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裏切り者になります14

 アクはグラウスからもたらされた情報を持って幹部会を開いた。メンバーはゲオルグ、ダント、サントン、ハッサン、グラウス、ボルス、ダン、アクの後ろにエリスとルーが控えている。

 ギルドマスター室に作られた応接間で、話をすることにしたので、ゲイザーとロカも参加していた。


「みんなに聞いてほしいことがある。バンガロウ王国の王シシンガーは精霊を召喚した」

「「「何っ!!!」」」


 年配組のゲオルグ、ダント、ゲイザーが声を上げる。


「意味がわかるんですか?」


 アクがゲイザーの顔を見て質問する。


「分かるも何も、バンガロウ王国が弱小のくせに王国を維持できてきたのは、何も人の力だけじゃねぇ。バンガロウ王国を守る精霊がいたからだ。アース大陸の脅威を退けだけの力を、精霊が王族を守護していたからだと言われている。前の獣人や精霊族との大戦のときも、バンガロウの王が精霊を召喚して、押し返すことができたぐらいだぞ」

「詳しいんですね」


 ゲオルグが先の大戦での精霊の働きを告げていく。


「これはあの戦いを経験した者なら大抵は知ってることだ」

「そうですか、でも今回はその精霊が相手です」

「無理かもしれないな。今までは同じ人間だと思っていたから戦えた。しかし、人外を相手にこの戦力じゃどうしようもないな」


 ダントが肩を落とし、諦めるしかないと発する。


「それでアク、策はあるのか」


 年配組と違い、直接精霊の脅威を知らないサントンが、アクに質問を投げかける。


「サントン、策なんてあるわけないだろう」


 サントンの態度に、ゲオルグが反論する。


「お頭、アクの事ですからこうやって集めたってことは、何かしら策があるってことだと思いますよ。なぁ~アク」

「ああ、策はあります」


 アクは自信満々に笑みを作り答える。


「あるのか、策が?」


 これにはダントが驚いて顔を上げる。


「あります」


 誰もが顔を見合わせ頷き合う。これまでの戦いの全てが、アクの言うとおりにやってきた。そして勝利してきたのだ。アクの言葉を今更疑う者は誰もいない。


「その前にちょっといいか?」


 アクが策を告げる前にゲオルグが立ち上がる。ダントに目配せしてボルスを見る。


「俺達は次の戦いが終わったら戦いから引退しようと思う。もちろんお前たちの手助けはいくらでもするつもりだ。だが、もう俺達の時代じゃねぇ。俺達の戦いはこの間で終わったんだ。俺達の時代の最強の男であるバルツァーをサントンが倒したことで、俺達は満足しちまった。だから次の戦いを最後にしたい。これはダントとも、ボルスとも話し合った結果だ。異論は言わないでくれよ」


 ゲオルグの発表をなんとなく予想出来ていたアクは無言で頷く。しかし、ハッサンは納得できなかったのか、立ち上がる。


「親父っ!俺はまだ一度も親父に勝ててねぇ。勝負しやがれ」

「てめぇが俺に勝てるわけねぇだろ」


 ゴツイ二人が、額をぶつけあう。暑苦しいので誰も止めないでいると、二人はそのまま外に出て行ったので放置することにした。


「それで策っていうのは?」


 ダントが何もなかったように話を戻す。

 

「最初に行っていた通り、王を暗殺します」

「それはゲオルグが許さないんじゃないのか?」

「今の王に不意打ちは効きません。だから暗殺とはいえ、戦うことを前提において仕掛けます」

「なるほど、戦闘ならゲオルグも異を唱えることはないだろな」

「はい。そこで、ここにいるシルバーウルフ解放軍は正面から王都バンガロウに攻め込んでいただきたいのです」

「正面からか!」


 アクの大胆な言葉に、ボルスが驚いた。


「はい。戦う必要はないんです。解放軍が王国に攻めてきたという状況さえ作ってくれればいいのです。それだけで、王国の民に示すことができます」

「それだけでいいのか?」

「はい。あとは俺とサントンとグラウスでやります」

「ハッサンは?」


 サントンが話に割り込んでくる。ゲオルグと出て行ったハッサンなら、今の会話で当然横槍を入れてくる。それをサントンが代わりに聞いておこうという事らしい。


「ハッサンには解放軍の指揮官として働いてもらう。個人の能力はもちろん高いが、人を束ねたときの方がハッサンは力を発揮されることが前回の戦いでわかったからな」

「了解、伝えておくよ」


 サントンはそれで質問は終わりと手を下す。


「アク、私はどうすればいいの?置いていったら承知しないから」


 後ろからエリスに詰め寄られる。


「エリスはもちろん俺と共に来てもうよ。ルーもね」

「ルーちゃんも?」

「ああ、あと一人増えると思うから俺達は6人で行動する」

「まぁ連れてってくれるならいいけど」


 なぜか納得していないエリスを放っておいて、細かいところを詰めて話し合う。ダント、ボルス、ダンにはゲオルグとハッサンの補助をしてもらう。


「あとはお前たちの働き次第だが、これで一つの戦いが終わるんだな。みんな最後の戦いを始めようぜ。いくぞ」


 ダントの掛け声で話を終えて、外に出た。メンバーが見たのはクック村の南の森が半壊してる光景だった。


「親父っそんなもんか」

「ちっくそガキが、てめぇの勝ちだ。ほらよ」


 どうやら盛大な親子喧嘩はハッサンの勝ちで終わったらしい。ゲオルグはハッサンに自分が長年使っていたバスタードソードを渡す。


「なんだよこれ、こんな汚ねぇ剣いるかよ」

「それは魔剣なんだぞ、大事に使えよ」


 そういうと何事もなかったように立ち上がったゲオルグが、立ち去って行く。


「なんだよ……まだまだ元気じゃねぇか」


 ハッサンは確かな手ごたえを感じてゲオルグを倒した。しかし、ゲオルグの方は奥の手を隠したまま負けを認めた。次の時代への手向けを息子に渡すために……

いつも読んで頂きありがとうございます。

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