邪神になりました13
白扇達はあるアイテムを手に入れた。
それは装備するだけで魔力も体力も強化してくれる物であった。
またアイテムが置かれていた台座にて、闇のオーブと書かれており、説明文として魔王の力を封印するアイテムと記されていた。
「白扇の旦那、これでご主人も助けられるな」
「ああ、やったぞケルイ」
二人は喜び勇み、闇のオーブを持って帰った。
闇のオーブを手に入れたことで、白扇たち獣人、亜人達は戦える者を引き連れて、黒い光の柱が一番近くに見える場所へと渡った。
連邦内では獣人や龍人が島を移動しても何も言われなくなったが、それはアクがいてこそ成り立っていた常識なのだ。
そのため白扇たちは自身の体を龍化させることで龍人達を背に乗せ、一時的に連邦の空を通り過ぎた。
アクに名前を授けられた龍人と白扇の4人は、黒い光の柱を囲うように位置取り闇のオーブを黒い光の柱に向かい掲げた。
台座には吸収したい魔王の傍に近づき、願えばいいと書かれていた。
白扇は願った魔王の力を闇のオーブに封印したいと、マスターであるアクを取り戻したいと願った。
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サキュウはルーに連れられフェアリータウンに来ていた。
フェアリータウンにはアクに付き従っていた7人の乙女と、アクの妻がいる。
そこであれば白扇の居場所も突き止められると思ってやってきたのだ。
「ここです」
ルーに案内されてやってきたフェアリータウンは、森の中に作られており、人と獣人が笑顔で行き来していた。
モンスターが侵入しないように高い城壁が作られ、町の中には畑や水源が作られている。
まだまだ発展途上の町ではあるが、人の力を感じることができた。
「ここにアク殿の奥方がいらっしゃるのだな」
サキュウはルーに案内されて、アクの家だというところにやってきた。
町の中で一番大きい家で、ルーが扉を叩く。
「戻りました」
ルーが一言声をかけて中に入って行く。
中は大きなエントランスがあり、続いて30人ほどが入れる食堂へと通される。
「ここでお待ちいただけますか、呼んでまいります」
ルーが食堂を出て行き、サキュウはしばし考えに耽っていた。
アクという人物の記憶を見たとき、フェアリータウンの町も出てきた。
しかしここまでの発展は遂げていなかった。
「お待たせいたしました」
扉が開き一人の女性が入ってくる。
赤い髪にルー達に比べると少し大人びた女性がそこにいた。
それでも美女であることに間違いない。
「いえ、私も考え事をしていましたので」
「今日はフェアリータウンにお越しいただきありがとうございます。大魔王様」
「いや、堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。私のことはサキュウとお呼びください」
「そうですか、ではサキュウ様。私のこともエリスとお呼びください」
「ああ、そうさせてもらおう。エリスさんに聞きたいことと報告がある」
サキュウは六か国会談が行われ、アクの命が助からないであろうことを話した。
また全員で力を合わせて魔王となってしまったアクと戦うため獣人の力を借りたく、白扇の居所を探していることを告げた。
「そうですか・・・・あの人は助からないのですね・・・・」
エリスはサキュウに真実を告げられても泣くことはなかった。
白扇がアース大陸にある遺跡に向かった情報を伝えて退室していった。
「強いお方だな」
サキュウのエリスに受けた印象は誰もが感じているものと同じものだった。
「はい。マスターの奥さまであり私達の母様です」
ルーがエリスのことを信頼しているとよくわかる一言であった。
「よし、次はアース大陸だ。白扇を止めよう」
「お願いします」
サキュウがアース大陸に向かうと逆に連邦の空にドラゴンの群れが飛んで行った。
「ここが遺跡だろうか?」
サキュウは感知魔法で白扇達の足取りを追った。
そして見つけた遺跡の中に入り、最奥の間にて何も置かれていない台座を見つける。
「なんだこれは?」
「白扇さん達が何かを持って行ったのでしょうか」
「少し調べてみよう」
サキュウは台座に鑑定の魔法をかけた。
『魔王の力を封印した闇のオーブを祭る台座』
「なっ、魔王の力を封印してるだって!!!」
「えっ、どういうことですか」
「多分ここに書かれている文章はダミーだ。闇のオーブとは魔王本来の力を取り戻すための鍵なんだ」
「じゃ、白扇さん達を止めないともっと危険なことになるじゃないですか」
「とにかく出よう」
サキュウが脱出の魔法使い二人は一気に遺跡から脱出する。
さらに飛び上がって黒い光の柱に向かおうとした砂丘が見たものは、黒い光が消滅していくところだった。
「遅かった・・・」
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「やった~やったぞ!白扇の旦那」
「ああ、我らの願いが叶ったのだ」
ケルイが白扇の背ではしゃいでいる。
二入の目の前に存在していた黒い光の柱が消えかかっているのだ。
黒い光は闇のオーブの中に吸収され、全て消えてしまった。
黒い光の柱の中から、見慣れた姿が有った。
「マスター」
白扇が嬉々としてアクを呼ぶ。
飼い犬が飼い主がすり寄るようにそれは自然なことだった。
自然なことのはずだった。
白扇もこの世界では最強の部類に入る者だといっても差し支えない力量を持っている。
たとえ久しぶりにアクに会ったことで感動していても対処できるだけの力量を持っているはずだった。
その白扇の胸から一本の腕が生えていた。
黒いローブに仮面をつけた顔が、見慣れたアクの顔を近くにある。
「どうしてじゃ、マスター」
白扇の体がグラリと傾き、アクの腕が心臓から抜けて白扇は落ちていく。
「白扇の旦那~~~~~~~~~~~」
ケルイは白扇の背で何もできなかった。
アクがいつ動いたのか、どうして白扇に攻撃したのか何もわからなかった。
だが、落ちていくケルイが最後に見たアクの瞳は、何も映してはいない空虚だった。
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