閑話 その他の勇者達23
パソコンの調子が悪く更新が遅くなってしまいすいませんでした!
八時に投稿を目標にしているのに二日とも遅くなってしまったm(;;)m
天空城、大魔王の城を一言で表現するならば、そんな言葉が浮かんでくる。神代 火鉢は目の前に座る最強を見つめながらそんなことを考えていた。
雲よりも高い場所に玉座があり、大魔王はいつも一人で過ごしているのだろうか?大魔王は魔力だけでなく戦闘能力も、全てが規格外であった。
大魔王と同格の規格外だと思っていた火鉢ですら、一撃を与えるのがやっとだった。
「なぁ、勇者よ。お前は我を倒して何を得る」
「スリルを」
「倒してスリルを得られるのか?」
「さぁな、やってみなければわからないだろ。だが、私は今楽しんでいるのは確実だ」
「そうか、楽しいか、我も楽しいぞ勇者よ」
大魔王は王座に座りながら、本当に楽しそうに笑っていた。近衛兵達は呆気にとられるが、安城 風香は火鉢達と同じように笑いだす。
「ふふふふ、魔王はんは面白いな」
風香の様子に近衛兵達は戸惑うばかりだが、火鉢も笑いながらレイピアを構え直す。火鉢が笑いを納めると一気に大魔王との距離を詰める。今までと同じようにレイピアを突き、魔法で剣を覆い、さらに火属性魔法を同時発動して、椅子ごと大魔王を爆破する。爆破だけでは倒せないと思って、辺りに高濃度の溶岩も発生させる。
「どうだ」
火鉢が会心の攻撃ができたと思って大魔王の姿を探す。ハッキリ言って、他の魔王達ならオーバーキルもいいところだ。切り殺され、爆破され、溶岩で焼き殺される。
「くくく」
溶岩の中から笑い声が聞こえてくる。
「お前スゲ~いいな」
溶岩に体の半分を溶かされ、顔は焼け爛れ、爆発の衝撃で跡形もなくなった王座の前で、尚も笑いながら佇む大魔王の姿は不気味でしかない。
「化け物め」
火鉢は戦慄を通りこして、自分の背中に冷たい汗が流れることに気付いた。今までどんな相手にも掻いたことのない冷や汗が出てくるのだ。
「これで全部か?ではこちらからも行くぞ。上手く受け止めろよ」
大魔王がそういうと、大魔王が作り出した魔力の固まりがボーリングの玉ぐらいの大きさになり、大魔王は魔力の固まりをゆっくりと下手投げで火鉢に向けて投げる。
避けることはできるが、ここで受け止めなければ相手に負けたような気がして、火鉢は魔力を全開にして魔力をレイピアに纏わせる。大魔王の魔力の球体をレイピアで突き刺した。、魔力の固まりとレイピアが触れた瞬間、火鉢は自身が犯した間違いに気づいた。
魔力の固まりはボーリングの玉の比ではないほどの重みがあり、火鉢に色んな衝撃を与える。
火鉢は言葉を発しようとしたが言葉にならず、意識を失った。
「終わったか、実に楽しめたな」
大魔王は嬉しそうに右手を掲げ振り下ろす。誰もが火鉢の死を覚悟したが、大魔王の右手は後ろに向き、溶岩を掻き消した。爆発によりぼろぼろになった王座が元も戻っている。
大魔王が王座に座ってこっちに振り向いた。近衛兵たちは我慢できずに魔王へ飛び掛かっていた。誰一人として王座に触れることなく、意識を失うことになった。
「お前は来ないのか?」
一人意識を失わず、大魔王を見つめている風香を大魔王が見つめて返す。
「ええ。大魔王さん。話があるんやけど聞いてくれはる?」
「いいぞ。今は気分がいい。話してみろ」
「おおきに、じゃあ早速やねんけど、私かヒーちゃん。さっきまで戦っていた勇者やねんけど、どっちかをお嫁さんにしてくれへん?」
風香の申し出に大魔王は目を見開き驚いた。
「唐突な申し出だな、意味がわからん」
「意味なんてないよ。私らは、と言うかヒーちゃんはスリルが大好きやねん。スリルを求めることで戦う事を求めた。そして私は強い男を求めた。それだけやで」
「それでは嫁になりたいのはお前だけではないのか?」
「違うねん。私らは二人で一人やねん。だから私の思ってることはヒーちゃんも思ってること。ヒーちゃんの思ってることは、私の考えでもあるんよ」
二人だけに分かる、二人だけのルール、大魔王にそれを理解することはできないだろう。だが、二人が大魔王を求めていることは十分に伝わってくる。
「そうか、だがそれでは我にメリットがないな」
「メリットはあるよ。こんな可愛い子をお嫁さんにできるんよ」
そういうと風香は胸を強調するように腕を組み持ち上げる。
「今更興味もないがな」
「あとはそうやね。大魔王さん、あんた異世界人の勇者やないの?」
「ほう?根拠は?」
風香の発言に、今まで興味無さそうにしていた大魔王が身を乗り出す。
「いくつかあるけど。まず大魔王やのに、人間やんね?」
「わかるか?」
風香は大魔王の風貌、言動から大魔王が人間であることを推測していた。確かに見た目は魔族のようにも見えるが、見た目などいくらでもカモフラージュできてしまう。
「わかるよ。ここまで暗黒大陸を旅してきたけど、人間と魔物さん達の気配は全然ちゃうもん」
「そうか。気配か、正解だ。俺は昔、土の勇者として召喚されて一つの国を滅ぼしたことで魔王に落ちた。そして永遠の生を手に入れた」
「ヒーちゃんの技を退けたのも土の魔法?」
「そうだ。俺自身を砂に変えてすべての攻撃を無効化した。溶岩であろうと熱せられるだけで、痛みはない。地面に足がついていれば修復は無限にできるからな」
「だからうちの攻撃も効かないんやね」
実は火鉢が戦闘をしている間、風香も同じように魔法を発動させていた。それは透明の空気の層を作り、大魔王のいる場所を完全な真空状態にして酸素を無くすものだった。しかし、大魔王は平然と笑って凌いでみせた。
「そういうことだ。それで?まだいう事はあるか」
「寂しない?強すぎて、一人で長く生きて、孤独な魔王さんの心にうちらを入れてくれへん?もう一つのメリットは大魔王さんに家族を作ってあげられることやで」
「そんなもの作って何になる?」
風香の言葉に大魔王の瞳が深い闇へと落ちているように感じる。
「それは作ってみないとわからんけど。私らは強い者を求めた。大魔王さんは新たな可能性に賭けたって言うのはどう?」
「くくく、お前も面白い奴だな。俺は一人を選ばないといけないのか」
「そんなことないよ。二人が欲しいなら二人ともあげる。私らが大魔王さんを幸せにしたるわ」
風香が満面の笑みを作り、大魔王に宣言する。深い闇を湛えた瞳は少しの光を取り戻したような気がした。
「期待している」
「それで大魔王さんの名前はなんて言うん?」
「俺か?久しく名乗っていないが、昔の名前は初代土の魔王 砂丘 修二だ。」
「よろしくね修二さん」
風香は、誓いの証として大魔王へキスをする。
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