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邪神になりました26

 金剛と火鉢がコウガの前を交差していく。

コウガなど眼中に無いように二人は何度も激しくぶつかり合い、目を閉じたコウガはただじっとその戦いが終幕を迎えることを待った。


「面白いじゃないか不良君」

「誰が不良君だ」

「君は召喚されたときからそういう雰囲気を出していたからな、違ったかな」

「昔の話だ」


 金剛は白雪がいたことで抑えていた殺気を解き放った。

本気で火鉢を殺すため、全力の戦闘モードに入った。


「なんだ、本当に不良君なのかい。聡明そうに見えるが内心ナイーブなんだな」

「お前みたいに図太くはねぇよ」


 二人は会話をしながら、常人とは思えない死闘を繰り広げている。

火鉢が火剣や加速を駆使して金剛を翻弄すれば、金剛は全身をコーティングしていた鎧を盾に変えて粒子の盾を作り出す。

 速度で押してくる火鉢と絶対防御に徹する金剛の戦いは、矛と盾のようにぶつかり合う度に火花を散らしてはいるが決着がつかない。

 

「おいおい、ただ速いだけじゃ俺の防御は崩せないぜ」

「確かにえらく固い護りだね。そういう君も私を倒せる手立てがないように感じるが」


 火鉢はブーストや攻撃威力アップなど自身の戦い方を駆使して金剛に攻撃を仕掛けていたが、決め手に欠けていた。

 陽炎と呼ばれる姿を消したり、自身の攻撃を隠すこともしているが、金剛が纏っている粒子はその全てに反応を返してくる。


「どうなっているんだろうね。君の盾は」

「教えてやらねぇよ。だがな、もうすぐ詰みだ」


 金剛は火鉢を挑発するように、親指を立てて自身の首を斬り親指を下に向ける。


「本当に不良君だな。浅はかとしか思えない」

「そんな奴に負けんだよお前は」


 先程まで火鉢の攻撃に付いて来れていなかった金剛が、いきなり火鉢の目の前に移動してくる。


「なっ!」

 

 火鉢も焦ることなく対処するが、金剛のスピードが桁外れに跳ね上がった。


「何をした?」

「さぁな。ネタを教えるバカはいないだろ」


 会話が続いているが、先程までの火鉢優勢ではなく金剛に余裕がある会話に変わっていた。


「まさか不良君がここまでできるとはね。計算違いもいいところだ」

「どんな計算をしていたか知らねぇけどな。雫を傷付けたことはキッチリ落とし前つけてもらうぞ」


 金剛が二本の剣を出現させる。

只の長剣だが、金剛特製の材質でできているため、普通の武器では歯が立たない。

対する火鉢も金剛の考えを読み取り、レイピアに魔力を纏わせる。

長くは持たないが、それでも何もしないよりはマシだろう。


「終わらせるぜ」

「やれるものならやってみろ」


 金剛が空を翔ける。

火鉢は金剛の高速移動を正面から受け止め剣でいなしていく。


「どうしたさっきみたいに高速で逃げないのか。」

「必要なかろう。今からすることは近くの方が威力がある」

「はっ?」


 金剛が剣を振り上げた瞬間、火鉢はレイピアを捨てる。

いきなり武器を捨てるという行為に、金剛の視線がレイピアに向いてしまう。


「勝つのは私だ」


 金剛の胸に添えられた火鉢の掌が輝くと同時に金剛の胸に衝撃が奔る。

金剛は咄嗟に左腕を挟み込んで、衝撃を緩和しようとしたが甘かった。

意識が飛ぶほどの衝撃が体を過ぎ去り、痛みを発する場所に目を向ける。

左腕は肘から先が無くなっていた。


「さすがと言うべきか、だがその状態の君に負ける気はしないな」


 火鉢は手放したレイピアを拾い直し、金剛を見つめる。


「同じ勇者のよしみだ。楽にしてやろう」


 傷みによって今にも意識を失いそうな金剛は、火鉢が何か仕掛けてくるのを理解している。


「魔に落ちた奴を置いていけるかよ」

「やせ我慢はよしたまえ」

 

 火鉢が抜かり無く金剛を討つため、距離を取って大火球を作り出す。


「一瞬だけ熱く感じるが、すぐに何も感じなくなる」


 火鉢の手から放たれた太陽のような炎の塊を金剛はギリギリまで引き寄せた。


「八咫の鏡」


 火鉢に接近戦で必殺があるように、金剛にはどんな攻撃に対しても必殺の技があった。

嘗てのコウガ戦で生まれ、技として完成した。


 全てを跳ね返す魔法『八咫の鏡』


 金剛のカウンターに火鉢は対処が遅れる。

瀕死の人間がまさか、自身が放った攻撃を返せるなど誰が想像できようか。

 火鉢が大火球を相殺するように魔法を放った隙を金剛は見逃さなかった。

 残った右手で鋼の剣を作りだし、上空高くから火鉢を貫こうと剣をはしらせる。

火鉢も身を躱すが、金剛の剣は確実に火鉢を切り裂いた。


「ははっはは、これだから戦闘は面白い。まさか君に負けるとは思わなかったぞ不良君」

「最後までうぜぇやつだ」


 金剛が火鉢を抱きとめる。

既に火鉢は意識を失っているが、命を失うにはもう少し時間がかかる。

だが金剛の下に二人分の力が移動してきたのを金剛自身が感じ取っていた。


「おい、おぼっちゃん」


 右腕で火鉢を抱いた金剛がコウガに話しかける。


「・・・・」


 コウガは瞑っていた目を開き、金剛を見る。

その腕に抱かれた火鉢を見て、戦いが終わったことを理解した。

 次は自分の番なのだと覚悟を決めたのだ。


「好きにすればいい。俺の命で世界が救えるなら」


 コウガも金剛の事を認めていた。

金剛という男は、白雪 雫のために頑張る男だ。

それは筋が通っていて、間違えることがない。

 火鉢との会話でも、アクと同じような道を選ぼうとした火鉢を止めているようだった。

この世界の命運を金剛に託してもいいとコウガは思ったのだ。


「お前バカか、なんで俺が世界とか救うんだよ。俺はこいつが雫を傷付けたから仕返しをしただけだ。こんな力いらねぇよ」


 金剛はそういうと、コウガに近付き肘から先の無い左腕を持ち上げる。


「なんだ?」

 「いいからお前も手を出せよ」


 コウガは金剛に言われるがままに左腕を出す。


「俺は疲れたから寝る。後は頼むわ。修二さんもそろそろヤベーみたいだからさ、助けてやってくれ」


 金剛がそういうと、肘から先が無い左腕からコウガの差し出した掌に力を伝える。


「俺の全部もお前にくれてやる。だから頼むな。それにな、この世界の女を嫁さんにするならこの世界ぐらい救ってみせろよ。俺はお前を認めてるぞ」


 金剛がコウガに見せたことないような笑顔で、コウガに話しかけていた。

コウガは金剛という男を見誤っていた。

 もっと金剛と話をすればよかったとコウガは思えた。


「お前も男なら好きな女のために気合い入れろよ。勇者様」


 金剛は言いたいことだけいうと、火鉢を抱きしめたまま落下していく。


 五人の勇者の力はコウガに集められた・・・・

 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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