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閑話 その他の勇者達25

 ルールイス王国王城にて、一通の書状が届けられた。


 内容は以下の通りとなる。


 カブラギ皇国はルールイス王国に以下のものを求める。もし求めに応じていただけないようであれば其の国に戦争を申し込む。


 1、王及び王族の首

 2、王国の重鎮である、内務大臣テーテー、軍務大臣バッカスの首

 3、土の勇者の亡骸


 上記条件を履行していただければ、戦争を回避することができる。


 より良い返事をお待ちしている。


    水の勇者     白雪シラユキ シズク

 

    第十三代カブラギ皇国皇帝 カブラギ アヤメ


「なんじゃこの書状は、まったく助かる余地がないではないか。これではルールイス王族及び王国に滅亡せよと言っているようなものじゃ」


 ルールイス国王は体を震わせて書状を握りつぶす。


「王よ、落ち着かれよ」


 テーテーが王の様子を見かねて声をかける。


「これが落ちついていられるか、我々に死ねと言っているのだぞ」

「わかっておる。我々は道を間違えたのじゃろう。じゃが殺されてやるわけにもいかぬ」


 テーテーの顔は皺くちゃだが、目だけは鋭さを失うことなく王様を見返す。


「それではどうする、我が国には異世界からの勇者もおらん。強き兵器もない。どうやってカブラギ皇国と戦うというのだ。あの国は殆どが鬼人族で、通常の人間よりの頑丈で強い。それだけでなく独自の技術を持ち、シノビと呼ばれる組織と技を持っておる」

「王よ。いい加減になさいませ」


 今度はバッカスが王様をたしなめる。


「何をいい加減だと言うのだ。我は現状を整理しているだけだ。この絶望的な状況のな。お前達が闇は災いだと言って追い出すからこんなことになったのではないのか、闇の勇者をしっかりと世話をしていれば恩を売れたかもしれないのに、光の勇者にしてもそうじゃ。バッカス、お前に任せたばかりに付け上がり、土の勇者と決闘の末、消滅するなどあってはならぬことだぞ。やるならば勝たねばならぬ」


 バッカスとテーテーは自分達が育て挙げた王様の姿に、教育を間違えたと疑った。王様は臆病で、自己中心的で何の才能も持てなかった。


「お父様、いい加減にしてください。みんな絶望的な状況だとはわかっています。それでも打開策はないかと試行錯誤しているのではないのですか。お父様だけが怖いのではないのですよ」


 二人があきらめかけていたとき、王女であるフフリア・ミシェル・ルールイスが王様を叱咤した。彼女は光の勇者 コウガを愛していた。最初は利用しようと近づいたが、彼の純粋なところに心惹かれて、本当に好きになった。目の前で好きな人を失う悲しみを乗り越えて、フフリア・ミシェル・ルールイスは王様の前に立っているのだ。


「フフリア?」

「お父様はこの城を護っていてください。私が出撃します」

「何をいっているのだ。お前がそんな事をする必要はない」

「いえ。私は本当に光の勇者コウガを愛していました。コウガのしでかしたことは、私が責任を取らなくてはいけません。コウガの妻として、きっとこの書状を書かれた水の勇者様も、彼女も土の勇者を失った悲しみで、復讐を誓ったのでしょう。その吐け口が必要です。それにふさわしいのは、この国で私しかいません」


 決意を込めた瞳に王様はたじろぐ。正直フフリアがここまで変わると思わなかった。彼女はよくも悪くも王様によく似てズル賢く、他人を蹴落とし自分が利を得るタイプだった。

 恋は盲目と言うが、ここまでフフリアを強くしたのは紛れもなくコウガへの愛情なのだろう。


「わかった。好きにするがよい」


 王様はそれだけを言うのが、精いっぱいだった。後はバッカスが勝手に軍事を仕切り、テーテーが出陣の予算をひねり出す。王様の存在は只々小さくなっていった。


「リリーセリアに会いに行こう」


 王様は一人、作戦会議場となった謁見の間から出ていき、王族だけが入れるプライベートルームに足を踏み入れ眠り続ける第二王女を見つめた。


「リリーセリア、どうしてこうなってしまったんじゃ?」


 第二王女ことリリーセリア・ミシェル・ルールイスは、土の勇者と光の勇者の激突にて二人が消滅した時から、意識を失い眠りについていた。


「お前が召喚を反対した時にやめておればよかった」


 王様は取り返しのつかない後悔と共に、リリーセリアの手を握り涙した。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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