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規則一条 料理は当番制

「いってらっしゃーい~」

 白いハンカチを窓の外の飛行機にひらひらと放つ。

 両親を空港で見送った後、俺はルンルン気分で帰路につく。

 なんていったって夏休みと今日から女の子と一緒に暮らせる。荷物も既に送っておいた。

「ただいま戻りました~」

 勢い良く協同玄関を開ける。

「お帰りなさい管理人さん。お見送りは済まされました?」

 にっこり微笑む雪乃さん。

 初めて会った時のように着物を着てるが、手には掃除道具を持っている。

 視線にきづいた雪乃さんは顔を赤くしている。

「管理人さんの部屋をお掃除しておこうかと思いまして」

 女の子に慣れてない俺は、その行動に涙が出る。

 これで俺と同じ十六才なんて信じられない。

「見送りならバンバンしてきました、なんでしたらもう一回見送って来ます」

「まぁ、お見送りは一回すれば宜しいかと……」

 少し困った顔のまま笑っている。

「そうだ、俺の部屋なら大丈夫です。所で俺って管理人として何をしたらいいのかな?」

 住民である雪乃さんに掃除などやらせる訳には行かない。

「山流さんは自分は代理だから、詳しい事は雪乃さんに聞いてくれって言われて」

「はい、ご説明させていただきますね。」

 何処から出したのか手にはアパートの建物表が握られている。

「この白雪アパートは現在私一人しか住んでません。もとい、今日から二人です」

 雪乃さんは現在いる大きな玄関を指を差している。

「1階は管理人室と食堂。お風呂。トイレお部屋が101から103、二階は物置に201から203まで部屋があります」

「ふむふむ」

「基本は施設内と空き部屋のお掃除。あとは食事は交代制にしようかと思ってますが宜しいですか?」

 宜しいも何も聞かれると困る。

「たぶん」

 取りあえず頷いてみる。

「はい、では明日から宜しくお願いします」

「本当は私が全部出来れば良いんですが、長年放置されていたので人を頼む事に」

「何を言っているんですが! お掛けで俺がこうして住む所とバイトにあり付けるんです」

 思わず力説しながら雪乃さんの手を握る。

 いや、正直に言えばチャンスだとおもって手を握りました。

「つめっ」

 手の平が異様に冷たい。

「丁度水仕事してたのでごめんなさい」

 困った顔もまた可愛い。

「大丈夫です。それじゃ俺も荷物の整理してきますね」

「はい、それでしたら今夜は私が食事をご用意させていただきますね」

 引越し当日からこんなに幸せで良いんだろうか・・・とは言え明日からはアパート全体を掃除なので気は抜いちゃいられない。

 ともかく部屋に戻って荷物を整理する。

 管理人室は居住スペースが六畳と玄関に面してる小部屋が一つ。

 ダイヤル式のテレビ、よくみると地デジ対応だ。

 クーラーはないが扇風機まで備えられている。

「良い部屋じゃん」

 俺は壁に書かれた見取り図を眺める。

 先ほど見せて貰った地図を縮小したのが壁に張られてる。

 お風呂は後から作ったのか外に付けられている。

「んーやっぱお風呂から掃除したほうがいいのかなー」

 隣から包丁を使う音が聞こえてくる。

「あ、俺も手伝いにいくか、お客じゃないから黙って待っていてもダメだよな」

 部屋から出ると直ぐに食堂の暖簾が見える。

「雪乃さーん、俺に手伝える事ないかな」

 元気良く食堂に入る。

「うお冷蔵庫でっか」

 共同冷蔵庫らしくサイズも大きい。

「座ってくだされば大丈夫ですよ」

 この人は怒る事はないのだろうか、微笑んでいる。

「いや、でも入居者ってわけでもないし」

「そうですか……では、お気持ちはわかりました。では今晩は山菜とお魚の天ぷらにしようと思っています」

「うまそうですね。てんぷら作れる女性とか感動ものです」

「もう、褒めても困ります、それじゃ揚げるの手伝ってもらえますか?」

 少し顔の赤い雪乃さんに見つめられると心臓が飛び跳ねそう。

 しかも共同作業ボルテージが一気に上がる。

「俺でよければガンガン使ってください」

 俺は新婚みたいな空気で大鍋で天ぷらを揚げていく。

「ニンジンはいりまーす、ナスはいりまーす、キ……魚のキスはいりまーす」

 俺は順番に油に具を放り込んでいく。

「何処かしら~困ったわ~」

「どうしました?」

「いえ、天ぷらを並べるお皿が無くて、昨日まで一人だったので大きいお皿を探しているんですか……」

「天袋の上とかみました?」

「そうですね、見てみます」

 椅子に登って必死に天袋を探してる。

「油危ないんで俺が探しま……」

 俺が危ないなーと思っていると雪乃さんの体が突然崩れた。

「きゃっ」

 突然椅子の足が折れたらしく崩れる時に煮えたぎる油が入った鍋を引っ掛けた。

「あぶない!」

 俺はとっさに雪乃さんを突き飛ばした。

 俺に背中に振ってくる大量の油、目をつぶりうつ伏せなる。

 熱い物は高温になるほど冷たく感じるらしい。冷たい物もそうだ冷えすぎると熱く感じる。

 コレは全身火傷で死ぬな、最後に雪乃さんが助かったか見るのに薄めを開ける。

 微笑しかしないと思っていた雪乃さんが少し怒った顔をして手をこちらにかざしてる。

 何をしてるんだろう。もう俺の油の掛かりすぎだろう体は寒い。

「さむ・・・い?」

 首を横にずらすと俺の体は白くて冷たい物が積もっている。

「これって雪?」

 訳がわからず雪乃さんのほうをみると怒った顔から困った顔になっていた。

 

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