邪神になりました11
活動報告にも書かせていただきましたが、ライト文芸賞に応募させていただきました。
そのため一話目から誤字脱字チェックをしますので、しばし新作の投稿をお休みします。
ご迷惑をお掛けしますが、どうか最後までお付き合いくださいm(__)m
各国首脳たちの視線を受けて、天野 光賀は一瞬固まる。
だが事前にサキュウと話し、フフリアとも話し合った。
自分の職業、「真の勇者」との意味を、そしてその仕事をする時がきたのだと思う。
「今日初めて会う方もおりますので、自己紹介させていただきます。僕の名前は天野 光賀といいます。異世界から召喚された光の勇者です。僕は異世界から召喚された時、ステータス鑑定をしてもらい、職業に真の勇者と言う称号を得ました」
コウガはゆっくりと首脳陣を見ていく。
コウガと言う人物は本来、真面目で気の優しい少年だった。
頼まれたことを断ることができず、困った人がいれば率先して助けにいく。
そんな心優しい人物だった。
異世界に召喚され戦いの中に身を投じていくなか、戦いのために必要な非情さを求められた。
それはルールイス王国にいたときは、バッポスによって非情さを叩きこまれ、王女フフリアからは悪意ある嘘によって土の勇者への嫉妬を植え付けられた。
優しく染まりやすかった少年は、異世界に来て悪意に晒されたことで、勘違い野郎へと成長してしまった。
勘違い野郎だった彼は幾度となく尖った鼻を折られることになるが、気付きそうになり考えようとする前に彼の環境は目まぐるしく変わっていってしまった。
力を手に入れ、土の勇者と闘うが相打ちになり、セントセルス神聖国に渡ったことで自分よりも強い者がいなくなった。
自信を持って望んだ戦争でセントハルクに歯が立たず、コテンパンに負けた。
挫折する前に新たな力を得るが、力に呑まれて意識を失っている内に、大魔王サキュウに助けられ、修業という形でその手下となったエルファルトと戦ったが手も足もでなかった。
コウガだってもう気づいていた。
自分は強くない、勘違いしていただけだ。
落ち込み、そして自分自身と向き合い、自分にできることについて考えた。
火鉢や風香にキモイと言われようと、雫に嫌な人扱いされようと、金剛に敵扱いされようと・・・
自分にも何かできるんじゃないか・・・・必要としてほしかった。
「コウガ様!!!お会いしたかったです」
自分の存在について悩んでいる時に再会したのがフフリアだった。
サキュウと共に久しぶりに訪れたルールイス王国で、女王となった彼女はコウガの姿を見ると抱き着いてきた。
フフリアは最初からずっとコウガに優しかった。
それが光の勇者へのものだったとしても、ここまで喜んでくれるフフリアにコウガは素直に嬉しかった。
「フーリア、ごめん帰って来るのが遅くなった」
「いいのです。あなたが無事に帰ってきてくれて」
コウガはフフリアに抱き着かれて、涙を流した。
そして彼女のために自分の力を使おうと決意した。
彼女に下心があったとしても構わない。
コウガの心は自分を求めてくれる人を求めていた。
首脳たちを見渡し、フフリアを最後に見る。
コウガは決意を込めた瞳でフフリアに一度頷き前を見る。
「真の勇者として、そしてルールイス王国の光の勇者として、黒い光の柱を討つ刃となります」
天野 光賀は召喚されたばかりの頃、アクが思った通りの勇者らしい勇者へと成長を遂げようとしていた。
彼が経験してきた挫折は無駄ではなかった。
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六か国会談を終えて、サキュウは一息つくために会議室とは別に作られた控室へと移動していた。
控室は個室になっており、ソファーとテーブルが置かれた簡易なものだった。
「一回目の会談としては上々だな」
フフリアとコウガの決意表明の後は、黒い光の柱に対して具体的にどうするかを話し合った。
黒い光の柱があるのは南のベンチャイス連合なので、中央のセントセルス神興国が近いということもあり、ベンチャイス連合には監視を続けてもらう。
セントセルス神興国に勇者達を集結させることを決定した。
カブラギ皇国には、シノビの力を使った周辺の調査と食料などの提供を、アスガルト共和国は資源が豊富なため、資源の提供を頼んでいる。
もちろん各国の強力な戦士達には戦いにも参加してもらうことにもなった。
そしてルールイス王国には黒い光の柱へ戦闘を仕掛ける際、先頭に立って戦ってもらうことが要求された。
「あとは細かいところを詰めながら、何度も情報交換をしていくしかないな」
サキュウが議題をまとめていると、控室の扉が叩かれる。
火鉢と風香には一人で考えたいことがあるからと、来ないように告げてある。
「どちら様ですか」
サキュウは気配を探りながら問いかける。
「少しお時間頂いてもよろしいでしょうか」
そこには会談に参加していなかった彼女が立っていた。
いつも読んで頂きありがとうございます。




