規則九条 嘘もほどほどに
俺と源太郎さんは食堂の椅子に座っている。
さっきと違う点は俺達はともに包帯だらけという事だ。
先ほどいきなり切りかかった事を謝られミイラ男っぽくなった俺達はお茶を飲んでいる。
「兎も角、お父様はお帰りになってください。私はそんな心配されても困ります」
アヤメさんは微笑んでいるがバックが吹雪いてるように見える。
「アヤメ。父が簡単にハイそうですか? と帰ると思うか? なんだこの人間は結婚相手にしてはひ弱すぎるぞ」
全身包帯だらけの男に言われたくもないが、俺も包帯だらけなので口を慎む。
「それに二人が恋人なんてとても信じられん。マルタの入れ知恵で俺を帰らせる口実じゃないのか?」
いきなり核心を突いてくる。
「な……」
俺は二の次が言えない。
「なんやーおっちゃん。疑りぶかいなー」
核心を突かれてもマルタのほうは平気な顔で喋る。
「マルタは小さい時から人騒がせだったからな。がっはっは」
怪我のせいか笑いのテンションも低い。
「ほうほう、それは心外やな~それより凄い決定的な話があるんや。実はな……」
マルタが源太郎さんの耳元で何か囁く。
白い包帯をしてるはずなのに顔が赤くなる。
源太郎さんは居合い抜きの形を取り俺に質問してくる。
達人だけが出せる技というのか殺気を感じる。
「小僧!ア……アヤメとフ……」
「フ?」
俺は良く聞こえないので聞き返す。
「アヤメと風呂を入ったのかと聞いておる!」
そう源太郎さんはマルタから『二人は共に一緒の風呂に入った仲やで。』と聞かされたのである。
「ワシでさえ二歳の頃まで……仕舞には妻からもうアヤメの側によるのは控えてくださいって言われて……それをそれを」
「そそ、それは一緒にというか……俺はシャワー浴びてただけなんですけど、振り返ったらアヤメさんが居たというか……もちろんイヤじゃなかったですし。俺は嬉しいし。一緒っていってもか……からだはみてな……」
俺はあの時の事を思い出す。
あの時のアヤメさんは薄いタオルから体が透けてたなー。
思い出して顔が赤くなる。弁解のつもりが変な事を良いそうだ。
「なるほど。入ったんだな……切る!」
「お父様!」
同じくお風呂場の事を思い出したのだろう顔の赤いアヤメさんが再び雪の塊を出し源太郎さんに投げつける。
俺に向かってたはずなのに瞬時にアヤメさんの方を振り返る。
「甘い!」
源太郎さんはそれを懐からお札のようなもの出してでガードする。
アヤメさんの雪が瞬時に手の平に吸い込まれていく。
「な! お父様それは」
「霊験あらたかな対魔用のお札よ。まさか娘に使う事になるとはな」
にやりと笑う源太郎さん。
二人の超人的攻防に黙って見てるしかない。
「ほーでも、こうするとどうなるん?」
マルタが横から源太郎さんに足払いをかける。
源太郎さんが転ぶと共にお札も消えた。
「あ」
俺はなんともマヌケな声を出していたと思う。
お札が消えた源太郎さんはまたも壁に吹っ飛ばされた。
俺と源太郎さんは食堂の椅子に座っている。
先ほどと違うのは俺は源太郎さんが持ってきた回復用のお札を貼ってもらい既に怪我はない。
一方は先ほどより酷いミイラ男が一人。
アヤメさんの手には源太郎さん愛用の刀が収まってる。
「お前達二人は小僧の味方なんだな……がっはっは」
もう笑いも悲しい笑いに変わってる。
「あの。お父さん」
「小僧に義父さん呼ばわれる筋合いはない」
ピシャっと言葉を遮断される。
ここでめげてもダメだ。
「なんていうか。こんな小僧が言うのもなんですが、雪乃さん」
「いや、アヤメさんの結婚相手が親が決めるとかそういう世界もあるのはあると思います。でも、俺はアヤメさんを知ってしまったし、なんていうかアヤメさんの意見を聞いてもっと自由にさせるべきと思うんです」
俺の言葉に三人共黙る。
アヤメさんと源太郎さんは赤い顔。マルタはウンウンと頷いてる。
「『知ってしまった』だと……小僧……お前。まさか契ったのか!」
な!何をいってるんだ。この人は。
俺はアヤメさんと知り合ってしまった的で言ったのだが、どうやら使い方を間違えたらしい。
突然の質問に斜め前に立ってるアヤメさんを見ると俺の言葉に感動したのが源太郎さんの言葉なのか赤い顔をして遠くにいったような顔をしている。
反対側にいるマルタをみるとニヤニヤしてる。
「ちっ」
『違います』そう弁解しようとしたら顎を誰かに掴まれる。俺の背後にいつの間にかマルタがいた。
俺の首を無理やり縦に動かす。
「そうだよー僕アヤメとちぎっちゃったー」
俺の後ろから腹話術形式で返事をするマルタ。
いやどうみてもコレ不自然でしょ。
でも源太郎さんには俺しか見えてないらしい。
「心配しなくても、シューイチ君は無傷で助けてやるさかい」
小声で俺に言うマルタ。
刀が無くなった源太郎さんは懐から無言で銃を取り出す。
銃!?アヤメさんの父親ってヤクザ!?混乱する。
いつから日本は銃公認になったんだ。
マルタのほうを掴まれた顔ごと力いっぱい振り向く。
『安心せーや』と目で伝えてくる一番安心できないんですけど。
「そうか……アヤメが……この小僧と……」
遠い目をしながら銃口を向け俺を見てくる。
その銃口を見ながら俺の短い人生が終った。
「その……アヤメが認めた男を誰か殺せようか!」
突然叫びだし座り出す、包帯の目からは涙が出てる。号泣だ。
俺は男泣きという物を初めてみた。
その号泣で我に返ったのだろう、アヤメさんも俺と源太郎さんを交互にみる。
頭にクエスチョンマークが出てるのが見える。
「雪乃の一家はなーああ見えて割りと勘違いや思い込みもはげしいんや」
「まぁいざとなったらウチがシューイチ君連れて海外でウチと挙式したろっておもったけどな」
「え?」
さらっとすごい事を耳元で言う。
『何時もの冗談や』は無かった。
もしかして俺ってモテキ到来?




