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閑話 その他の勇者達13

今日から閑話です。


楽しんで頂ければ幸いです。

 三日三晩走り続け、神代カミシロ 火鉢ヒバチ安城アンジョウ 風香フウカの美少女勇者コンビはマーメイド族の里に辿り着いていた。マーメイド族の里は、半分以上海の中にあり、陸上に出ているのは、大きなドーム状の巨大貝だった。


「やっとついたな」

「ついたんはいいけど。これは手におえんのとちゃう?」

「う~ん実際に行ってみないとわからんないけど。難しそうだな」


 二人は大人三人ぐらいが余裕で横になれる快適馬車の中で過ごしながら三日を過ごした。近衛兵達が御者を代わりながら交代で三日三晩を走り抜けた。

 ちなみにヴィクターは昼は勇者達と共に馬車の中で寝て、夜は馬車の上で過ごしていた。こうして二台の馬車はマーメイド族の里が一望できる丘までたどり着いたのだ。


「それでこれからどうするん?」

「まぁ皆も疲れているだろうしな。一日ここで休んで、明日にでも潜入してみるか?」

「面白そうやね」


 火鉢の発案に風香が賛同すれば、反論する者は誰もいない。


「今日はここで野宿だ。しっかりと食事を摂って休んでくれ」


 まったく二人は疲れていなかったが、さすがにボロボロの近衛兵達を見て可哀相に思った。先ほどまで一緒に休んでいた、レイチェルに紅茶を入れてもらい一息つく。レイチェルは貴族の娘だけあり、紅茶の嗜みもなかなかで、入れるのが上手い。アンジェリカに匹敵するのではないかと火鉢は考えていた。


「少しよろしいでしょうか?」


 エルファルトが声をかけてきたので二人は彼に視線を向ける。


「どうした、エル?」

「はい。先ほど潜入という案を出されていましたが、あちらの種族がまったくわからないのに、潜入などできるのでしょうか?」

「う~ん?どうなんだヴィ?」


 火鉢に呼ばれたヴィクターが眠そうな目を擦りながら答える。


「大丈夫じゃないか?奴らは魔族の中でも陽気な集団で、あまり他種族とかを気にしなかったと思う」

「だっ、そうだ」

「ならばよろしいのですが」


 エルはヴィクターを睨み付けた。エルファルトからすれば、魔族は信用ならない存在である。更に火鉢に負けたとはいえ、ヴィクターは近衛兵が五人がかりで勝てるかどうかわからない相手なのだ、警戒してもしきれない。


「おい、人間。俺は風香の物になったんだ、いちいち睨むな。ウザい」


 エルの視線に気づいていたヴィクターがハッキリと拒絶を告げる。ヴィクターは見た目こそ十二・三歳ぐらいの美少年だが、内包する魔力はこの中で一番なのだ。


「貴様のような魔族、しかも魔王が下僕とはお笑いだな」

「何を~まぁ弱い奴に何を言われても気にしないがな」


 完全に気にしていたが、気にしていないフリをするヴィクターに、風香が萌えていたのは言うまでもない。エルファルトとヴィクターは旅を始めたときからずっとこの調子で言い争いをしている。

 エルファルトもヴィクターも負けたのは火鉢なのだが、エルファルトは火鉢の猛信者であり、ヴィクターは風香の奴隷と言う立場を表明している。

 当の火鉢と風香はまったく気にしていないので、二人で勝手に喧嘩しているだけなのだが。


「二人ともいい加減にしろ、今は休むときだろ」


 この二人を止めるのはレイチェルの役目になりつつある。火鉢と風香が気にしないので、止めてくれないため、他のメンツでは止めることもできない、そうしているうちにレイチェルが切れた。


「五月蠅い、お前らガキか!いい加減にしろ」


 レイチェルの拳骨が二人の頭に落ちて終息する。

 

「ホンマ三人は仲良しやね」


 風香の言葉にレイチェルは脱力する。


「お二人が止めてくださればもっと早く終りますが」

「止める?二人の漫才をか?面白いだろ」


 火鉢の発言によりレイチェルはもう話しても無駄だと思い、ため息をついた。その後はしばしば二人が揉めることはあったが、穏やかに時間が流れていき、一日を終えた。


「それで潜入は本当にこれでするのでしょうか?」


 エルファルトは魚と言うか、半漁人の着ぐるみを着させられ、ヴィクターは腰までの人魚スタイルに白髪ロングのカツラをさせられている。


「二人ともよう似合っているよ」

 

 風香が会心の力作ができたとガッツポーズをつくっている。ちなみに二つともアンジェリカに作ってもらい持たせてもらった。


「はぁ……」


 エルファルトはどうしていいかわからないと火鉢を見る。


「まぁ、なんだ。全くマーメイド族がいないのはよくないかと思ってな。カモフラージュだ」


 火鉢も二人の着ぐるみ姿に笑いをこらえているようだ。


「そうですか」


 火鉢に言われてしまえば返す言葉もない。ヴィクターの方は自分の姿に満更でもないという風に鏡を何度も見ている。カツラが似合っていて、美少女人魚が出来上がっている。


「キモいぞ、魔族」

「なっ!こんなにも美しい美少女を捕まえてキモいとは、お前の美的センスを疑うぞ」

「お前の感覚の方が疑うわ。男のお前が自分のことを美少女とかいうな。キモい」

「ふん、貴様のような美もわからぬ者とはもう話さぬ」


 そういうと、本当にエルファルトから離れて一人で飛びながらマーメイド族の里に降りていく。


「ふふふ、ホンマに面白い」


 風香がそれを見ながら笑い転げていたが、みんな風香の笑い上戸なところには慣れてしまっているので突っ込まない。


「さぁいくぞ。フ~もいい加減戻ってこい」


 笑い上戸の風香が笑い終わるのを待って、八人はマーメイド族の里である貝ドームの中に入る。中は真っ暗で、どうなっているのか分からなかった。奥に進むにつれて次第に明かりが見えて来て、明るいところに出れば、そこはステージだった。

 大きな貝で作られたステージの上で、二十人ぐらいの魚人が踊っている。さらに貝ステージを囲って海の中に魚人達が犇めき合っている。貝ステージ向かって声援を送っていた。


「キセラサマ~~~」


 声援が一段と大きくなったとき、ステージにスポットライトが当たり、一人の人魚がステージに上がってきた。


「みんな~元気~?」

「オ~~~~キセラ、キセラキセラ!!!」


 熱狂的なファンがキセラコールで叫び出す。


「何なんだこれは」


 火鉢が唖然とその光景を見ているなか、風香は笑い転げていた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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