表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/213

探検者になります6

 サントンの許可をもらったので、アクは内務大臣のハックに手配を頼んだ。それによりバンガロウ王国に住む二十五名ほどの孤児と、一人の教育者を受け入れることが決まった。


 アクが王の間から出ようとすると、サントンが声をかけてきた。


「アク?そろそろお前の領地の場所に名前を付けろ。いつまでも忘れられた町ではカッコも付くまい」

「それもそうかもしれませんね。ではフェアリータウンにしていただけませか?」

「精霊の町か?村ではなく。町にまで発展させると言う事でいいんだな?」

「はい」


 アクが自信有りげに頷いたのでサントンも頷き返す。


「よかろう。この日より忘れられた村はフェアリータウンだ。頑張ってくれ、アク」


 サントンの労いの言葉を聞いて、謁見の間を退室したアクの後ろをヨナが付き従う。


「隊長。やっぱり凄い人」


 ヨナは頭の良い子である。アクが何を目的にしているのか、またサントンや他の大臣達の会話を聞いてアクが会話の主導権を握っていたのを理解しているのだ。


「そんなことはないさ。要は慣れの問題かな」

「慣れ?」

「ああ。ヨナにもできると思うぞ。ヨナは頭がいいからな」


 アクはヨナの頭を撫でてやる。ヨナは気持ちよさそうにして、素直に受け入れる。


「次は商店に行くぞ。何か欲しい物が無いか考えていろよ」


 アクは城を出た足で、エビスの下に向かった。これから村を発展させていく上で、衣食住の確保は先決なのである。


「エビスいるか?」


 エビスの店の裏から入り、直接エビスの執務室に入る。ヨナは前に自分が地下に幽閉されていたのを思い出したのか、店に入るのを少しためらった。アクはヨナの手を強く握りしめ、大丈夫だと安心させる。ヨナも強く掴み返しアクの後に続く。


「これはこれはアク様、よくぞいらっしゃいました。今日はどういったご用件で?」


 エビスは更なる成長を遂げた腹を突き出して、揉み手でアクの近くまで歩いてくる。


「まぁ話は座ってからにするか、それよりまたデカくなったな」


 アクはエビスのお腹と弛んだ顎をバウンドさせて感触を楽しむ。


「ははは。商人は見た目も大切ですからね。旨い物をより多くとり、裕福であるアピールをしなくては」

「まぁ人の考えは、人それぞれだからな」

「それで今日はどうされましたか?」

「ああ。用意してほしいものと頼みがある」

「アク様の頼みであれば喜んでお受けしますよ」

「じゃ早速だが」


 アクが商談を滞りなく終えて、ヨナに話しかける。


「ヨナ?さっき言ってた欲しい物は決まったか?」

「えっ?」


 ヨナはアクの商談を見ているだけで、何も考えていなかったらしい。


「さっき言っただろ?ほしい物を考えていろって」

「ごめんなさい」


 ヨナはアクに怒られたと思ってしょんぼりする。


「別に怒ってはいないから、謝る必要はないぞ。それより改めて欲しい物はないか?」

「欲しい物はないです」

「う~ん、そうか。じゃ皆にも土産を買っていこうと思っていたから、その時に見て決めればいいか」


 アクはそういうとヨナの手を取り、エビスが経営するデパートに入って行った。大抵の物が揃うので、人のにぎわいが凄い。さらにセールや値引きなどもしているようで、他の店に差をつける戦略も流石と言える。多くの商品を扱うことで中古や品質の低下などを理由に、値引きしているようで買う側にもありがたいのだろう。アクはつい物よりも戦略に目がいってしまう。


「どうだ、ヨナ?何か欲しい物はあったか?」


 五階建のデパートを一通り練り歩いた。


 一階 食料品

 二階 紳士服、靴、帽子屋

 三階 婦人服、子供服屋

 四階 雑貨・アイテム屋

 五階 武器、防具、魔法道具屋


 と考えて商品が置かれている。


「分からない。でもお揃いの服が欲しい」


 ヨナは物珍しそうに色々な物を見ていたが、決まらなかったようだ。そのためアクと同じ黒いローブが欲しいと言ったのだ。アクはそんな地味な物でいいのかと聞くと、ヨナは何度も大丈夫と言うので、三階の婦人服売り場に行き、黒いローブを買ってやった。他にもそれぞれに似合いそうな服や下着をヨナに選んでもらい、皆のお土産にしてブラックホールにしまう。


「これで今日の用事は終わりだ。すっかり日がくれてきたな、そろそろ帰るか」


 アクがヨナに告げると、一日一緒にいたことで満足したのか、ヨナが珍しく笑っている。


「ヨナの笑顔は可愛いな。その笑顔があれば大抵の男はいイチコロだぞ」


 アクが笑顔の事を言うと、ヨナは恥ずかしそうにした。そして少しハニカミながらも、いつもの無表情に戻ってしまった。

 転移の魔法を使い村に帰り、皆にお土産を渡すと喜んでいたが、少女たちにはお土産よりもアクと二人でお出かけしたヨナの感想の方に興味があるらしい。全員でヨナを囲んで何やらアクには聞こえないように話をしていた。


「どうでしたか、王都は?」


 一人アクの横でお茶を入れてくれるエリスに、手応えがあった事を伝えて、また忙しくなると告げるとエリスもやりがいがありますねと微笑んでくれた。本当にエリスがパートナーでよかったと思った。

いつも読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ