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??王になります6

 食堂に集まった仲間達を見て、アクは話し始める。


「これからの事を話し合いたい。いいかい、これからみんなの家族に会いに行こうと思う」

「家族?」


 ルーが代表して聞き返す。


「ああ、そうだ。ここを拠点にしてアース大陸に入る」

「アース大陸へ?」


 これにはハナが答える。


「ああ。みんなの家族が住んでいるアース大陸に入って、俺はアースの民と交渉したいんだ」

「交渉とはなんだ?何をするつもりだ?」


 サーラが怪訝な表情でアクを見る。


「交渉と言うか、俺は、人間も、獣人も、精霊族も、魔人も、誰もが気兼ねなく暮らせる国を作りたいと思ってる」

「はっ、そんなの無理に決まってるじゃないの」


 シーラが在りえないと首を振る。


「本当に無理だと思うか?」


 アクがシーラに聞き返す。


「無理ね。獣人や精霊族ですら分かれて暮らしているのよ。それに人間族だって国を作って争っているじゃない。そんな理想が叶うわけないわ」

「そうだな。でも。俺達は共に暮らしている。全く違う種族なのにだ」

「それはマスターが強いから。奴隷として従ってるだけよ」


 シーラらしい考えで、バッサリと切り捨てられる。


「俺は別にお前達を奴隷として縛る気はないぞ」

「それはマスターの考えでしょ。他の者がどう判断するかわからないわ。私はマスターに従うと決めたのだから奴隷から解放されるのは嫌よ」


 シーラは解放を拒否する。


「シーラの意見は極端として、ここを拠点としてアースに入ることは変わりない。そこで皆には足がかりとして、この村というか、精霊と獣人の森エスカトン全体に国を作る手伝いをしてもらいたい」

「たったこれだけで?」


 シーラの辛辣な言葉が続く。


「初めはこの人数だ。だがアースの住人や、バンガロウの住人が協力する架け橋になれればいい」

「どうしてそんな無駄なことをしようとするの?」


 シーラがまたも横槍を入れる。


「シーラは納得できないみたいだな。俺はな、獣人や人間、魔人や精霊なんて関係ないと思うんだよ。なのにこの世界の住人は、魔人は敵。獣人は敵とすぐに敵を作りたがる。憎しみは憎しみしか生まない。共存できる場所を作りたいんだよ。誰もが気兼ねなく暮らせる場所をな」


 アクも話しているうちに熱が籠ってきたのか、言葉に熱が入る。熱は聞いてる者にも伝わり、全員黙り込んでいた。エリスには引っ越しを告げた時からこうすることを告げている。あとはサントンだけがアクの計画を知っている。

 サントンは約束してくれた。アクがアースを平定するなら、自分は連邦を一つの国として支配してみせると言っていた。


「マスター、どうしてマスターがそこまでするんですか?」


 シーラが今までの反対するような口調ではなく、本当にただの質問として聞いてくる。


「俺はね、異世界から召喚された勇者なんだ」


 この言葉に奴隷達は息を飲む。勇者云々の話はルー以外には初めて話したのだ。勇者ということを知っているのは、シルバーウルフ団の幹部とルーにしか話していない。


「俺は闇の勇者として召喚された。闇は混乱を生み世界の敵になるそうだ」


 アクの鎮痛な物言いに誰も言葉を挟まない。


「だが、俺はそんなことのために、ここにいるんじゃない。俺は勇者にもなりたくない。他の種族とも戦いたくはない。今までだって最小限の被害で何とか戦いを終わらせてきた。俺は異世界に憧れていた。憧れた異世界は他の種族と共存して、誰もが笑い合い、魔法や剣や冒険に溢れている世界。そんな世界を作りたいんだよ。こんな戦争ばかりの世界に来たかったわけじゃない」


 アクが今まで溜め込んできた思いを奴隷達に話し終えて、少し顔が赤くなる。


「そういうことだ。後は皆で考えてくれ。俺に協力したくない者は奴隷契約から解放して自由にするといい。協力してくれる者は残ってほしい。以上だ」


 そういうとアクは食堂から出て行ってしまった。


「皆の好きにしていいの。無理はしないでね」


 エリスは後に残り、俯いた奴隷達に優しく声をかける。


「あの人の夢なんだって、男の人は本当にロマンティストね。でも私はそんなあの人についていくと決めたの。だから皆も自分の意思で決めてね。奴隷としてではなく、一人の自分としてどうしたいか、今日は解散にしましょう」


 エリスがそういうと、一人また一人と席を立つ。アクが自室で枕を抱えて転げ回っていたのを知っているのはエリスだけだ。


「あんなに力説するつもりはなかったなのに」

「いいんじゃない?アクの夢だもの。あの子達が同じ夢を見てくれるかは、あの子達が決める事よ」


 エリスがそういってアクの頭を撫でてくれる。そのままアクはエリスを引き寄せ、服を脱がし灯りを消した。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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