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探検者になります7

 ハックの計らいで、すぐに孤児達が来る準備ができた。集められた孤児たちをアクは転移で迎えにいった。二十五人の子供と、一人の女性だ。子供たちのほとんどが女性ばかりだった。男子と言うか男の子は三人しかいなかった。


 バンガロウでは孤児は少ない方だが、戦いの中で親を亡くした者、親の稼ぎが悪くなり、捨てられた者がどうしてもいる。そういう者達の成れの果ては盗賊か、娼婦か、野垂れ死ぬかしかない。


 黒いローブを着込んだアクを見た子供達は、アクに恐怖を感じた。自分達をどこかに連れて行く、黒いフードの男に恐怖するなと言う方が無理がある。

 孤児達の怯えた顔を見て苦笑いするしかないアクは孤児達を一か所に集めて手を繋がらせる。そして、一気に全員を転移でフェアリータウンに連れて行く。


「さぁついたぞ」


 黒いフードのアクの声に子供達が驚く。先ほどまで確かに孤児院の前にいたのだ。それが今は村の広場に立っている。驚くなと言う方が無理がある。


「ここが今日からお前たちが暮らす場所だ」


 アクの言葉に子供達は、ここで強制労働でもさせられるのかと思ったのか、泣き出す者までいた。あながち間違ってはいないのだが、困っているとエリスがやってきた。


「アク、どうしたの、これは?」

「いや、俺は何もしてない。ただ子供達を連れてきただけだ」

「そりゃ~そんな格好した人に連れて来られたら怖かったでしょうね」


 エリスに咎められる視線を受けて、アクがしょんぼりする。それを見ていた子供達は、黒いフードの男を倒してしまうさらに怖い人がきたと思ったが、その女性は優しい声で子供達に話しかけた。


「怖かったでしょ。でも、もう大丈夫よ。ここにはご飯もある。住む場所もある。少し仕事はしないといけないけど、皆で勉強もできるからね。これから貴方たちは私の子供よ」


 子供と宣言した女性も若いが、子供達はその優しい声に、だんだん安心感が生まれつつあった。一番体の大きな女の子が前にでる。


「私たちは奴隷になったのですか?」


 一番大きな子は奴隷について知っていたらしく、諦めたような目をしてエリスに質問する。


「いいえ。あなたは奴隷じゃないわ。あなたのお名前は?」

「ミシェルです」

「ミシェル、あなたは今日から私の家族よ。一緒に暮らすの」


 それに対してエリスは女の子の頭を撫でてやり、優しく言葉を返す。


「今まで辛かったでしょ。ここでは皆を蔑む人も、苛める人もいない。その代わり、皆で力を合わせて生きて行くの」

「私たちは何をすれば?」


 一番大きな女の子は顔を上げ、エリスに問いかける。


「そうね、まずは掃除かしら。皆の暮らす部屋を綺麗にしないと」


 エリスに連れられて孤児達は歩き出す。ミシェルと名乗った少女は、この中では一番の年上だったのだろう。勇気のある子だとアクは微笑ましく眺める。一人残った女性は唖然としている。


「あの~私は何をすれば?」


 見た目は三十代前半で、アクよりも少し年上な女性だ。この村では一番の年上になるだろうか、顔は正直綺麗とは言えないが、不細工と言う感じもない普通な人だ。ただ姿がこの世界では珍しい、修道女の服を着ている。


「孤児達の世話をしていた方ですね?」

「はい。シスタークレアと申します」

「ほう。シスターですか、ではセントセルス神興国から来られているのですか?」

「はい。セントセルス神興国で洗礼を受けて派遣されてきております」

「そうですか。ではあなたに質問があります」

「私に答えられることであれば」


 アクの目的のためには彼女の存在は邪魔になるかもしれない。アクは彼女を試すように質問を投げかけた。


「では、あなた達は魔人や獣人の事をどう思いますか?」

「悪しき者にはバツを。亜人は生まれことが罪です」

「その罪とは?」

「異性間交流で生まれた者を、清い我らが人族が受け入れることはできません」


 シスタークレアに間違いありませんと言う目をされて、アクは決断した。


「あなたを受け入れることはできそうにないですね」

「はっ?」


 シスターがアクに言葉を返した時には、アクの姿も周りには建物もなかった。あるのは数年ぶりに見るセントセルス神興国の聖都が目の前にあった。


「なっ!」


 シスタークレアを転移で飛ばした真意を、クレアが理解することはないだろう。しかし、拒絶された聖職者の行動は簡単なものかもしれない。


「私を受け入れないなど。異端だ。許しませんよ」


 クレアの中で渦巻いた気持ちは、神を冒涜した者への制裁だった。


「シスタークレアです。枢機卿への願い申し立てがあってまいりました」


シスタークレアの進言を吟味した枢機卿が、聖都より神聖騎士団を派遣するのに時間はかからなかった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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