?」

 何時もの悪ふざけが入っているので貴様と呼ばれても腹は立たないが、周りに集まってる男子共からは殺気が見える。

「何でだろうなー」

 周りではふざけるな、死ねなどの暴言も飛んでくる。

「ちょっとー其処の男子うるさい!」

 女子の中ではリーダー役でクラスの委員長事、五月雨 さつき(さみだれ さつき)が、俺達の席へ割って入ってくる。

 

 その殺伐とした性格と長い髪をポニーテールでまとめ上げてる仕草が人気を呼んでリトル加賀見坂とも一部では言われてる。

 もっとも広めたのは俺の目の前にいる久留米だし、先生と五月雨にも了解を得てる。

「雪乃さんから聞いたんだけど、近藤くんってさ彼氏なの?あと一緒に住んでるって聞いたんだけど」

 周りの男子からざわめきが起こる。

 ふと、アヤメさんのほうをみると小さな手を振ってくれてる。

 思わず俺も小さく手を振り返す。

「死刑」

 裁判官が死刑宣言をする、しまった釣られてやってもうた!。

「ふ~ん、本当らしいね」

「一緒に住んでるって言っても、バイトでアパートの管理人補助をしていて俺とは部屋も違うし皆が思ってるような事は一切ないからな!」

 力説をして場を押さえる作戦だ。

「なるほど、彼氏彼女の関係は否定しないわけだな」

 速、久留米に論破されてしまった。

「なんにせよ、楽しいネタをありがとう」

 親友は悪魔のような笑みで俺を笑っている。


「おーい、そろそろ授業はじめるぞー各自席にもどれー」

 加賀見坂先生が教室に戻ってきた。

 まさに蜘蛛の子を散らすように席にもどる。

「それと、お前ら、雪乃と近藤の事は羨ましいのはわかるが、あんまり深入りするなよー。それと雪乃ー、近藤を振ったら教えてくれ先生が嫁に貰う」

 教室内が笑いにつつまれる。

 

 疲れた……休み時間が始まる度に俺達の周りに人だかりができる、最初に加賀見坂先生が注意と笑いを取ってくれたので集まってくれる人数は少しは減ったが、普段クラスの中の下にいた俺にはこの人気は正直くたくたになる。

 教壇では歴史の先生が熱弁をしているが、時計はお昼休みまで後、数分。

 なにやら熱弁しているが聞いている人数は少ない。

 あ、アヤメさんが物凄い勢いでノートに取ってる。

 熱弁が足りないのかチャイムに残念そうな顔をするが、日直がずぱっと断ち切る。

「近藤ー、飯は? よかったら部室来るか? 周りうるさいだろ」

 そっと耳打ちしてくれる久留米の案を受けたいが、おれはアヤメさんが心配だ。

「あっちはほら、五月雨が周りを抑えてくれてるから心配すんな」

 軽く俺達に向けて五月雨が手でサインをしてくれた。

「んじゃ、頼むか」


 俺と久留米は新聞部の部室に来ている、壁にある棚には過去に発行した新聞の資料など所せましに物が置かれている。

「近藤があんな彼女を作るとわねー。まぁ俺でさえも正直驚いたよ、てっきりあの金髪のマルタさんだっけ、管理人になったとは言っていたからさ。そんな暇はないと思っていたのに」

 弁当を広げながら俺に喋りかけてくる。

 俺のほうも冷蔵庫にあった菓子パンを鞄に詰めてきたのでそれを取り出す。

 俺がパンを空ける前に部室のドアが開かれる。

「やっほー、連れてきたよー」

「すみません失礼します」

「いいっていいって、自分の家と思ってさ」

「ちょ。アヤメさん、なんでこんな場所に」

「こんな場所は酷いだろう。由緒ある新聞部の部室だぞ、まぁなんだ記事にできるだろう、呼び方は彩芽さんと」

 悪魔のような奴だ、俺の言葉をメモしてやがる

「あたしは、久留米にここに連れてきて~って駅前のケーキ食べ放題券をもらって連れてきただけさ、ま。悪いようにはしないよ、あたしもお昼はここで食べるからさ」

 もう半分は開き直る事にした。

「アヤメさんは、お昼ここでいいのー?」

「はい、それに聞いてください私、五月雨さんとお友達になれました」

 本人を前にして言うんだから度胸があるのかちょっとずれてるのか。

「いやー、面と向かって言われると恥ずかしいね。うん。あたしのほうこそ宜しく頼むよ」

 四角いテーブルに俺達は弁当を取り出す、 アヤメさんの手には小さな弁当箱と一回り大きい弁当箱をもっている。

「所で。もし良ければ秋一さんのお弁当も作ってきましたけど、どうしましょうか?」

「それ、近藤くんが食べなかったらどうするつもりだったの?」

 全員にお茶を配りながら五月雨が質問する。

「私が頑張って食べようかと思ってました」

 三人が三人可愛いーと思った事だろう。

「大丈夫だ近藤が食べなくても俺が食べる」

「誰か久留米に食わせるんだ! アヤメさん大丈夫、喜んで俺が食べるよ」

 お弁当箱を開けると、から揚げに卵、ウインナーなど彩色豊かなお弁当だ。

「ほーこれを雪乃さんが? こんどあたしにも教えてよ」

「教えられるほどではないと思いますが、私でよければ」

「あ、この卵も美味しいな」

 俺が食う前に両隣がオカズを取っていく。

「まてまてまて、俺のオカズを食うな」

 お弁当の後のお茶を四人でまったりと楽しむ。

「それにしても近藤くんとはあんまり喋った事なかったけど、結構楽しい奴だったんだね、いっつも集団の中にいるからさ地味な奴と思っていたよ」

「自分で言うのもアレなんだけど、表に出ないってタイプだったから何でも平均にできればいいかなーと」

「ふーん。まぁ夏休みに何が起きたか知らないけど、今日の出来事で平均からずば抜けたのは間違いないね」

「あのー私もしかして、秋一さんの事黙っていたほうが良かったのでしょうか?」

「いや、隠してるってのも何か変だし、俺はこれでよかったとおもうよ」

「明日はあたしはクッキーでも焼いてくるよ」

 俺は壁掛け時計をみる、昼休みが終るまであと15分ほどだ。

「明日って五月雨さんは他に食べる人はいないのか?」

「五月雨でいいよ。でも近藤くんも痛い所きくねー、結構さ、損得勘定や恋愛を求めて一緒に食べようって来る奴が多くてね。親しい友達も少し引いちゃってね、最近は一人で食べてたんだよ。だから、あたしにとっては楽しい昼休みだったよ、三人が良ければ明日もいいかな?」

 あのクラスの中心で人気ある五月雨が伏せ目かちにお願いをしてくる、珍しい光景を目の当たりにしてるとはこう言う事なんだろう。

「俺は全然いいと思うよ。久留米は?」

「そだな僕のほうも特に断る理由はない」

「私も友達になれたので是非ご一緒したいです」 

「それじゃ決まりだな。部室は好きに使ってくれたまえ、どうせメインの部室は他にある」

「そうなんですか?」

「いつガサ入れされるかも、わからないからな」

「どんな新聞部だよ」

 最近覚えた突っ込みを放つ。

「さて、午後もがんばりますか」

 五月雨の号令で昼休みも終りになった。


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