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閑話 その他の勇者達24

 老紳士についてきたランド達は、老紳士の屋敷に案内される。屋敷はランド達が今まで見た中でも最高級の作りで、飾られる絵や骨董品は、いくらの値がするかわからない高級な物ばかりだった。

 屋敷の中に入ると、大きなエントランスがあり、普通の家ならば三階はありそうな高さの吹き抜けになっている。更に大きなシャンデリアが煌々と光を放っていた。


「スゲ~な」

「ほんと、こんなの初めて見たわ」


 アリスも初めて見たらしく、二人は口を大きく開けて部屋を見渡す。


「お二人ともこちらです」


 老紳士についていく間に何人ものメイドや執事に頭を下げられる。


「オッサン、あんたスゲ~金持ちなんだな。名のある貴族か?」

「私はしがない商売人じゃよ。親戚にエビスと言う商売人にがいるくらいで、特別なことはしておらんよ。今はこの家に娘と二人暮らしですじゃ」


 老紳士は優しそうに笑うだけだが、ランドはなんだか怖くなってきた。


「オッサンの娘って言うのはいくつなんだよ?」

「今年十五になります。かわいい子ですよ。ぐふふふ」

「オッサン、キメ~よ」


 ランドはなぜか老紳士といると言葉が砕けてしまう。


「そんな事より着きましたよ。ここが娘の部屋です」


 老紳士がノックして中に入る。ランドとアリスも中に入ると、そこには黒い髪に大人しそうな少女が窓際に立っていた。ランドの中で胸が高鳴る。なんだ、どうしてこんなにも懐かしい気がするんだ。


「いらっしゃいませ。はじめまして、この度はルールイス王国までの護衛を引き受けてくださり、ありがとうございます。この屋敷の娘、ドロップ・ドゥ・バロックです」

「はっ?ドゥだと」


 ドゥとはアスガルト共和国を開拓し、建国した者達の子孫しか名乗れない貴族の名前だ。ようはアスガルト共和国の生みの親の子孫ということになる。


「オッサン、あんたかなり重要人物じゃねぇか」

「そうでしたかな?この国は土の勇者 砂丘サキュウ 修二シュウジが作りし国です。我々など勇者のお零れに与ったにすぎませんよ」


 はははっと笑う老紳士に、ランドとアリスは唖然とする。アスガルト共和国は砂丘 修二と五人の人間が、何も無い荒野を耕し、少しずつ水を掘り当て作りだしたものなのだ。


「えっと、お父様。もしかして名乗っていなかったのですか」

「まぁ些細なことだ」


 娘の発言にも、はははっと笑いで返す老紳士にランドは確信犯だと恨めしい思いで睨み付けた。要は他の国で言う、王女の護衛を頼まれたという事だ。


「はぁ~厄介な仕事になりそうだ」

「本当よ。今からバックれる?」

「そうしたいが、俺もルールイス王国に行こうと思ってるから断れないのが辛いところだ」

「ランドが良いならいいけど。私はランドに任せるよ」


 アリスはランドが暴走しないか心配でついてきているのだ。ランドの好きにさせてやるのが一番だと考えている。何よりランドの記憶を取り戻すのが先決なのだ。ランドが承諾したことで、話がまとまり、出発は明朝と言う事になった。


 ランドが宛がわれた部屋のテラスに出ると中庭に人影が見えた。そこにはドロップと名乗った年下の女性がおり、服を着たまま水を被っている。

 その光景をどこかで見たことがあるような気がするが、思い出そうとすると頭痛がする。


「もう寝るか」


 ランドが眠りについて隣の部屋のアリスも一息吐く。ランドと旅に出るようになり、アリスもかなり強くなった。冒険者ランクAは才能が無ければなれない超一流と呼ばれる者達の称号だ。その中に名を列ねるほどまでアリスは強くなった。


「ランド、あなたは私が暴走なんてさせない。私が守るから」


 アリスもいつもの誓いをして眠りにつく。


「お父様、どうしてもうすぐルールイス王国が戦争になることはお話にならないのですか?」

「私の予知が正しいなら、ランド殿は土の勇者様じゃ」

「ランドさんが土の勇者様?」

「そうじゃ。彼はこの国に居てはならん。この国は土の勇者が作った国ではあるが、逆に土の勇者に呪われた土地でもある」

「そのために私を魔法学園へ?」


 娘を生贄に土の勇者を遠ざけようとしているのかもしれない。


「いや。お前にも戦争というものを経験してほしいのだ。長らく国同士は戦いがなく、国々は弱くなった。しかし、世界は動こうとしている。乱世が近づいておるのだ」

「乱世が?」

「そうだ。我々は未来を予知することで生き延びてきた。商売は情報が命だ。予知も情報の一つであり、我が一族の命そのものじゃ」

「確かにお父様の予知は外れたことはありませんが」


 今も変わらず地位を守って来れたのは、予知があったからだとドロップもわかっている。 


「今はルールイス王国に行くが良い。あの男がいれば、お主の命は守られると予知にもでておる」

「わかりました。私は彼を監視します」

「うむ。頼んだぞ、ドロップよ」


 親子は次にいつ会えるかわからない賭けに出ようとしていた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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