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閑話 その他の勇者達7

今日から閑話を挟みます。


どうぞよろしくお願いします。

 白雪シラユキ シズクがいるのは、日本風に作られた城の中、天守閣に当たるところだった。目の前にはカブラギ皇国の殿様が座っている。


「苦しゅうない表を挙げよ」


 畳の上で頭を下げていた雫が頭を挙げる。初めてみるお殿様は可愛らしい幼女?だった。肌の色は白、真っ白なのだ。白粉でも塗っているのかと思ったが、見えている肌は手や首も含めて全て真っ白なのだ。そして目は、黒目の部分が赤く、額には小さい角が生えていた。


「そちが水の巫女かえ?」

「そういうことになっています」

「歯切れが悪いの~」

「姫様。それは巫女様に失礼です」

「我は殿様じゃ。姫ではないぞ、ジィ」

「そうでした。では殿様。巫女様に失礼なのは変わりありません」

「ふむ……そうか、巫女よ。すまなかった許せよ」


 姫様、もとい殿様は素直だった。そのやり取りに雫も緊張がほぐれた。


「私は異世界から召喚された、白雪 雫と申します。どうぞ雫とお呼びください」

「おう、シズクというのか。我は第十三代カブラギ皇国が皇帝、カブラギ アヤメじゃ。気軽に殿と呼ぶがよいぞ」


 白雪はカブラギ皇国に住んでいる人間のほとんどから悪い印象を受けていないので、心は穏やかさを保てていた。


「では殿様。どうして私は呼ばれたのでしょうか?」

「うむ。それにはカブラギ皇国の初代の話をせねばならんな」

「初代さん?」

「そうじゃ。初代カブラギ皇国皇帝は召喚者なのじゃ。名前を鏑木カブラギ 絶貴ゼツキ。水の勇者として召喚され、我ら鬼人族滅亡の危機を救い、我らが鬼人族の姫と結婚したのじゃ」


 恋話を語る彼女は本当に嬉しそうに先祖の話を語り出す。


「召喚者が皇国を?結婚?」

「そうじゃ」

「それでどうして私をここに?」

「先ほど話したであろう。水の勇者がカブラギ皇国を作ったのじゃ。我らは水の勇者に借りを返すため、水の勇者及び水の巫女が現われた際、契約により仕えることになっておる」

「仕えるって、えっ!」

「我ら鬼人族は水の巫女の命令に従う」


 殿がそういって、頭を下げた。すると周りにいた大人達も殿様に倣って全て頭を下げた。


「ちょ、ちょっと待ってください。全然状況がわかりません。何より仕えるって言われても困ります」

「どうして困るのじゃ?」

「仕えるって言われてもどうすればいいか?」

「そんなことか」

「殿はわかるんですか?」

「そんなことはわからん」


 白雪は呆気ない答えに座っていた床で体勢を崩す。


「わからないんですか?」

「わからんな。お主と会えば何かわかるかと思ったがわからん。ただ一つ言えるとすれば、我らは水の巫女の命令をできる限り叶えると誓おう」


 悪人かどうかなど関係なく、アヤメ姫は水の巫女に従うことを約束した。


「命令って……なんだか嫌です」

「嫌と言われてもの~」

「殿。お願いがあります」

「なんじゃ水の巫女の願いなら何でも聞くぞ」

「じゃあ、私と友達になってください」

「友達?友達とはなんじゃ?」

「友達とは命令に縛られない。主従の関係もない。対等な存在です」

「我と対等の存在?」

「そうです。私は殿の友達になりたい」


 白雪の眼差しに、殿はどう答えいていいのかわからないと言う感じで狼狽える。


「姫様、よいではないですか。姫様には友達がおりません。周りにおる者もワシのような老いぼればかりで、ワシは賛成致します」

「うむ……ジイがそういうなら」

「水の巫女よ。友達になろうではないか」

「はい。では殿。まずは私の事を雫とお呼びください」

「シズク?」

「はい。私も殿のことをアヤメちゃんと呼びますね」

「アヤメちゃん……そんな風に呼ばれたのは初めてじゃ」

「友達は名前で呼び合うものですから」


 白雪がニッコリと笑う。


「そういうものか?」

「はい」

「なんだか不思議なものじゃな。名前で呼ばれただけなのに、なんだか胸の辺りが温かくなってくるようじゃ」

「姫様、よう御座いましたな。初めてのお友達ですぞ」

「うむ、今宵は良き日じゃ。祝いじゃ宴をするぞ」


 その日のカブラギ城はドンチャン騒ぎになった。人族も鬼人族も共に生きて住んで働くカブラギ皇国は平和で明るい国だった。


「本当にいい国なんですね」

「そうじゃろうそうじゃろう。我が国の者は皆家族じゃ。種族の違いはあるかもしれん。じゃがそんなことは関係ないのじゃ皆家族じゃからな」


 ニコニコと楽しそうに話すアヤメに雫も笑顔で返す。この世界に来て、不安がいっぱいだった。金剛コンゴウ マモルが傍にいてくれたが、彼以外は敵ばかりだった。

 本当は違うのかもしれないが、白雪には召喚されたルールイス国の人たちが怖かった。護がそばにいてくれたらもっとよかったが。


「どうした?」


 不安そうな顔をしている雫に気付き、アヤメが顔を覗き込んでくる。


「ううん。私にも大切な人がいるの」

「家族か?」

「うん。家族になろうねって約束した人よ」

「そうか、そやつもこの世界に来ておるのか?」

「ええ」

「それならばこちらに来るかもしれんな」


 アヤメの言葉に雫はもう一度護に会えると喜んだ。


「そうなの?」

「うむ。それでこちらに来ているということは勇者なのじゃろ?なんの勇者なのじゃ?」

「土の勇者って呼ばれていました」

「何っ!土じゃと!!!」

「どうしたの?急に大きな声を出して」

「土はダメじゃ!土は我ら鬼人族を滅ぼそうとした張本人じゃ。我らは土の勇者を許せぬ」


 狼狽え狼狽するアヤメにシズクも動揺する。


「でも護は関係ないわ」

「それでもじゃ、土のゆうしゃをカブラギ国に受け入れるわけにはいかん」

「アヤメちゃん」

「すまん。でもこれだけはどうしてもじゃ」


 アヤメの言葉に、雫が困惑した顔になる。本当に申し訳なさそうな顔をしているアヤメの態度に何も言えなくなってしまった。

読んで頂きありがとうございます。


感想などいただけると嬉しいです。

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