邪神になりました21
今日は総合評価が1000ポイントを超えていました\(◎o◎)/!
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皆さんのおかげで嬉しいことばかりです。
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「どいつから殺されたい」
アクが敵を追い詰める時に使う声を初めて向けられた。
こんなにも絶望を感じる声だったのかと、ルーは背筋に冷たい汗が流れた。
「随分な言い草だな、やっと話したと思えば」
サキュウは落ちていくテリーを青鬼の玄夢が受け止めているのを確認して、アクの方に向きを変えた。
全力で放った攻撃が不発に終わってしまったが、余力はいくらでも残っている。
「貴様から殺されたいか」
アクの声にサキュウは恐怖を感じた。
こんなにも圧倒的な相手と戦うのはサキュウにとって初めてのことだったのだ。
いつも自分は強者だった。
異世界に召喚され、魔法を手にしてからチートと言っていいほど最強だった。
暗黒龍と戦ったときも紙一重で負けたが、戦えないとは思わなかった。
だが、目の前にいるアクは別次元の存在だと理解できる。
「ご主人様、ご主人様は私達のことを覚えていないのですか」
サキュウがアクの威圧に言葉を失っていると、ルーがアクに話しかけた。
アクはゆっくり向きを変える。
サキュウへ向けるような殺意がないことに、安堵してルーが言葉を続ける。
「私はご主人様と歩んできました。エリスさんもヨナもサーラもずっとご主人様と」
ルーが想いをぶつけていると、アクはゆっくりとルーに近づく。
戦場に緊張感が走り、ルーも言葉を止めた。
「モコモコよ。貴様は可愛い。出来れば殺したくはないのだ。黙っていることはできないか」
恐ろしい目をしたアクがルーの頭を撫でる。
モコモコと呼ばれて意味がわからなかったが、言葉を発してはいけない気がして、口の中が渇いていく。
「できれば貴様等三人は殺さないでいたい。そこで大人しくしいろ」
アクに大人しくしていろと言われた三人、ルー、サーラ、ヨナはアクが自分達の事を特別に思っていることを嬉しく思った。
それと同時にアクの言動の変化に気付いた。
アクは記憶がないのでないだろうか、そして何か考えがあって動いているのではないだろうか。
彼女達はアクが何をしようとしているのかわからなかった。
だが、アクはいつも考え策を巡らせ、人を動かしてきた。
もしかしたらと期待を持ってしまう・・・・
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「あれれ、どうしてかな。どうして話せるようになったんだろう」
耳元で囁く奴が疑問を口にする。
「君はあくまで君であって君でないのに、どうして話せるのかな。僕はそれを許してはいないのに」
耳元で囁く奴が疑問から怒りを込めた言動に変わった。
俺は考える。ずっとそうしてきた。
俺は誰なんだろう、俺は何者なのか、手の中にある感触を思い出す。
多くのモンスターを一瞬で消し去った。
その時は何も変化はなかった。
だが、暖かいモンスターを殺したとき思考が戻ってきた。
そして青いモンスターを殺したとき、視界と声が戻ってきた。
周りを飛んでいる強そうなモンスターを全て殺せば全てを取り戻せるかもしれない。
「ねぇねぇ聞いているの僕の話」
耳元で囁いていた奴が、うるさく話しかけてくる。
「君は僕の物なんだよ。何勝手な事しようとしているの、そんなの許さないからね」
耳元で囁いていた奴が耳元から正面にやってきた。
耳元で囁いていた奴の姿を初めて見る。
真っ黒い色をしたドラゴンがそこにいた。
「へぇ~僕の姿を見ても驚かないんだね。どうせだから僕が一番気に入っている名前で名乗ってあげるよ。僕は暗黒龍ベルザルード、世界を破壊する者だよ」
「ベルザルード・・・俺は誰だ」
「さぁ君は誰だろうね。でも君の体は僕の物、君の力も僕の物、君の全ては僕の物だよ。だから勝手なことはしてはいけないんだよ」
「俺の全てはお前の物?」
「そうだよ。君の全ては僕の物だ」
目の前にいる暗黒龍はまるで子供のように自分の物だと主張してくる。
それでいいのだろうか、思考が戻ってきたことで疑問が浮かんできた。
俺は誰のものではない。
俺自身のものであるはずだ。
だが暗黒龍の言っている意味を考えようにも、まだ情報が足りない。
ならばもっと自分を取り戻さなければならない。
「そうかお前の物か、ならば許可をもらおう、もっと力を付けたい。アイツらを殺してきてもいいか」
「力は必要だね。まぁそういうことなら仕方ないね。頑張っておいでよ」
視界が深層心理から戻ってくる。
目の前には戦場が広がり、モンスターだと思っていた者達の輪郭が先ほどよりもはっきりと見える。
ベルザルードに許可をもらったことで、体の主導権を得たのだろう。
モコモコのモンスターに見えていたのは、可愛らしい獣人の少女だった。
そしてデカい奴だと思っていたモンスターは12枚の羽根を生やした天使?だった。
状況はわからないが、思考するなかでいくつか自分の頭には知識があるのだと理解できた。
それがベルザルードの物なのか、自分の物なのかはわからないが、とにかく彼らが人間という種族であり、自分を殺しにきた者達だということは理解できた。
アクは5人の勇者達を見据える。
暗黒龍を騙し自信を取り戻すための贄として・・・・
いつも読んで頂きありがとうございます。




