邪神になりました22
遅くなってしまいすいません。
祝200話です\(◎o◎)/!
五色に光る勇者達とアクの間にサキュウが立ちはだかる。
もしも犠牲に成る者がいるとするならば、自分が倒されてからだとサキュウは覚悟を決めていた。
「まずはお前からにしよう」
サキュウの覚悟を嘲笑うかのように、アクが青色に輝く勇者の前に突然現れた。
その速さについていけた者はいないが、襲われる相手を思って本能で反応した者がいた。
「雫に手を出してんじゃねぇ」
金剛 護はサキュウの次に戦場を体験してきた男である。
そのためアクの存在に敏感に反応することができた。
金剛は自身の腕に纏わせた鋼の腕でアクを殴りつける。
アクは金剛の攻撃に意表をつかれたが、片手で金剛の攻撃を受け止めた。
「雫は俺が護る」
片手を受け止められようと金剛は止まらない。
右手を受け止められたなら、左手で攻撃すればいい。
それも防がれたなら足で、足がダメなら魔法を使う、できることは何でもやる。
金剛の攻撃はアクに届いてはいないが、周りに準備をする時間を与えるのには十分だった。
「聖剣エクス」
「火剣日陰」
「ヒーナ」
光の剣、火の剣、風の薙刀の刃がアクに振り下ろされる。
背後左右から振るわれる刃にアクは動じることなく、人差し指を動かす。
それだけでアクを包み込むように黒い壁ができあがる。
黒い壁は三人の攻撃を弾き返し、正面から攻撃している金剛の腕を破壊する。
「くっ」
「邪魔をするな」
「いいや、邪魔させてもらう」
四人の勇者が弾き飛ばされると、サキュウが魔剣を携え黒い壁を切り開く。
さらにいつの間にやってきたのか、鬼人の三人衆が白雪を護るように構えていた。
「お前の動きは高速で動いているわけではなく、瞬間移動だな。ならその動きを予測すればついていける。力にも慣れてきた。これから反撃させてもらう」
サキュウは自身の力を最大にして、常に感覚を研ぎ澄ませた。
限界に達した感覚が、サキュウの覚悟と相まってアクに一矢報いる力を生み出した。
サキュウの宣言を聞いていないかのようにアクがゆらりと消える。
次に現れたのは白雪の前だったが、サキュウの剣がアクを貫こうとしていた。
「言っただろ、予測すればたいしたことはない」
アクは改めてサキュウを見た。
そしてサキュウに向けて指を鳴らし、サキュウを包み込むように黒い壁が出現する。
黒い壁は一枚で斬られることも考慮し何重にも厚くしておく。
「邪魔をするな」
アクはサキュウを片付け、白雪の方に向きを変える。
白雪は両手をアクに向け、魔法を放った。
「氷結」
白雪の手から氷の花が花開く。
アクを包み込むように襲い掛かり、玄夢と紫苑がシノビの極意で氷の龍を出現させる。
三方向からアクを氷漬けにしようとするが、アクが消える。
サキュウしか追えないアクの動きを絶貴が予想する。
絶貴は三頭の龍を出現させ白雪を包み込む。
あくまでアクの狙いは白雪だろうという予想だった。
だが、絶貴は判断を誤った。
アクの腕が玄夢の胸から生えていた。
「ぐはっ」
心臓を抜き放たれた玄夢の顔から血の気が失せていく。
腕を引き抜き玄夢を放り投げる。
「うむ、五感が全て戻ってきたか」
「貴様!!!!」
紫苑が落ちる玄夢に視線も向けずにアクに突っ込む。
紫苑はシノビの極意を肉体強化に費やした。
その速度はサキュウやコウガを超える。
高速で放たれる紫苑の攻撃はアクを正確に捉える。
しかし、いくら速くても紫苑の攻撃力ではアクを傷付けることができない。
サキュウは紫苑の動きを読んでサポートするが、如何せん威力が足りない。
アクにダメージを与えられるほどの攻撃をできるのは、自分とコウガぐらいだろうとサキュウは考えていた。
どうすればそれだけの威力ある攻撃をアクに与えられるか・・・・
「このままで大丈夫なのか」
玄夢を地面に下ろした絶貴が戻ってきて、サキュウに語りかける。
「魔王に効果がある攻撃ができるのは光の勇者と俺だけだろう」
「そうか、ならば隙を作ろう」
「できるのか」
「まかされよう」
青鬼の絶貴は紫苑の動きを見て、アクの動きを予測する。
それを踏まえて紫苑の動きを止める。
「絶貴様、邪魔をしないでください」
「貴殿では時間を稼げても決定的なダメージは与えられん。今は雫様の命を護ることを最優先にするんだ」
白雪を護るように指示を出し、絶貴がアクの前に出る。
絶貴はシノビの極意を極めた者だ、地面ではないが、両手を地面につけるような構えを取る。
サキュウが教えた構えは世代を超えて受け継がれている。
サキュウは肌の色は違うが、初代絶貴のことを思い出した。
「行かせてもらう」
アクは目の前にいる絶貴に視線を合わせる。
「いい加減邪魔をするな」
「そういうわけにはいかんな、我は忍び。主君の命に従わねばならない。我が主の願いは水の勇者の命を護ること、そして水の勇者がしたいことを叶えることだ」
「・・・・」
「貴様に話しても意味がなかろう。だが今は我に付き合ってもらうぞ」
絶貴がそういうと絶貴の両手から雷が迸る。
アクを包み込むように放たれた雷は空間を歪める。
「貴様が瞬間移動するのはわかった。だがどうやら影から影、制約があると見た」
アクの移動は確かに制約がある。
アクが出現させているブラックホールを渡る短距離移動なのだ。
そのため闇の魔力を微量でも撒き散らしている必要がある。
絶貴が放ったシノビの極意は雷の形をしているが、光の魔法であり闇の魔力を分散させる力がある。
移動を封じて、さらにシノビの極意で自身の体から六つの龍を出現させる。
六つの龍はそれぞれ異なる色をしていたが、混じりあうように螺旋を描き一匹の龍へと昇華した。
奇しくも絶貴が作り出した龍は、サキュウの最強技と原理を同じくするものだった。
「金龍」
移動手段を奪い、下方から龍がアクを食らうために昇天する。
「まだだ」
上空に穴が開いたことでアクが其方を向いたので、絶貴はアクを拘束する雷を強くする。
それと同時に上空に一筋の白い閃光が奔る。
雲よりも高くに舞い上がっていた白扇とセントハルクが滑降してきたのだ。
魔力を高めアクに刃が届く距離まで離れたセントハルク達は、大気圏を抜けてその身を赤い熱量に包まれた。
龍と人はその身を顧みることなく、一本の槍と化したのだ。
「神槍ゲイボルグ」
上空よりセントハルクと白扇が、下方からは絶貴の攻撃がアクに迫る・・・・・
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