??王になります終
朝になり、アクは気怠い体を起こす。昨日はハッスルしてしまって、思い出すと恥ずかしい。でも、皆にも話すことができた。エリスが言うとおり、決めるのは彼女達だ。
自室の鏡を見つめて顔を叩いて気合いを入れる。エリスは先に起きて朝食の準備をしてくれている。
「いくか」
誰に言うでもなく、気合いを込めて部屋を出る。食堂に入ると、全員がエリスの手伝いをしていた。これが全員で摂る最後の朝食かもな~と考えが巡るが、頭を振って席に着く。
「いただきます」
アクの声に他の者が続く。食事はいつもと同じで仲良く談笑しながら進み、昨日の話題に触れる者は誰もいなかった。
「ご馳走様」
アクが食事の終了を告げる。アクはここかと身構える。
「マスター、そんなに悲しそうな顔しないで」
シーラが堪らなくなったのか、アクに声をかける。
「悲しい顔なんかしてないぞ」
アクは空元気を装いすぐに返答をするが、少女達は顔を見合わせて笑いだす。
「スッゴイヒドイ顔してたよ。マスター」
ルーがからかうように言ってくる。うん?そんなにヒドイ顔をしてたか?とエリスの顔を見る。エリスはしてましたよと、頷き返してきた。
「ハァ~顔に出てたか、面目ない。これが皆で摂る最後の食事かと思うと顔が強張ってな」
「最後?どうして最後なの?」
ピピンが質問してくる。
「マスターは私達が出ていくと思っておるのだろう」
ピピンの質問にサーラが答える。
「え~私達出ていくの?」
「そんなことはありませんよ。私達はマスターの協力をすると決めたのですから」
ビビンの不安そうな声に、ハナが優しく答える。
「お前達!それでいいのか?道半ばで倒れるかもしれない。夢のような話なんだぞ。叶うかわからない」
「それでもマスターは挑むんでしょ?その叶うかわからない夢に?」
「それは俺の夢だからな」
「私達もその夢に協力したいと思ったの」
アクが少女達の顔を見渡すと全員が頷き返してくれた。
「ありがとう。でも協力してくれるなら条件がある」
「え~、条件とか酷いよ」
それまで黙っていたアンリが、机に倒れ込みながら文句を言う。
「悪い条件じゃない。皆を奴隷から解放をしたい。これからは仲間として家族として協力してほしい」
「家族?」
ヨナが首を傾げて聞いてくる。
「そうだ。俺達は家族、種族も性別も関係ない。俺達は家族だ」
「なんだかクサいが、まぁよかろう」
サーラが笑い、承諾したことで他の者も頷いていく。アクは嬉しさと気恥ずかしさで涙が溢れてきた。エリスは自分にとって絶対の味方だと思う。エリス以外で初めてできた家族と呼べる者達、ずっと異世界にきてから孤独を感じていた。
アクを見つめる少女達の目を見ているうちに心は温かくなっていく。俺はこの子達を守れるように強い王になろうと決意した。
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