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裏規則五条

 朝から大雨が降っている。

 TVでは台風情報が映し出されてる。

 各自部屋にはテレビがあるのに、決まったように食堂に集まってくる。

 マルタ曰く寂しいやろ。との事だ。

 TVの前では俺と昨日からいる八葉が画面を見詰めてる。

 後ろではお昼にとなにやら軽食を作ってる二人がせっせと動いている。

「雨かー……洗濯物がかわかん」

 俺の横で聞いていたのだろう。

「僕は雷が怖い」

「ふーん」

 八葉の言葉を流す。

「あ、そーいえば八葉。家に電話したか?」

「大丈夫、ちゃんと移転の手続きを申請した」

「そうか。ちゃんと移転……は?」

「住むの? ここに?」

 突然の事で大声を上げる。

「耳元で騒ぐなニュースが聞こえない」

 耳を押さえつつ迷惑そうな顔で俺を見ている。

「ああ、すまん」

 管理できるのかな……俺。

「なにうなだれてるんや」

 ポテチを片手にソファーに座ってくるマルタ。

「ほれ」

 突きだされたポテチ袋に手を突っ込む。

「いや、八葉も住むって言ってるし俺ちゃんと出来るのかなーって思って」

「ふむ。大丈夫やろ」

「僕の悪口なら別な所で言ってくれ」

 こっちを見て喋る。

「違うわ。全員が暴れたら俺の体が持たないって意味だよ」

「ふむ、暴れないから安心しろ」

「お茶をもってきましたよ~」

 台所からお盆を持ってくるアヤメさん。

 軽食にとお握りと漬物もついてきた。

 四人で何をするわけでもなくTVを見る。両親が不在の多かった俺は新鮮な感じである。

「さてと……今日は早めに雨戸を閉めようと思いますので、お風呂など早めに入るようしてもらってもいいです?」

 俺は三人に提案してみる。

「そうですね……この天気だし、わかりました」

「おねーちゃんと同じ意見で」

「よっしゃ、それじゃウチも先に入るさかい。シューイチ君も一緒にはいろうや」

 ぶーーーーー。俺は飲んでたお茶を噴出す。

「馬鹿野郎!僕にお茶を掛けるな。汚いだろ」

「マルタさん、何を言ってるのですか!」

 アヤメさんと八葉が同時怒る。

「いやーだって、ウチだけシューイチ君と一緒に風呂入ってないやろ。シューイチ君だって女性と一緒のほうが楽しいと思ってなー」

「笑えない冗談はやめてください」

 アヤメさんの笑顔が怖い、その笑顔を無視して喋るマルタも中々のもんだ。

「そうや。四人で入ったら丸く収まるんやないか!ハーレムやハーレム。アヤメだってシューイチ君と裸の付き合いしたいやろ?」

「な……!何を!」

「アヤメはシューイチ君が嫌いだから、お風呂は入りたくないと……」

「誰も嫌いとは言ってませんし、お風呂ぐらい一緒で……」

「アヤメおねーちゃん……」

 失言してしまったのだろう。アヤメさんの白い顔が赤くなる。

「よし、んじゃ決まりや。はよ行くで。よいしょっと」

「いやいや、ちょっとまって。おかしいでしょ。俺の意見は?」

 俺とアヤメさんの両手を引っ張り、尚且つ八葉をわきに抱えて浴場に向かう。

 本気で抵抗すればよかったのだが、そこは男の子だもん。ちょっぴり期待した心のまま連れて行かれた。

 

 カポーン。お風呂に響く音がすばらしい。外の嵐など気にならないぐらいだ。

「アヤメおねーちゃん、おっきい」

 俺を事をからかっているのだろう、八葉の声真似したマルタの声が聞こえてくる。

「もう、変な事言わない」

 俺達四人はお湯に漬かってのんびりとする。肩まで浸かるお湯が気持ち良い。

「どや、シューイチ君パラダイスやろ」

「そーですね。これが無かったら。いや今のままで最高です」

「素直に言ったらコッソリ外してあげたのに」

 俺だけに聞こえるように伝えてくる。

 俺の眼には黒い布が巻かれている。そう目隠しだ。

 脱衣場に連れて行かれて即渡された。

 勿論普段なら浴槽に入るときに付けないが、俺の腰にはちゃんとタオルも巻かれている。

「さて、体を洗おうや」

 俺の手を引いて洗い場に連れて行く。

「アヤメー背中洗ってあげーなー。彼女やろ」

「いや。いいって、目隠しされていても洗えるし」

「アヤメおねーちゃんに変な事させるわけ行かない! 僕が洗う!」

 バシャバシャと水の音が聞こえる。

「こら、八葉。湯舟で走らないの」

 遠くからアヤメさんの声も聞こえてくる。

 俺の右側からはマルタの吐息も聞こえるし、ハーレムというかこれは地獄に近い。

 俺だって健全な男子だ、こんな状態で我慢するのは超辛い。

「ひゃ! なんだ!」

 俺の背中に突然水が掛かる。

「水ぐらいで騒ぐな、馬鹿者。僕が直々に背中を洗ってやるんだ感謝してもらいたいぐらいだ」

 ああ、声からして八葉か。

「すみません、秋一さん」

 左側からアヤメさんの声も聞こえる。

「しかしシューイチ君。案外筋肉あるんやな。アヤメも此処さわってみ」

「はぁ……あ、本当ですね。硬い」

 硬いってそりゃ、こんな状態じゃ硬くも……じゃなくて。

 いかん。心を静めるために、アヤメさんのお父さん事、雪乃源太郎さんが裸エプロンを着用してる姿を想像して気持ちを落ちつかせる。

 うん、気分がなえて来た。

「二人ともー其処退いてー」

 その声と共に横の二人の気配が遠のく、その直後に背中に激痛が走った。

 人間あまりに熱いお湯を浴びると熱さよりも痛みがくるらしい。

「あっちいいいいいい、きい……きいてないよー」

 体をくの字に折り曲げて足をパタパタする。

「お、シューイチ君もそのネタを使えるほど余裕はあるみたいやな」

「次も水じゃ悪いと思ってお湯を掛けたんだが……」

 本気で悪いと思ってる声が聞こえる。

「すまん。次はないと思うが、人に掛ける時は熱さを確認してくれ」

 女の子とお風呂に入ってるのに泣きそうになる。

「大丈夫ですか?」

 お湯の掛けられた所をさすってくれる感触が伝わる。

 これって……右からアヤメさんの声と腕に柔らかい物が当る。

 この弾力って、それしか考えられない。

 俺は何を喋っていいのか迷った時に、黒い目隠しでも分かるほど眩い光が見える。

 直後、振動と激音が鳴り響く。

「うわああああああああああああああ」

 背中から悲鳴と共に俺の背中を突き飛ばす何か。

「いってええええ」

 八葉に飛ばされた俺はよつんばいになる。

 右の方からすぐさま、湯舟に飛び込む音が聞こえる。

「八葉~ただの雷や、一応湯舟から出ておいでー」

 俺は声のしたほうを見る。今の衝撃で目隠しも外れたのだろう、マルタの裸体と顔が見える。

 出る所は出て、引っ込む所は引っ込む。腹筋も俺よりも付いてるように見える。

 俺に見られてる事にマルタも気付いたのだろう。

「ウチはきにせんが、下も見たほうが得やで」

 にやっと微笑む。

「下?」

 俺はよつんばいのまま顔を下に向ける。

 下を向くと重力に逆らった山が二つ見える。俺の心臓とリンクしてるようにゆっくりと上下している。

 そーと顔を上に向けると真っ赤になったアヤメさんの顔が見える。

 アヤメさんの顔は俺を見てなくて、視線を辿る。

 いつの間にか俺のタオルも外れていて、どうやら其処を見ているようだ。

 俺は左のマルタを見上げる。

「ほい」

 渡されたタオルを腰に巻く。二日続けて無言のまま立ち上がり、脱衣場へ向かう。

「この大馬鹿野郎!」

 後ろから八葉の叫び声が聞こえる!

 俺は振り返りつつ叫ぶ。

「まて! 今回のはお前が突き飛ばっ」

 最後まで言う前に、俺のおでこに風呂桶が当り意識が遠のいた。

 

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