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裏切り者になります15

 アクの作戦には人手がいる。そこで、カシス村とソルト村の男衆も、全員参加してくれることが決まった。

 今回の戦いでは、二百人ほどの解放軍が、それぞれ五十ずつに分けられ、Aグループをゲオルグ、Bグループをダント、Cグループをボルス、Dグループをハッサン、補佐にダンを付けて、それぞれをリーダーにした編成がされた。


「アクとサントンは潜入かよ。いつも美味しいところはお前たちだな」


 ハッサンは、作戦と内容を聞いて愚痴をこぼす。


「仕方ないだろ。それぞれ適材適所って言葉があるだろが?」

「なんだそれ?」


 アクの言葉を、ハッサンは理解できなかった。


「そいつの能力に合った仕事をするってことだよ」

「ああなるほどって、やっぱり美味しいとこはお前らが似合うってことじゃねぇか」

「意外に頭が回るな」


 アクはハッサンの意外な回転の速さに感心して素直に言ってしまう。


「褒められてる気がしねぇよ」

「なんだよハッサン、お前は集団でこそ栄えるとアクが判断したんだ。将軍向きってことだろ、いいじゃねぇか。頼んだぞ」


 サントンが上手いフォローを入れてくれたおかげで、ハッサンも満更でもない顔になる。


「そうか集団でこそ俺は栄えるか。将軍か~悪くないな」

「ああ、先頭に立って皆を率いてる自分を想像してみろよ。カッコいいだろ?」

「確かに。俺が一番格好いいかもしれん」

「それに比べて俺達の仕事はどうだよ。誰も知られてないところで、ヒッソリと戦って、勝っても誰も見てないんだぞ。地味だぞ」

「確かに地味だな。がんばれよ、サントン。お前にお似合いの仕事じゃねぇか」


 上機嫌になったハッサンを尻目に、サントンがアクの隣に戻ってくる。


「ハッサンを乗せるのが上手いんだな」

「あいつは調子になっているときの方が強いんだよ。思い込みが激しい奴だからな」

「そういうもんか?」

「気持ちは大事だろ?」

「そうだな。俺達も行くか」


 アクは最近愛用している黒いローブを着てフードを被る。それに続いて、白いフードを被った少女が3人の後を追い、さらに後ろに茶色いローブを着た男二人が続く。六人は村の外に出て、アクの転移魔法で、王都に先回りする。


 二日後に来る本隊が到着次第、作戦開始となる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アクの転移魔法で王都に侵入した一行は、ある建物の前に来ていた。


「ここはどこ?」


 エリスを建物を見上げながら声を出す。


「多分あってると思うんだが」


 アクも自信なさげに見上げている。


「お~これはアク様、ようこそいらっしゃいました。良き友よ」


 アクが現れたことを使用人に告げられ、エビスが中からから飛び出してくる。その腹は建物と同じで急成長していた。


「お前、また丸くなったな」

「そうですか?」


 まるで自分ではわからないという感じで、エビスが首を傾げる。


「まぁいい。エビス、ここにいるのは俺の仲間だ。数日匿ってほしい」

「それはかまいませんが。説明をいただいても?」

「もちろんだ。まずは部屋と食事を、話は俺とエビスだけで頼む」

「わかりました」


 二人の話についていけないエリスは他のメンバーを見る。サントンは興味深げに辺りを見渡し、グラウスは下を向いたまま何も話さない。ルーは嫌なとこにきたような顔をして、フードを深くかぶり直した。アモンはその辺にいる家畜を撫でている。

 エリスは適当に動き回る面子を見て、自分だけはしっかりしていようと心に誓ったのだった。


「それではみなさんこちらの方に」


 使用人らしき人に案内されて、食堂に行き食事を摂った後、各々の部屋に案内される。アクはエビスと話があると言うので途中でいなくなった。建物自体は五階建で、部屋数は数え切れない。正面はデパートという総合的になんでも買い物ができる建物になっているらしい。

 それでいて、裏は使用人や客が泊まれる宿泊施設も兼ねているのだ。スゴイ建物だった。部屋でエリスがくつろいでいるとドアがノックされる。


 コンコン


「はい?」

「当商店の当主エビスの娘、セシリアと申します。入ってもよろしいでしょうか?」

「ちょっと待ってください。今開けますので」

「ありがとうございます。突然の来訪申し訳ありません」


 セシリアは深々と頭を下げた。


「いえこちらこそ突然お世話になってしまって」

「いえ、アク様は私達にとっては命の恩人です。こんなことは大したことではありませんよ」

「命の恩人?」

「はい。エリス様は、アク様の奥さまなのですよね?」

「えっ!まだ奥さまなのか実感はないのですが、そうなる予定です」


 どこから情報を仕入れたのかわからないエリスは戸惑いながら、セシリアの勢いに圧倒される。


「そうですか、先に言っておきます。私はアク様をお慕いしていました。告白もしたのですが、断られました」

「えっ!えっ?」

「いきなりで申し訳ありません。でもこれは宣戦布告ではないですよ。ふふふ、アク様が選んだ女性がどんな方か知りたかったのと、本当にエリス様と仲良くしたいと思ったからです。同じ人を好きになった仲と言うことで」


 エリスはセシリアの告白に戸惑うばかりだが、セシリアが気恥ずかしそうに締めくくったことで、エリスにも余裕が出てくる。


「ああ、突然で驚きました。私のことは、エリスと呼び捨てにしてください」

「では私の事も、セシリアと呼び捨てにしてください」

「わかりました。でもビックリしてしまって」

「驚かせてすいません。でもこの方がインパクトを持ってもらえると思って、私の意地悪です」


 セシリアは悪戯が成功したとエリスに笑いかける。


「まんまとやられましたわ。でも、ありがとう。そのお蔭で遠慮なく話せるわ」


 エリスもやっと落ち着いてセシリアに対して砕けた言葉で返す。


「アク様が選んだ方が、どんな方か知りたかったの、ごめんなさい」


 今度は申し訳なさそうにセシリアが頭を下げるので、エリスは慌てる。


「顔を上げて、私は気にしないから。確かに驚いたけど私の知らないアクの一面が知れることが嬉しいの」

「エリスは良い人ね。本当にごめんなさい。エリスに嫌われたかったわけじゃないから、それだけはわかってほしいの」

「わかっているわ。セシリア、私の知らないアクを教えて、私も私の知っているアクの話をするから」


 二人はアクが帰って来る夜遅くまで、たくさんアクの話をした。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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