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探検者になります5

 アクは赤猿族から得た情報を下に、他の種族がどこにいるのか目星をつけた。


「エリス、聞いてくれ。猿人に会えたんだ」

「あら、よかったじゃない。一歩前進ね」


 エリスはアクの態度を見て、子供が新しいオモチャをもらって喜んでいる姿に似ていると微笑ましく思ってしまう。今まで理知的だったり意表を突く作戦を考えるアクに驚、かされてばかりいたけど、最近のアクはいつも楽しそうにしている。それを見ていると、エリスも嬉しくなってくる。


「エリス、家族を増やそうと思う。猿人の村を見て思ったんだ。ここも、もっと村らしく人を増やそうと思う」

「人を?どうやって増やすの?」

「考えがあるんだ」


 アクは考えていたことをエリスに伝えた。エリスから賛同を得られたので、アクはさっそく次の日、人間に近いヨナを連れてバンガロウの街にきていた。

 ヨナはアクと二人でお出かけと言うことで、いつもよりハイテンションになっていた。但し顔は相変わらずの無表情なので、あまり周りには伝わらない。


「隊長、どこいくの?」


 今日のヨナは一味違う。いつもは話すのは誰かに任せているが、頑張って話そうと決めてきたのだ。


「うん?ヨナが質問してくるのは珍しいな。今日はバンガロウの城に行って、王様に会うんだ。ある事を許可してもらうためにね」

「ある事?」

「それは今日一日ついてきてくれたらわかるから」

「うん」


 ヨナは頑張って話したと、ガッツポーズを小さくする。アクもいつもより話すヨナにお出かけしてよかったと思う。前回のガメガロンを倒したご褒美も兼ねているので、喜んでくれているのなら嬉しい。


「じゃまずは城に行こうか」

「うん」


 ヨナと手を繋いで、城に入る。門番達はアクの姿を見て敬礼で返す。アクは王都に来ると言うことで、いつも愛用している黒いフードを着てきている。それを見れば、兵達は軍師兼参謀兼宰相だと一目でわかるのだ。


「隊長、偉いの?」

「偉くはないさ。今は只の探検隊隊長だ」

「そう、それならいい」


 ヨナはアクの手を強く握る。


「どうかしたか?」


 アクはヨナの力が強くなったので、何かあったかと心配する。


「ううん。なんでもない」


 ヨナがなんでもないと言うのでアクはそれ以上は聞かなかった。そのまま兵士に案内され謁見の間に入る。


「お久しぶりです、サントン王」

「おう、アクじゃねぇか。戻って来る気になったのか?」


 サントンは絶対に戻ってこないと知っているのにも拘わらず、会う旅にこの質問をしてくる。


「王様、この者は我らを捨てた者です。あまり軽はずみな言動はお控えください」


 サントンの横で、控える外務大臣にして商業ギルド、ギルドマスターキララがアクに嫌味を返す。


「キララは手厳しいな、どうだアク?」

「手厳しい限りです。ですが、私などがいなくても優秀な外務大臣、内務大臣、軍務元帥がいれば問題はないかと」

「だっ、そうだ外務大臣殿」

「ふん。優秀な者がいようと、人手はいくらでもいるんだよ」


 キララは納得できないのか、イライラした声を変えようとはしない。


「まぁよいよい。それでアク、今日は何をしに来たんだ。お前にはお前のやりたいことがあるんだろ?」


 サントンだけにはアースの調査をしていることを話している。


「そのやりたいことに人手が必要だと思いまして、ある提案をお持ちしました」

「ほう、提案とはなんだ?」

「はい。バンガロウには多くの孤児が居ります。親がいない者、親に捨てられた者、そう言う者達を我が村に招きたいと思います」

「孤児をお前が面倒みると言うのか?」

「はい」

「それは俺にとってどんなメリットがある?」


 サントンが王の顔になり、アクの次の言葉を待つ。


「はっ、私が孤児達を育てることで、孤児達に色々な教育ができます。さらに孤児達は盗みや詐欺などの犯罪を起こすこともありましたが、それも無くなります。これはバンガロウの治安もよくなり、さらに無駄な人材を作らなくて済むので一石二鳥です」

「一石二鳥?」

「一個の石で二羽の鳥を仕留めることができると言う意味です」

「おお、それはいいな」


 サントンがアクの言葉を理解して喜びの声を出す。


「少し待ってください。そんなことをされてはバンガロウの人口が少なくなってしまいます。それに孤児には孤児の仕事もあります」


 アクの言葉に反論したのは、内務大臣を務めているハックだった。


「人口に関しては治安が良くなれば次第に増えていくでしょう。孤児達の仕事と言いますが、孤児達の仕事は元々雑用か、裏の仕事ばかりです。そういう仕事はむしろ冒険者や傭兵にこれから振って行った方がいいでしょう。治安が良くなると言うことは、その者達の仕事が減ることにもなる。そうすることで孤児達の仕事も冒険者達の仕事も補えましょう」


 アクの考えを聞いてハックは頷き、何も言わなくなった。


「相変わらずだな、アク。バンガロウ王国自慢の両大臣を黙らせるか」


 サントンは嬉しそうに大笑いする。これにはキララは不機嫌そうに、ハックは無表情にしているが、どこか悔しそうにしていた。


「アクの提案、王の名により承認する。この王都バンガロウだけでなく、他の村で孤児がいるならお前の村に届けるように伝えよう」

「はっ、その時に孤児を面倒見ている者が付いてきたいと言えば、同行させても構いませんか」

「あいわかった。そのようにしよう」


 サントンは何度も頷き嬉しそうだ。その横で両大臣は不機嫌そうなのは仕方ない。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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