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その後の勇者達 Ⅲ

これにて、その他の勇者達のその後を終わります。


さらに主人公それにまつわる人々のその後を書きたいと考えています。

 ルールイス王国では勇者凱旋のパレードが開かれていた。大魔王 アクを倒した立役者であり、真の勇者 天野アマノ 光賀コウガを歓迎するために国を挙げてのお祭り騒ぎに発展していたのだ。


「これは……」


 騒ぎを見せられたコウガは、戸惑いしか浮かんでこない。自分は大したことはしていないのだ。砂丘に踊らされ、アクに手玉に取られ、火鉢や金剛に軽くあしらわれただけのだ。修行をしたおかげで、大抵の相手に負けることはないだろう。だが、コウガを上まわる強者は山のようにいるのだ。十八人の精鋭たちの半分は、コウガを圧倒しうる力を持っていた。


「俺にこんなことしてもらう資格なんてないよ」


 オープンカーのように天井を取り払われた馬車に乗せられて、フフリアと共に凱旋パレードをさせれれているコウガは肩を落として元気がなかった。


「そんなことはありませんわ。コウガ様は立派に役目を果たしました。大魔王アクに止めを刺したのですから。私も船の上からしっかりと拝見させていただきました」


 そうなのだ。アク達の会話を知らない船に乗っていた者達は、英雄たちが大魔王を囲い、コウガが止めを刺したようにみえていたのだ。

 そのため王族が勝手に凱旋パレードを開いたのではなく、民衆が望んでパレードを開いてくれているのだ。


「それに真実などどうでもいいのだと思いますよ。魔王の脅威が、この世界から無くなった。それだけで祝う価値があると思います」


 コウガの横で手を振り続けるフフリアは、アクが目覚めたことを知っている。だが、以前のように大魔王として猛威を振るうことがないということも知っているので、コウガの功績に間違いないといっているのだ。


「今は民のために手を振ってくださいな」


 フフリアの言葉で多少ではあるが心に余裕ができたため、コウガも顔を上げて民衆に向かって手を振る。城に着くまで続けられたパレードは、城に着いてからも続けられた。民衆がコウガの話を聞こうと城の外に集まっているのだ。

 彼らが期待しているのは英雄の帰還と同時に、この国を治めてくれるかどうかということだった。

彼等も知っているのだ。コウガとフフリアが愛し合っていることを、二人の話は劇になるほど有名になっており、別れ別れになった二人が、再度巡り会い共に魔王を倒しにいく話として恋愛劇から冒険物まで作られているのだ。


 王だけが立つことを許されている場所にコウガは立とうとしていた。そこからは今か今かとコウガの話を聞きにきた民衆が集まっていた。


「さぁ、コウガ様。ここから先はコウガ様ご自身の言葉で民に力を与えてあげてください」


 フフリアに背中を押されて、外へと足を踏み出す。バルコニーでは民が一望でき、民もまた新たな王の姿に歓喜していた。


「皆さん。長く辛い戦いは終わりました。大魔王は潰え、世界に平和が訪れたのです」


 コウガの声に民衆から歓声が上がる。ずっと考えていた。コウガは自分に王になる資格があるのかと、自分に勇者と呼ばれる資格があるのか、疑問はいくらでも浮かんでくる。その度にアクの言った言葉が頭の中に浮かんでくる。


『お前が勇者だ』


 あれはコウガを励ますために言った言葉ではないだろう。ではなぜアクはあんなことを言ったのだろうか、それはアクもまた金剛のようにコウガを認めてくれていたからではないだろうか、好きという言葉の対義語は嫌いではない。無関心だとコウガは思っている。

 ならばアクがコウガのことを嫌いだと言ったのはお前を認めているということではなかったのだろうか。


「僕は多くの挫折を経験しました。多くの悲しみを見てきました。多くの怒りを感じてきました。それは僕を迷わせ、辛い道を歩むことになりました。その中で足掻き、もがいて一人でなんとかしようとしていました。でも、その考えは間違いだらけで、僕は一人ではないことを思い知らされました」


 コウガは突然バルコニーの中に入り、フフリアの手を引き寄せる。


「ここにずっと僕を愛し支えてくれた人がいます。そして今、僕の目の前で僕を支えようとしてくれる人達がいます。皆さん、僕は一人では何もできません。魔王を倒すことも国を作ることもできません。ですが彼女がいて、皆さんがいて、僕を支えてくれるのなら、僕はこの国を支えていく存在になりたいと思います」


 コウガの演説に戸惑っていて、沈黙していた民衆も、コウガが頭を下げた瞬間、歓声へと変わっていた。情けなくも優しい王が誕生した瞬間だった。


 コウガ・アマノ・ルールイスとして彼は後のルールイス王国に子孫を残していく。結して有能な王ではなかったが、凡王として彼は最高の働きをした。

 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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