表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/213

邪神になりました15

 サキュウ達がアクと戦うため、力を合わせようとしているとき、反発する者が現われつつあった。

獣人や鬼人を認めない者達が、セントセルス神興国の信者や戦争での遺恨を取り除けないでいる者達がルールイスで暴動を起こしたのだ。


「どうして我々が薄汚い鬼どもと一緒に戦わなければならないのですか」


 ルールイス王都では、暴動に参加した民衆によって城の前に人だかりができていた。

フフリアとコウガは、城の前に溢れる人だかりを見て困り果てていた。


「聖女様はどこだ?我々は獣人共は悪しき者と教えられてきたぞ。どうして今更獣人と共に戦わなければならなんだ」


 聖女が表舞台から去ったことで、信者と教皇の間に軋轢が生まれていた。

聖女のカリスマによって集められていた信徒達と、教えに従っていた信徒が抑えられなくなったのだ。


 二国は元々問題のある国ではあったが、ここ最近信者や民からの不信を集めることが多くあった。

どちらの国も戦争を行ない負けた国であり、そこに住まう者達からすれば上の者が信用できないという想いが積っていた。

 魔王襲来により力を合わせて戦うことになったが、民にすれば魔王の脅威は理解できず、また戦いに駆り出されることへの恐怖と、敵対してきた者と力を合わせて戦うことができない思いが暴動という形になって現れた。


 魔王とは暗黒大陸にいる者であり、刺激しなければ自分には関係の無い存在だと多くの者が思ってきていた。

 魔王が現れたから戦えと言われても、魔王の恐ろしさなど理解していない者達からすればなぜ戦わなければならないのかわからないというのが正直な感想だった。

 

 暴動を治められていない状態では二国は、アク討伐に参加できないでいた。


 そのためサキュウは、一計を案じることにした。

 

 昼間だというのに突然闇に包まれた二国の上空に巨大な魔王の鎧を纏ったサキュウが映し出される。

禍々しい鎧に包まれ、顔も魔王仕様に作られた冑で包まれている。

世界を恐怖に陥れそうな雰囲気を出したサキュウは、禍々しい重低音の声で話し始める。


「我は魔王サキュウである。醜き人間どもよ。我は貴様らを葬り去り新たな世界を作ろうと考えている。我が魔力をもってすれば貴様らを皆殺しにするなど容易いことだ。手始めに貴様たちに我の力の片鱗を見せてくれよう」


 突然空に現れたサキュウを見ていた民衆は、その禍々しい姿と声に恐怖し魔王がいったい何をするのか、辺りを警戒し始めた。

 

 サキュウは二国の首脳と示し合わせ、サキュウが手を翳した場所を爆発させた。

それは暴動を先導している者がアジトにしているであろう建物だった。

 暴動とは、勝手に起きるものではない。

必ず暴動を起こす扇動者がおり、リーダーとなっている者がいる。

 それをサキュウが見つけ出し、魔王の攻撃という名目で抹殺したのだ。


 そこからは各国の英雄の出番である。

空に現れた巨大なサキュウに向かって、ルールイス王国では白い鎧に身を包んだコウガが、セントセルス神興国では青い鎧に身を包んだテリーがサキュウへと挑みかかった。


「魔王め貴様の思い通りなどさせると思うなよ。我は光の勇者コウガなり、魔王を倒すため異世界より召喚されし者だ。貴様など俺が倒してやる」


「くくく、貴様一人で何ができる」


 サキュウはノリノリで魔王を演じている。

コウガが剣を振るうが、魔王は全く効いていないように余裕で笑みを作る。

 サキュウが腕を振るうとコウガが吹き飛ばされる。


 兵士はコウガを応援し、王女も切ない表情でコウガの戦いを見守っている。

暴動をしていた者も、そんな王女や兵士の様子を見て段々とコウガを応援する。

 

 そこに鬼人である絶貴が現れてコウガを受け止める。


 絶貴はいつものシノビ装束ではなく、肩や胸に甲冑を着込み戦国武者のような出で立ちでコウガと肩を並べて戦いだした。

 青鬼である絶貴は角を隠そうともせずに、ルールイス王国では見かけない出で立ちをすることで、鬼人であることをアピールした。

 二人が力を合わせることで、魔王が段々押され始める。


「くっ、貴様ら人間と鬼人は敵対していたのではないのか」


 サキュウが苦悶の声を上げながら、暴動をしていた者達が思っていたことを口にする。


「俺達は一度間違えた。だがこの世界に生きる者として今はお前を倒すため力を合わせなくちゃいけないんだ」


「我も助けを求められたなら、その手を振り払うことなどせぬ」


 二人は人と鬼人の間に壁がないというように、見事なコンビネーションでコウガが剣を振るえば、絶貴がシノビの極意で援護する。

 コウガが下がり、絶貴が突っ込めばコウガが光の魔法によって絶貴を援護する。

二人が戦いを続けているうちに、ルールイス王国第二王女が、鬼人である玄夢が、参戦して魔王を追い詰める。


「なかなかやるではないか、今は引いてやる。だが我は人類を滅ぼし新たな世界を作ってやるぞ」


 捨て台詞を残して巨大な魔王は消え去った。


 魔王が消え去ると民衆は争っていたことなど忘れて歓声を上げた。

魔王の恐怖、鬼人への不満、そして自身達の置かれている立場を理解した民衆は、王族に従うようになった。

 セントセルス神興国でも同じようなことが行なわれていた。

セントセルスでは、バンガロウからサントンとセントハルク、アース大陸から白扇とサーラがテリーと共に戦った。


 二国に住む信徒と民は自分の愚かさを理解し、協力を惜しまないようになった。


 これによって本当の意味で世界は一つになった・・・・・

いつも読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ