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邪神になりました9

 ルールイス王国は他国よりも貴族性が強く、プライドの高い国とされている。

プライド故に学校を作り、農業や工業を発展させ最先端を模索し続けた。

 温故知新、ルールイス王国は古い物を記録し、新しい物を生み出すことを繰り返してきた。


「お父様、あれは・・・・」


 南の連邦領に突然現れた黒い光の柱を見て、王族である王女は父の下へと走った。

ルールイス王族だけが知っている事実がある。


「ついに来てしまったのだな」


 プライドが高く傲慢な王は、それでも王であった。

世界の危機を察知していた。

 魔族が攻めてきたなど建前に過ぎない。

本当の理由は何百年かに一度現れる世界を滅ぼす者、その周期が近付いていたのをルールイス王族のみが察知していたというものだったのだ。


「む~このために勇者を召喚しておいたと言うのに、水の勇者・土の勇者はカブラギ皇国に奪われ、光の勇者は行方不明、火と風からは音信不通とは・・・」


 王は力無く玉座にへたり込んだ。

世界を救い、世界のトップとしての地位を確立するつもりでいたルールイス王としては誤算だらけの勇者召喚だった。


「お父様、どうなさるのですか」


「どうもこうもない。あれは全てを飲み込む闇じゃ、誰も太刀打ちできん。出来る者がいるとすれば召喚した光の勇者じゃったが、もうおらぬ」


「そんな・・・」


 ルールイス王は悲痛な思いで、黒い光の柱を見つめることしかできなかった。


「王様!!!来客です」


「こんな時に誰じゃ」


 幾日も話し合いの末に諦める方向に話が進んでいた会議に、乱入されては苛立ちも産まれようというものだ。


「はっ、火の勇者 神代 火鉢様、風の勇者 安城 風香様、そして光の勇者 天野 光賀様です」


「何っ~~~!!!!すぐに連れてまいれ」


 王は行方不明だった三人が同時に戻ってくるとは思っていなかったため、叫び過ぎてイスから転げ落ちた。

 その勢いのまま、兵士にすぐに連れてくるようにと命令を出した。

王が振り返った先にいた王女は希望に満ちた瞳を王に向けていた。


「これで、世界は助かるかもしれん」


 王も希望に満ちた思いで勇者達の到着を今か今かと待った。

そして兵士に連れられた現れた三人は、ルールイス王国にいた時よりも随分と大人びて見えた。

 火鉢を先頭に謁見の間に入ってきた三人は威風堂々としたものだった。


「よくぞ戻った勇者達よ。今この世界は未曽有の危機にある」


 王は威厳たっぷりに三人を出迎えて、早速本題に入ろうと話を進める。


「王様、少しよろしいでしょうか」


 話を進めようとした王を遮るように火鉢が手を挙げる。


「むっ、どうしたのだ」


 出鼻を挫かれた王は面白くないが、久しぶりに帰ってきた勇者の言葉を無視するわけにもいかない。


「私達は別に帰ってきたわけではないんです。王様に協力を求めにきたのです」


「協力?もちろん、あの黒い光の柱を消し去る協力ならばいくらでもするが」


「それは話が早くて助かります」


「うん?どういうことじゃ」


「私達はこの世界全ての者の協力を求めています。そして黒い光の柱と戦います。ルールイス王におかれましたはそのための協力と六か国会談を開きたいと存じますのでご足労願えないでしょうか」


「六か国会談じゃと!!!」


「はい、セントセルス新興国・アスガルト共和国・カブラギ皇国・レギンバラ連邦・ルールイス王国そして暗黒大陸の六か国です」


「暗黒大陸じゃと!!!」


「はい、暗黒大陸は大魔王サキュウ殿の下、統制がとれたちゃんとした国です。ですのでこの世界危機に対して一つの国として参加していただきます。ちなみにルールイス王国以外の国々の盟主には了承を得ております」


 火鉢の言葉に頭をフル活動させているが、全く追いつかない。

どうなっているのだ。

 どうして異世界人である勇者がここまでのことをできるのだ。

王の頭の中は目まぐるしく、働いていたが情報を処理できずにいた。


「少しよろしいでしょうか」


 王に代わり王女が一歩前にでる。


「なんでしょうか」


 火鉢も王ではなく、王女に視線を向けて問いかける。


「六か国会談は承知しました。ですが場所はどこでやるのでしょうか、それと六か国会談の主は誰が務めるのでしょうか」


 王女にもプライドがあった。

他国が承知していることを今さら覆しても得はない。

むしろ、乗り遅れた自分達が割を食う方が大きいと判断した。

 だからこそせめて主はルールイス王国でありたいと主張しているのだ。


「もちろんルールイス王国にやってもらいたいと思っていますが、場所は中間がよろしいと思いますので、セントセルス神聖国になると思います。」


 火鉢の言葉に王女は頷き、王である父を見る。


「お父様、世界の危機に対して我らは主として働かなければなりません」


 王女の言葉に王は息をのむ。

自分の時代が終わったことを認識してしまったのだ。


「わかった。神代殿、承知した。日時などは追って知らせてほしい」


 王の顔はどこか晴れやかで、何かを決意したものがあった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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