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参謀になります2

昨日は感想をいただきました。


自分の不甲斐なさを恥じるばかりですが、内容はとてもためになるものだったのでありがたく思います。


感想もらえたりお気に入り登録していただいて本当にありがとうございます。

拙い文章ですが頑張って書きますのでこれからもよろしくお願いします。

 アクはグラウスからもたらされた情報をすぐにゲオルグに報告した。


「三日か……早ぇな」

「ですが、見越した通り百人程度です」

「そうだな。王国の奴らは、俺達が二十人でクック村を占拠したと思っているんだろうな」


 アクの作戦は王国の動きを見越していた。


「もしかしたらもう少し多いと思っているかもしれませんが、百人いれば倒せると思っているのでしょうね」

「そういうことか」


 ゲオルグは王国を馬鹿にするように嘲けり笑った。


「お頭、今回百人の兵士には手痛い仕打ちを受けてもらう必要があります」

「ほう、また何か考えがあるのか?」

「はい。ですが、その前にお頭にはシルバーウルフ盗賊団のお頭の任から退いていただきたい」

「何っ?お前、どういう意味だ。それは?」


 ゲオルグが殺気を込めてアクを睨みつける。


「ちゃんと意味があります。説明します」


 ゲオルグが、アクの説明を聞いてニンマリと人の悪い笑みを作る。


「そういうことなら仕方ねぇな。て言うか俺にしかできねぇか」


 ゲオルグはアクの提案を聞いて、満更でもなさそうな顔で喜んでいた。


「理解していただきありがとうございます」

「堅いことはいい。それで?お前は次期頭ジキカシラを誰にするつもりなんだ?」

「サントンにさせたいと思います。補佐にハッサンとグラウスを付けます」

「俺らの子供どもは補佐か?」


 ゲオルグは人の悪い顔で、アクを試すように見つめる。


「いつかハッサンか、グラウスをお頭にしてもいいですが、今ではありません」

「ハッキリ言いやがるな。だが、頭になるなら力を示さなきゃならねぇぜ」

「それもわかっています」

「ほう~どうわかってるって言うんだ?」

「そのために盗賊団のメンバーを集めました」

「集めたって、カシム村やソルト村のやつらもか?」


 ゲオルグはアクの手回しの良さに驚いた顔をする。


「そうです」

「そんなことしたら村の奴らが反抗するんじゃないのか?」

「そうかもしれません。ですので村の若い衆、特に男手を一緒に連れてきてもらうことにしました」

「お前は俺の許可をもらうのは通過点なのか?」

「お頭なら絶対に許可をいただけると思っておりましたので」

「つくづくお前が記憶喪失なのか疑わしくなってきたな」


 ゲオルグは呆れたと言わんばかりに両手を広げてヤレヤレという仕草をする。


「さっそくですが、明日には全員集まるのでクック村の広場で集会をお願いします」

「なんでも早ぇな。ダントが反対したらどうするつもりだ?」

「ダント副団長には、もう話して了承をいただいています」

「そうかよ。本当にもう、お前が俺の母ちゃんを殺してても不思議じゃねぇよ」


 アクの根回しの良さにゲオルグは舌を巻いた。


「お褒めの言葉として聞いておきますが。決してそんなことはしていません」

「冗談だ。とにかく明日俺が何を話したら良いかも決まってるんだろ?打ち合わせは酒を飲みながらするぞ」

「わかりました」


 ゲオルグは無類の酒好きで、しかも物凄く強い。酔いかたも陽気に歌を歌うぐらいで、人に迷惑をかけることもないので問題ない、前のクック村を占拠する時の演説も酔いながら説明したのに覚えていたので、酔っている方が物覚えがいいのではないだろうかと思う。


「俺は弱いん、であんまり飲ませないでくださいよ」

「わかってるよ。お前は横でチビチビ飲みながら説明してりゃいいのよ」


 前回は説明しながら意識を失い、固い床で寝たので体中が痛くなった記憶がある。しかし、結局飲み始めるとゲオルグは朝まで飲み続けた。アクが床で寝る羽目になったのは言うまでもない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌日、時間が正午に差しかかろうとする頃、クック村には男達が二百弱ほど集まっていた。


 元々クック村にいたシルバーウルフ盗賊団が二十名、他の村から来た盗賊団員が二十二名、クック村の男衆五十人、カシス村の男衆三十五人、ソルト村の男衆四十二人と総勢百六十九名が広場に集まっていた。

 ゲオルグ、ハッサン、サントン、ダント、アクが集合した男達の前にお立ち、全員に姿が見えるように上に乗っている。


「よく集まってくれた。俺はシルバーウルフ盗賊団、団長のゲオルグだ」


 カシス村の住人と、クック村の住人は共にゲオルグの手によって占拠されたため顔を知っていた。ソルト村の人間はダント指揮の下で占拠されたため、ゲオルグのこと知らない者もおり、改めての自己紹介をしたのだ。


「そして右にいるのが、副団長であるダントだ」


 ゲオルグがダント、サントン、ハッサン、グラウス、アクの順番で紹介していく。サントン、ハッサン、グラウスは若頭、アクは参謀として紹介された。


「お前達に集まってもらったのには訳がある。今より二日後に、王国から百人の兵士がこのクック村に押し寄せてくる」


 ゲオルグの言葉を聞いて、村人達が騒ぎ出す。


「王国が攻めてくる?本当の話か?」


 一人の村人が同じ村の者に話を振り、それがどこかしらから聞こえてくる。自分達に戦えと言うのかと、村の男たちの中に戸惑いから怒気が含まれ始めたところで、ゲオルグが話の続きをする。


「な~に、お前達に戦ってくれと言うわけではないさ。ただし、手伝ってほしいことがある」


 戦わなくていいと言う言葉に、村人達は安堵の息を吐く。しかし、ゲオルグの言葉にもう一つの言葉を聞いて体を強張らせる。


「あの~質問よろしいでしょうか?」


 男達の中で先頭に立つ、クック村のダンと言う青年が意見を求めてきた。


「なんだ?言ってみろ」

「戦わないで手伝うってどうすればいいんですか?」

「それをこれから話したいと思う」


 その言葉を聞いてダンも周りも黙る。


「だが、その前に重要なことがもう一つある」


 ゲオルグが話を勿体ぶっているのかと、村人が押し黙り村全体が静かになる。


「俺は今日をもってシルバーウルフ盗賊団のお頭をやめようと思う」

「「「えええぇぇぇええーーーーー!!!!」」」


 声は村人からではなく、元々一緒に戦ってきた盗賊達から上がったものだ。村人たちは呆然としている。


「そこで俺の後釜としてサントンを次の頭目に推薦する」


 ゲオルグが他の者の意見を求めずに、進めようとするので盗賊団の男が声を張り上げる。


「ちょっと待てよ。あんたが盗賊団をやめたら俺達はどうなるんだよ」


 その男はゲオルグよりは若いが、サントンやアクから見ればオッサンに分類される。


「俺はあんたについてきたんだ。あんたが止めるならこの戦いだって意味がないだろう?」


 男の言葉に周りの盗賊達も頷きあう。


「意味がある戦いなんて最初からねぇよ。ただ食うため、生活するために戦っているだけだ。俺も、お前も、違うのか?」

「それはまぁ~そうだが、だけどやっぱり納得できねぇ」

「お前の戦いは俺が止めたら終わるのか?お前の人生は俺が死んだら終わりか?」

「いや、ちげぇけど」


 男もゲオルグの言葉に黙り込む。先ほど頷いていた者も、今度は考えるように腕を組む。


「難しいことを言ってんじゃねぇ。俺の後はサントンが継ぐ。お前たちはサントンを支えてやりゃいいのよ」

「あんたはどうするだ?」

「王国と戦うんだ。旗がいるだろ?俺はその旗になるのよ」


 ゲオルグの言葉に意味を理解できたものはいなかっただろう。事前に説明されるまで、ゲオルグやサントンですらわけがわからなかったのだから、必要だと理解してしまえばなれるのは自分しかいないということもゲオルグは理解してくれた。

読んで頂きありがとうございます。

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