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裏切り者になります18

 クック村と王都バンガロウとの距離は、人が一日歩けば着くことができる。だからといって、歩き詰めれば疲れてしまう。さらに二百人という人数を連れ歩くのだ。足の並みを揃えなければならない。ハッサン達は小休憩を三度挟み、王都バンガロウの近くの森まで来ていた。


「開始時刻は後どれくらいだ?」


 すっかりハッサンの副官が板に付いたダンがハッサンの質問に応える。


「あと一刻ほどですね。太陽が真上に来たときに攻撃して、一通りの攻撃を終えたら撤退にかかります」

「ああ、捕虜たちは大人しくしているか?」


 この遠征には今まで捕まえた三人の将軍たちも連れて来ていた。


「はい、一人騒いでる者がいますが、今のところ問題ありません」

「そうか、なら時刻とともに決行する。今のうちに最後の休憩をして英気を養うように、みんなに言っておいてくれ」


 ハッサンとダンはアクの作戦通り、一度王都を攻める準備を始めていた。


「わかりました。隊長は?」

「俺はしょんべんだ」

「了解です」


 ダンはそういうと、ハッサンの傍を離れた。ハッサンは一人になり、木陰の中で黒い剣を抜く、ゲオルグに渡された魔剣にどんな力があるのか、ハッサンはゲオルグに聞いてはいない。

 しかし、元々魔法が使えるグラウスや、ゲイザーの下で魔法が使えるようになったサントンに負けたくなかった。

 最近では、記憶喪失にもかかわらず、ハッサンでは考えられない作戦を考える、アクに稀な闇魔法を使いこなす奴まで現れた。

 どんどん魔法を使える者が増えていくなか、自分だけが使えないことに焦りを感じていた。だからこそハッサンは魔剣に期待していた。


「俺の力だ。俺は大将だ。行くぞ」


 魔剣を握り締め素振りする。今まで使っていたバスタドーソードより、少し重く感じる。ただ握る手の感触は悪くない。


「あいつらばかりに良い恰好はさせない。俺の力を見せるんだ」


 ハッサンは小心者なところがあった。アクは、小心者ですぐに暴力に頼りがちなハッサンの性格を見抜いていた。

 だが、いくつかの戦いを見てるうちにハッサンは人が盛り立てれば力を発揮する人物だと考えを改めた。だからこその今回の大将にハッサンを推すことができた。


「隊長、そろそろ時間です」


 汗が滴り落ちるまで素振りを続けていた、ハッサンの下にダンが知らせに来る。


「おう、今行く。いよいよだ」


 ハッサンの顔に気負いは無く、清々しい顔でダンの横に並び立つ。元々大きかった体はさらに大きく見え、ダンには凄い男と戦えるのだという思いで安心感すら覚えた。馬に跨ったハッサンは、準備の終わった二百人の解放軍の先頭に立った。


「この戦いも今日で終わりにするぞ。俺に続け!」


 黒い魔剣を掲げて、突撃の合図を出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王宮は朝から慌ただしかった。王座に座るシシンガーの下にも次々と報告が上がってくる。その傍らには赤い髪をした美女が、金色の鎧を纏い立っている。その光景は異常な感じを受ける。


「ご報告申し上げます。クック村から現れた盗賊共は二百ほどで、この王都に攻め込んでくるもようです」

「はっ?足った二百で、この王都を落とそうというのか?」


 シシンガーは報告にきた兵士を嘲笑うかのように一笑していた。


「すでに二百人の者が南門の前の森に集結しております」

「一つの森を攻められたぐらいで何を狼狽える?南門は守備三百として西、東門より騎馬隊200を出撃させ、挟撃をかけよ」

「はっ」


 シシンガーの指示を聞くなり、兵士は立ち上がって謁見の間を後にした。


「くくく、無駄なことをする。仮に門を突破できても二百で何ができる。弱小な者達がいくら足掻こうと、今の我を倒すことは叶わぬというのに、のぅサラ」

「はい。我が王よ」


 サラと呼ばれた女性は、無表情のまま王に返事をする。


「王様、兵の様子は見に行かれないのですか?」


 宰相は軍の事はわからないが、嫌な予感がしていた。宰相を一瞥しただけで、王はまたも一笑にふす。


「必要あるまい。二百で何ができる。百人長や千人長が居なくとも、我が指示を出せばあっとう言う間に決着がついてしまうわ」


 ドイルの予想が的中していた。王は王座から動くことはなく、玉座に座り続けることを選んだ。


「さようで・・・」


 宰相は、王の態度を見て危ういと感じた。しかし、王の言う兵力差というのも間違ってはいない。確かに数はそれだけで暴力なのだ。それに加え、籠城戦は守る方が圧倒的に有利とされ、攻める方は守る側の三倍の兵が必要だと言われている。

 それに対して、今回の相手は五分の一、六分の一しかいないのだ。突破される恐れすらない。


 ではどうして攻めてくる?ここまで王国を苦しめた者が意味のないことをするだろうか?他に狙いがあるのではないか、宰相は考えたことを口に出そうか悩むが、自信満々に王座に座るシシンガーの顔を見て意見することを止めた。その代わり謁見の間を出ていく選択肢を選んだ。


 これにより王は一人となった。大臣達は攻めてくる解放軍の対応に追われ、兵達もまた同様に忙しく走り回る。


「サラ、やっとお前と二人きりになれたな」


 シシンガーはサラマンダーを召喚してから、サラマンダーの姿と魔力に当てられ自我を保てなくなっていた。


「はい。我が王よ」

「もうすぐ邪魔な害虫が駆除される。そしたらたっぷりお前との時間を取ろうな」

「はい。我が王よ」

「お前は本当にかわいいな」


 シシンガーがサラに触れようとしたとき、部屋中に緑色の霧が立ち込めだした。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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