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邪神としての日常

この話を投稿していいのか、かなり迷いました。

本編は完結しているのに、必要なのかという葛藤からです。ただ、ある方の感想に最後がアクで終わらないのは残念だと言っていただけたので、時間が経ちましたが投稿することを決意しました。


本当に最後になります。

 阿久井 重ことアクが帰還したのはバンガロウ王国の王城だった。少しでも心地よく眠らせてやりたいというサントンの配慮で王城内に一室を設けられたのだ。


「しかし、俺が神様になるなんてな」


 アクは自身が邪神 アクとなったことを全世界のお偉いさんに伝えた。隠すほうが、変な感じがしたのもあるが、何をしてきたと聞かれたときに嘘を吐くのが面倒だったのだ。


「また言ってる。マスターもそろそろ認めたらいいのに」


 アクの横でアクを支える女性の一人であるルーが溜息を吐く。アクは神になったところで、仕事を変えなかった。今でもサントンの宰相として働いているのだ。

 

 ただし、変わったことも多くある。島国の集合体であった。ベンチャイス連邦と呼ばれていたモノがなくなり、連邦と呼ばれていた小さな国々はサントンの前に膝を折り、現在ではアース王国として名前を改めた。サントンはアース王国の初代国王になった。

 これにより、初代アース王としてサントンは南の覇者となったのだ。現在の領土はベンチャイス連邦だった島国全てと、アース大陸にまで及ぶため、暗黒大陸を治める神代 火鉢よりも領土的には上となった。


「アース王国宰相でいいじゃないですか」


 ルーの言葉にアクは笑いを禁じ得ない。現在元バンガロウ王国だった場所がアクの根城となっている。サントンはソクラテスの街をアース王城として新たに城を作り、リバーサイド女王を妃として迎えいれた。

 元々結婚していたロカを第一王妃、リバーサイド女王を第二王妃として迎え入れることで国の強化を図ったのだ。


「まぁ神様だからって何もかわらないしな」


 アクもまた一国一城の主となったのだ。宰相と言う肩書はついてくるが、現在アクは元バンガロウ城をフェアリー城と改め、人と獣人が手を取り合って暮らしていける環境作りをしているのだ。 

 

「そうですよ。エリスも、ヨナも、サラも、みんな頑張っています。だから文句ばっかり言ってないでそろそろ仕事をしていください」


 話を逸らそうと頑張っていたが、ルーが山と積んだ書類を指さす、新しいことをすれば問題はいくらでも出てくるのだ。一つ一つ解決していても全く追いつかない。


「なぁ、俺を殺す気?」


「マスターは一度死んだから大丈夫ですよ。それにホラ、マスターって神様ですし、殺しても死なないでしょ?」


 銀髪の狼耳獣人にニッコリと笑われ、アクは撃沈する。神様ってもっと威厳のあるものじゃないのかよ。心の中で突っ込んでも、書類からは解放されることはなかいが嘆きたくなる。


「宰相!緊急事態じゃ」


 キララがアクの執務室に飛び込んでくる。ちなみにキララはサントンについて行かず、アクの下で現フェアリー城の内務大臣を務めている。


「どうしたキララ?そんなに慌てて」

「何をのんきにしておるか!今日はエリス殿の誕生日じゃぞ」

「あっ、そうだったか?」


 アクがルーの顔を見る。ルーは手帳代わりにしているスケジュール表を見て、顔を青ざめる。


「申し訳ありません。確かに今日はエリス様の誕生日です」 

 

 スケジュールやイベント管理はルーの仕事である。ルーにしては珍しい凡ミスに一同慌てふためく。エリスは神の妻として周囲からあがめられるようになっているが、今でもみんなのお母さんというほうが似合っている気がする。


「とりあえず集めるだけ集めて盛大に祝うか!」

「そうするしかないのぉ~」

「急ぎます」


 ルーは獣人の俊敏性をこれでもかと発揮して、執務室を後にした。


「宰相よ。お主も忘れておったのか?」

「はて?どうなろうな」

「相変わらず食えぬ人じゃ。うん?もう人ではないか?」

「どっちでもいいさ。それよりもキララもいかないといけないんじゃないか?」

「そうじゃった。とりあえず盛大に祝って喜んでもらおう」


 アクもマントを纏ってエリスの下へ向かう。まだまだルーも、キララも準備に時間がかかるだろう。その間にエリスとの二人きりの時間を満喫しよう。


「エリスいるかい?ありゃ?」


 エリスの下を訪れたアクが見たのは、エリスに謁見を求める長蛇の列だった。ある意味バンガロウ王国で愛されているのは嬉しいが、ここまで崇拝されていいものなのだろうか。神はアクなのに……


「あなた!よく来てくれました。皆さんがたくさん祝って下って」


 アクの存在に気付いた列がサーと横に分かれていく。そんな光景に苦笑いを浮かべていると、エリスは嬉しそうに笑っていた。それを見るだけで他のことなどどうでもいいかと思えてくるのだから不思議なものだ。


「そうか、よかったね」

「はい。それで?あなたは祝ってくださらないのですか?」

「いいや。エリスおめでとう。エリスが生まれてきてくれて本当に嬉しいよ」


 左右に分かれた列の真ん中を歩き、エリスの前で膝をつく。エリスの手を取り甲にキスをする。それだけで歓声が上がるのだからこの国は陽気でいい国だ。


「プレゼントがあるんだ」

「まぁ~何かしら?」


 アクはエリスの手を取り、中にはに誘導する。アクは夜になってからと思っていが、昼でもきれいなことに変わりはない。控えさせていた者に合図を送る。すると七色に光る花が空に舞う。


「綺麗……」


 エリスはアクが用意した花火に見惚れる。それは白の外にある城下町でも見ることができて、エリスの誕生を国全体で祝うものだった。


「気に入ってくれた?」

「ええ。あなた……ありがとう。帰ってきてくれて本当に嬉しいです」


 エリスは頭をアクの胸に預け、エリスに祝いに来た者たちもアクが用意した花火に見惚れる。夜になりキララとルーが用意した盛大なパーティが開かれた。

 それは本当に国を巻き込みほど盛大なお祭りで、エリス生誕祭として毎年行われることになる。


 アクは邪神として降臨した。しかし、邪神といっても悪事を働くわけではなく。魔族や獣人など、人ならざる者たちの神として未来永劫人々の守り神となった。

 人として生きている教会がアクを邪神として認定した。しかし、アクはそれを異に唱えることはなかった。

 神とは人に崇められて初めて価値があるのだ。邪神であれ、普通の神であれ認めれればなんでもいい。アクの言葉にサントン王は盛大に笑った。そのため教会を壊滅させようとしたサントン王を止めることができた。

  

 阿久井 重ことアクは邪神 悪として適当に人生を楽しむことにした。 


いつも読んで頂きありがとうございます。


これまで感想、誤字、脱字報告頂きありがとうございました。まだまだ修正したいところはあるのですが、今の連載に力を入れたいので、いずれ時間ができた時に取り掛かりたいと思います。


最後まで読んで頂きありがとうございます。次回作も読んで頂ければ嬉しく思います。

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