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王との謁見

暇つぶしに読んでください。

 王女に連れられて阿久井 重たち異世界召喚者たちは謁見の間へやってきていた。


 謁見の間は漫画やアニメの中で想像したような空間が広がっていた。白で統一された壁と高い天井、左右対称に作られた城を支える大きな柱、床には赤い絨毯が敷かれている。


 先ほどまでいたのは召喚の間と呼ばれる場所で、城の中に作られた魔力スポットだそうだ。


「皆さま、よくぞおいでくださいました」


 謁見の間に入るなり、王様の大きな声で出迎えられる。阿久井たちの方へ向かって走ってくる王冠をつけたオッサンなのだ、王様に間違いない。

 王様の声に反応するように、左右に立ち並ぶ偉そうなオッサン達も阿久井たちに頭を下げていく。王様は王女と同じく召喚が成功したことを喜び、六人の前で地面に膝を突いて両手を胸の前で組んだ姿勢をとる。

 『王様、腰低いなぁ』というか、この国の歓迎の仕方がこうなんだろうかと考えてしまう。小説の中に出てくる王様は、偉そうに玉座でふんぞり返り、召喚者達に命令するイメージだったのに大分違うタイプのようだ。


「フフーリアよ。もう皆様のお名前は聞いておるのか?」

「はい、お父様。後は鑑定結果を待つだけです」

「そうか。ではさっそく」


 王様と王女が勝手に話を進めるので、理解できないため会話に割って入る。


「すみません。お二人の会話の邪魔をしてしまいますが、質問してもよろしいでしょうか?」

「かまいませぬぞ。どうかされましたか?」


 王様は、俺が話の腰を折って会話を邪魔しても、笑顔で受け入れてくれた。まるで商売人のような作られた笑顔に、後ずさりしたくなりながら質問を続ける。


「お二人は先ほどから何を話しているのでしょうか?……俺達の名前を聞いたら何かわかるんですか?」


 年長者として質問は俺の役目だろう。さっきは天野にもっていかれたが……


「フフーリアよ。皆様への説明はまだしておらぬのか」

「お父様申し訳ありません。まだ説明をしておりませんでした。皆さまも申し訳ありません」


 王女が、王様や召喚者に頭を下げる。


「申し訳ありませんでした。どうやら娘が説明を怠ってしまったようです。簡単に説明させていただきますと、皆様の名前を魔法のペンにより書かせていただきます。すると皆様の属性と職業が鑑定できるのです」


 説明を聞いていくと、魔法という単語が出てきた。やっぱりこの異世界は魔法が存在していた。鑑定の内容自体はステータスのことだろうか?先ほどの白フードの中に鑑定士がいたらしい。

 話を聞いている間に王様の下に書簡が届いた。


「鑑定結果が出ました。アマノ様から述べさせていただきます」


 王が鑑定結果を読み上げる。


 コウガ アマノ


 称号  光の勇者

 職業  真なる勇者

 属性  光


 マモル コンゴウ


 称号  土の勇者

 職業  守護者

 属性  土


 シズク シラユキ


 称号  水の勇者 

 職業  聖 女

 属性  水


 ヒバチ カミシロ


 称号  火の勇者

 職業  支配者・王の資質

 属性  火


 フウカ アンジョウ


 称号  風の勇者

 職業  調停師

 属性  風


 シゲル アクイ


 称号  闇の勇者

 職業  (???)

 属性  闇



「うむ。確かに六属性の勇者様に相違ありませぬ」


 六人の称号と属性を読み上げるたびに、大臣達から感嘆とした声が上がる。


 俺の職業だけおかしくないか?なんで(???)なんだ。それにしても鑑定結果の内容がショボイな。もっとHPとか、MPとか、色々あるだろうと内心突っ込んでしまう。

 謁見の間にいる、この世界の人たちは納得しているようなので口には出さない。


「それで王様、僕達は元の世界に帰れるのでしょうか?」


 またも俺を差し置いて、アマノが王様に質問をする。しかし、アマノの言葉に謁見の間の空気が重くなる。


「申し訳ありませぬ。勇者様達を召喚するのは一方通行なのです……召喚の条件が、異世界で死ぬ寸前の者という条件でしたので……勇者様達は元の世界に戻っても死んでしまう可能性があるのです……」


 王様は申し訳なさそうな顔をして、頭を下げてくれた。他の召喚者達は俺と同じトラックに轢かれる映像を思い出したのだろう。暗い顔をして沈黙する。


「それで、王様。俺達はなぜ召喚されたのですか?」


 ショックを受けている召喚者を代表して阿久井が説明を求めた。


「そうでしたな。皆様にも現状を知ってもらわねばなりませんな」


 王様も話が切り替わったことで、気分を切り替えたようだ。


 現状についてを要約すると、この世界には10人の魔王が存在するらしい。魔王達は一人一人が圧倒的な強さを持っており、互いに領土を取り合うように争っていた。

 その争いは魔王達がいる暗黒大陸だけに止まらず、ルールイス王国を巻き込もうとしていた。ルールイス王国が対抗するためには異世界より勇者を召喚するしかなかった。


 こんな感じだった。


 魔王が10人もいる以外は、小説とかのテンプレ的な展開だと思う。暗い話から切り替えたはずなのに、またも沈痛な面持ちで王様が語り終え、勇者召喚を行なった状況を説明してくれたことで謁見の間の空気が重くなる。

 

 現在は魔王の一人が配下の魔族を率いて、王国に戦争を仕掛けてきていた。抵抗を続けているが、段々と魔族の強さに戦況は押され始め、さらに魔王が戦場に現れれたことで万の兵を失ってしまったという。

 絶望した民衆や王族が最後にすがりついたのが勇者召喚と言うわけだ。


 ありきたりな説明の途中で、王様の話がつまらなくなった。俺は、社会人として欠伸をするわけにもいかないため、顔だけは聞いているようにして頭の中では冷静に現状の分析をしていた。

 

 戦争は本当のことか?どうして召喚された勇者なら対抗できるのか?情報が少なすぎるな……


「勇者様方、どうか我々を救ってくだされ」


 王様が入室した時よりも深く頭を下げて、床に額を突けて土下座の体勢をとった。阿久井以外の若い召喚者達は年配の王様が土下座した状況に戸惑っていた。


「王様、頭を上げてください。俺、やります。何ができるかわかりませんが、お手伝いします」


 王様の態度に介入されたのか、真っ先にアマノが王様に駆け寄って立ち上がらせた。さらに、助力を宣言する。


「私達も協力します」


 アマノに続いてカミシロとアンジョウが了承を表した。


「俺も……」


 コンゴウが声を上げ、横でシラユキが首を縦に振っている。


 ・・・・・


 俺は……ないな。勇者になる気はない。戦争の道具とかなりたくない。しかもあの王様の土下座って演技じゃん。アマノに立ち上がらせてもらうとき王様の顔がニヤけてたぞ。


「王様、すみません。五人の勇者は乗り気みたいなのですが、自分の目でこの世界を見たいと思います。その上で判断させていただけませんか?」


 これぞ大人の対応。


「そうですね……急な話でした。願われても判断しかねると思いますので、皆さんには世界を知ってもらう為にも育成期間を設けようとは思っております」


 王様は勇者達の態度に、上手くいくと思っていたのか、少し態度を固くして阿久井に返事をした。


「ありがとうございます」


 阿久井は最初から王様の態度が演技であることに気付いていた。


 この王様・・・狸だな。超腹黒いぞ。


 阿久井は、この世界の状況を知るのがセオリーだと判断した。王様との謁見を済ませて、それぞれに与えられた部屋へ案内される。


 決まったことと言えば、勇者君達五人がこの国に協力すること。それぞれに教育係という名の監視が付くことぐらいだろう。

 幸い教育係は阿久井にも付くことが決まっている。ここで承諾しないからといって、ボッチにされても困るので、腹黒王様の配慮に感謝した。


 案内された部屋は、ベッドと机があるだけの簡単な客室だった。窓から外を見ればもう暗くなっている。元の世界では朝だったのにいつのまにやら……


 コンコン


 扉を叩く音で我に返る。


「はい、どちら様ですか?」

「失礼します。闇の勇者様、メイドのアリエルと申します。入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「失礼します。改めまして闇の勇者様のメイド兼教育係をさせていただきます。アリエルと申します」


 アリエルは、教育係以外にもメイドさんとして身の周りの世話もしてくれるらしい。阿久井と同い年か、少し下ぐらいの女性で、金髪の王女様ほどではないが、歳相応な美人さんだった。

 赤茶の髪に落ち着いた雰囲気と物腰の柔らかい対応をしてくれる。


「初めまして闇の勇者として召喚されました。阿久井 重です」


 自分で言ってて、闇の勇者とか超ハズイ!!!だけど、それ以外に名乗りようがないし、アリエルの名前は王様から聞いていたが、初めましてなので社会人としての協調性を発揮する営業スマイルで対応しておく。


「なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」


 俺の営業スマイルに合わせてか、笑顔で小首をかしげる。超ハズイと思っていたの気付いていたのか、気を遣わせてしまった。


「何でもいいですけど、そうですねシゲルと呼んでいただけますか?」


 闇の勇者とか厨二病くさくて恥ずかしい。それに同年代の女性にはやっぱり名前で呼ばれたい。


「シゲル様ですね。ではシゲル様、夕食のご用意がされております。晩餐会会場までご案内致しますのでついてきていただけますか?」


 シゲル様きたー!メイドさんに様付けで呼ばれるのはやっぱいいなぁ~。顔は営業スマイルを崩さないようにしているが、内心ニヤニヤと緩みそうになる。


「晩餐会ですか?」

「はい、今宵は勇者様方を歓迎するためにパーティーが開かれます」

「なるほど、了解しました」


 阿久井は内心で異世界を満喫していた。パーティー会場の雰囲気は社交界という感じで、異世界のご馳走が並ぶ。

 阿久井は専属メイドと異世界召喚された自分に酔っていた。


読んで頂きありがとうございます。

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