裏規則一条
アヤメさんのお父さんが帰ってから丸一日。
恋人同士ってなにするの?の状態な俺達。
マルタに相談しようとおもったが、相談事が解かっていたのか、その満面な笑みを見て相談をしない事にする。
『なんでやねん』って顔をしてるが気にしないで、逃げるように自室へ急ぐ
座布団の上で考え込む。彼氏彼女って普通なにするの?
休み時間で喋っていたクラスメイトの三人娘が話す雑談を思い出す。
『見て~彼氏に買ってもらっちゃった~。春物のポーチ』
『まじで~』
『ちょ~たかいやつじゃん。彼氏ってIT企業の?』
『そうそう、おねだりしたらイチコロよ』
『おねだりって何よ~』
『もちろん布団の中でしょ~キャハ』
「布団の中ってなんやねん!」
回想と解かっていても誰も居ない自室で叫び突っ込む。
「いかん。確かこの後だ」
俺は再び回想に入る。
『やだー下品~誰がベットの中でねだるのよ』
『デート中よ。で・え・と・ちょーっとウインドウの中に飾ってるのを眺めていたら買ってくれたのよ』
『へー彼氏やるじゃん』
『やっぱ男はさり気ない仕草に気付く人が良いわね~』
『同感、あと財力ね』
『このクラスの男供じゃだめね』
『どうーかーん』
「お前らみたいなケバイ奴に買ってやる物は何もないわ!」
は!また叫んでしまった……。
畳を叩いて我に返る。しかしデートか、良い案かもしれない。
急いでサイフの中身を確認する。サイフの中身は三万と少し。
これだけあれば一般的なデートには間に合うだろう。
問題はどうやって誘うか、何処に誘うか。
「海の見えるレストランなどどや」
突然の名案に俺は素直にうなずく。
「そして、この後ホテルにいきませんか?や」
「いいですね。夜景を見ながら食事。その後に言えるかな~っておおおーい!」
背後に迫っているマルタに突っ込みを入れる。
「ななな、なんでここに」
「うちは、ほっときなっていったんやけどね。部屋から奇声が聞こえるのを心配してなーほれ、アヤメと一緒や」
指の刺されたほうを振り向く。
赤い顔でうつむいているアヤメさんが立っている。
俺の後ろから声がかかる。
「いい、いつからここに!」
叫びたいのを必死に堪える。
「布団の中ってなんやねんって所やな」
恥ずかしくて死にたい。
「用はデートやろ、いってくればいいやん。アヤメの事だシューイチ君の提案ならどこでもいいとおもうで」
続け様に耳元で囁いてくる。
「もちろん、ホテルでもあの子は付いてくるで」
「な!」
慌てて振り返ると、何もいってませんよな顔をしてる。
俺の驚いた声でアヤメさんちらちらと此方を見ているがまだ赤い顔だ。
「アヤメーシューイチ君と遊びにいってきんやーどうせ暇なんやろ」
「いきなり暇と申されても」
案の定困った顔をする。
「う! 苦しい」
突然マルタが倒れこむ。
「まぁ」
わざとらしく苦しみだすマルタを青い顔をして心配そうに覗き込むアヤメさん。
「実はな、国際展示場で期間限定で開催されている北極展覧際の中で売っている北極饅頭を食べないと10日で死ぬ病気やねん」
「どんな病気だよ!しかも10日はもつのか!」
俺の突っ込みは二人には届いてない。
「まぁ。どうしましょう!わたくしは国際展示場までの道は知りませんし……」
「アヤメ、いつもすまんの~。チケットはこの通り2枚あるんや、本当は自分で買いにいくつもりやったんだが、こんな体になってしもうて……ゴホゴホ」
「私買ってきます!」
意を消したように宣言する。その後ろ姿は燃えている。
「と言う訳や、シューイチ君ほいチケット。ゆっくりしてきー」
アヤメさんの後ろで俺にチケットをくれるマルタ。感謝したほうがいいのだろうか。
うん。感謝しよう。
「ども……ありがとう」
「どういたしましてや」
一足先に玄関で待つ。
二階から包帯を巻いた足に杖を付いてるマルタと着物姿のアヤメさんが下りてくる。
なんで饅頭を食べないと死ぬ病気で松葉杖なんだよと、心の中で突っ込む。
アヤメさんの顔が心なしか怪訝な顔をしてる。
「お待たせしました。秋一さん」
「いや、俺も今来た所、どうしたの?変な顔をして」
「いえ……良く考えればマルタさんのご病気って本当なのかしらと、思いまして」
いまさらっ!。
「私小さい時から散々だまされてきましたので」
白い目をマルタに向ける。
「何いっとんねん。ごほごほ、はよいってこんかい」
自称北極饅頭を食べないと死ぬ病にかかったマルタに玄関から追い出される。
二人とも無言で顔を見合わせる。
深い溜息の後に俺の顔を見つめてくる。
「取りあえずいきますか……」
「そうですわね……」
アヤメさんもマルタの嘘を気付いたんだろう。
国際展示場まで距離があるため最寄のバス停へ歩く。
俺はジーンズにTシャツ。アヤメさんは青い着物にこれまた涼しそうな日傘をさしている。
「折角なのでのんびりいきましょうか」
「そうですわね。マルタさんなりに気を使ってくれたわけですし」
暑い日ざしの中俺達はバス停の前で立っていた。
「今日は一日宜しくお願いします、きっかけはどうあれデート……ですよねこれって」
その言葉にさっきまで聞こえていた蝉の音さえ俺には感じられなかった。




