その後の勇者達 Ⅰ
本編は完結しましたが、後日談を少しずつ書いていきます。
今日から三日間でその他の勇者達の話を書いていきすのでよろしくお願いします。
大魔王アクとの戦闘を終えて、神代 火鉢は暗黒大陸へ戻ってきていた。砂丘 修二が天辰であろうと火鉢には関係なかった。いなくなってしまったものは者は帰って来ない。アクによって砂丘は消滅してしまった事実に変わりはないのだ。
「ここもなんだか広く感じるな」
火鉢が砂丘の城である大魔王城に戻ってくることを決意したとき、安城 風香とアンジェリカの二人は同行してこなかった。
異世界に召喚されてから常に供に行動してきた。風香との別れは火鉢に若干の寂しさを与えた。風香と火鉢でやりたいことが違ってしまったのなら仕方がないと割り切ることができた。
「そうですね。あの方が暖かみを与えてくれていたのでしょうね」
エルファルトと、オクトーは火鉢の従者として付き従ってくれている。オクトーは相変わらず、あまり話をしないが、エルファルトと共に火鉢のことを心配しているのは伝わってくる。
「そうなのかもしれないな。そんなことよりも、今日からここは私の城だ。暗黒大陸を改めて平定する」
火鉢がやろうと考えたのは、砂丘という絶対者がいなくなった暗黒大陸の統治だった。二大魔王と言われていたサキュウと暗黒龍がいなくなり、残されたのは六人の魔王だった。
火鉢と風香の旅の途中で、二体は配下となり、二体の魔王は倒すことができた。そのため残された四人の魔王を倒すか、配下とすることを考えている。
全ての魔王を倒して平定が成った暁には、大魔王城と同じように荒野となってしまった暗黒大陸に草木を生やしたい。砂丘が住んでいた場所を綺麗にしてやりたいと考えたのだ。
残った四人の魔王は新たに表れた火の勇者 神代 火鉢に悉く膝を突き、従う者、死を選ぶものと別れたが火鉢は暗黒大陸を平定した。
「どうして、どうして貴様のような人間が。我々魔族を襲うのだ」
最後に残された魔戦機と呼ばれる機械の魔王が、火鉢に質問を投げかけた。
「別に襲っているわけではない。貴様らが私に従えば私も何もしなかった」
この言葉に従うように魔戦機は膝を折り火鉢に屈したという。暗黒大陸全土に火鉢が新たな大魔王になったことが宣言され、魔族やモンスターと呼ばれる者達は火鉢の命令の下、礼儀や環境整備に駆り出されていく。
暗黒大陸が、暗黒龍と勇者の戦いによって滅びた土地であったとしても、火鉢には関係なかった。
何年も何年もかけて土を蘇らせ、草木を植えて、暗黒大陸をレギンバラ王国が栄えていた時代まで戻すことに成功してみせた。
「どうだ旦那様。私はあなたが成し遂げなかったことを成したぞ」
火鉢は最後まで砂丘を愛していたのだろう。砂丘に勝つ方法を考え、砂丘がなしていないことを実現させようとしていた。それは途方もない夢であり、砂漠を花で埋める誰もが願うが叶えられないと言われたことだった。
彼女は生涯を誰とも結婚することもなく、子供を作ることもなかった。彼女にとって旦那は砂丘であり、それ以外には有り得なかったのだ。
嘗ての恐怖の対象であった暗黒大陸はなくなり、花の都 火鉢として栄えていく。
神代 火鉢は、鑑定に出た。職業 支配者、王の資質に恥じることのない王であったと語り継がれることになる。
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セントセルス神興国 教皇の間に一人の女性が入ってきた。聖女を失い、教皇が実権を握るようになったこの大聖堂では、連日信者たちが聖女を求める声で溢れていた。
「あなたがどうしてここに?」
教皇ケインツエルの前には、風の勇者 安城風香が立っていた。
「私も私のできることをしようおもて」
風香はいつもと変わらず気負いのない雰囲気で、教皇に話しかける。セントセルス神興国は良くも悪くも世界の中心である。
レギンバラに住まう者の第一宗派であり、セントセルス神興国の教えがレギンバラ全土に広められているとも言える。
「あなたにできること?」
「そうや。聖女になろうと思ってきました」
「えっ?」
風香の言葉に驚きよりも教皇は呆れてしまう。
「いやいや。そんなことできるわけないじゃないですか。聖女とは神に選ばれた者ですよ」
「だからいいんじゃないですか。私、神様の知り合いいますから」
「はぁ~まぁ確かに……好きにしてみてください。自分で聖女だと宣言しても誰も信じないと思いますが」
教皇は風香の物言いに呆れてしまい、勝手にすればいいと判断した。だが、教皇の考えが間違いだったとすぐに知ることになる。
風香は教皇の許可を得られたことで、テリーに連絡をとり、セントセルス全土に聞こえるように風魔法を使い宣言した。
「私は異世界より風の勇者として召喚された安城 風香です。此度の戦では多くの悲しみを生みました。何よりも前聖女であるクリシュナ様を失ったのは大きな損失だと言えるでしょう。ですが皆様にお伝えしたいことがあります。私もまた聖女なのです。私は新たな聖女として神様より信託を受けました。神に依れば世界は平和を求めている。今までのような争いに彩られた世界ではなく、平和を維持するために努力をしていかなければならない。それを聞いた聖女である私は、ここに宣言します。世界平和実現します。人も、獣人も、竜人も、亜人も、精霊も全ての者が共存できる世界を創りあげると」
風香の声はセントセルス全土に響き渡り、信者たちは一目風香を見ようと殺到した。風香は精霊契約を結んだツ~ナを召還する。ツ~ナの見た目は天使なので、神の使いとして神々しく、風香の言葉を印象付けるの十分な存在となった。
教皇ケインツエルが手立てを企てるよりも早く、風香が聖女として認知されていく方が早かった。レギンバラ大陸に住まう者だけでなく、アース大陸、暗黒大陸に住む者も風香を聖女と認める書状が届いたことで、三大陸に認められた聖女として風香の力は増していった。
教皇ケインツエルの前に風香が現れたときには、すでにお膳立てが済まされた後だったのだ。
風香は教皇ケインツエルの力を削いだ後、セントセルス神興国の教えを改定していった。人類は皆兄弟であり、人も、獣人も、亜人も、龍人も、魔人も等しく平等であると教えを広めていった。
最初こそ反発が大きくなかなか広まらなかったが、暗黒大陸を火鉢が占領し、コウガが王位に就き、サントンが支持したことで、徐々にその教えは広まって行くことになる。
暗黒大陸の大魔王とレギンバラ大陸の聖女はいつまでも仲の良い友であったことは、時代の教科書に記されることになる。
いつも読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字修正は少しずつではありますが、継続して行っております。
読み難いと思いますがどうぞよろしくお願いします




