邪神になりました8
評価ありがとうございます(*^。^*)
これからも頑張ります!(^^)!
サキュウは阿久井 重と言う人間の人生を見てきた。
元の世界で社会人として生きた阿久井、事故に巻き込まれ異世界に転生した阿久井、自由を求め、魔王の力を使い転移した阿久井。
盗賊になり、商人になり、国に戦争を仕掛け、国を作り、結婚をして獣人達と交流していく。
サキュウは阿久井のことを羨ましく思い、またその人生に共感できた。
阿久井は常に他人の事を気にして、なるべく人を殺さないようにして戦っていた。
それが戦争という中で限界を迎えた。
バンガロウ王を殺したときから、阿久井の心が少しずつ変わってしまっていった。
仮面をつけるようになり、阿久井の周りには死が溢れた。
いつの間にか如何にして効率よく敵を倒すか、彼は仲間のために己を殺していった。
死神軍師、最も人の死を嫌った者がもらうには不本意な称号を得るようになった。
「なんとも不器用な男だな」
サキュウは自分の不器用さを棚に上げて、阿久井を不器用だと評した。
それは嫌味ではなく、本心から思ったことで、またサキュウは阿久井と言う人物がどこか自分に似ているような気がしていた。
「旦那様帰ったぞ」
サキュウの思考は火鉢達の帰還で、現実へと戻される。
火鉢、風香、雫、護の四人がサキュウの下へやってきた。
「おかえり、そしていらっしゃい」
サキュウは魔王スタイルではなく、パンツにトレーナーとラフな恰好をしていた。
雫や護から見れば近所のお兄さんに出迎えられたような気軽な相手に一瞬唖然としてしまう。
「どうかしたかな」
「いえ、まるで元の世界に帰ったような気がして」
「ああ、服装のことかな?作るのは大変だったけど、成せばなるだね。この格好が結構気に入っていてね」
「そうなんですね。すいません火鉢さん達に話は聞きました。私達にできることを教えてくださいませんか」
護は雫と意見が同じだというように頷くだけで、主に話しているのは雫だった。
サキュウも雫の積極的な態度や、護の強さに嬉しい誤算だなと内心喜んでいた。
「君達の中に眠っている精霊を起こす。そして二人には魔王討伐の力を貸してほしい」
「精霊?」
「ああ、ある程度の魔力を保有し強い心を持つ者には精霊が宿っている。それは異世界人でもこの世界の者でも同じなんだ。火鉢や風香にも精霊を授けた。この世界の人間でなら、セントルイス神聖国のテリーやバンガロウ王国のサントン王などが宿していると思うよ。まぁそれぞれの王家には守護精霊もいるから宿していなくても守ってくれる場合があるけどね」
サキュウの説明を聞きながら、雫も護も何かに守られているような感覚を覚えたことがあった。
それが精霊だと言われれば確かに納得できる。
雫は自身が力を手に入れることを躊躇った。
だがそれがこの世界のためになる、引いては自分が奪ってしまった家族を守ることができるのであればと決心した。
「お願いします」
「まぁそんなに気負う必要はないよ。二人の精霊に呼びかけるだけだからね。その後はまだ二人にはやってもらいたいことがあるから」
サキュウは意味深な言葉を残して、二人に精霊を呼ぶようにいう。
「水の精霊よ私の下に来て」
雫が膝をついて祈りを捧げる。
すると雫を覆うように水が湧き上がり、水は龍の形を取った。
「おっ、天使系ではなく竜だな」
サキュウの声に雫とドラゴンの目が合う。
水の量は溢れるほどだったのに、ドラゴンの大きさは雫の顔ほどしかなかった。
「可愛い」
「名前を付けてやるといい」
サキュウは雫の下を離れて、護の方にやってくる。
「君もやってみなさい」
親戚のお兄さんにしか見えないサキュウに、心を許せないでいたが雫の精霊を見てやってみることにした。
「土の精霊よ我の下に」
護が精霊を呼ぶと、地面から土がせり上がり護が最初の頃に使っていたゴーレムの形を取って行く。
やがてゴーレムは段々と形を整えて、形を完成させた。
「これは、スゴイな」
あまりの出来にサキュウも感嘆の声を漏らした。
護が作り上げた精霊は、ロボだった。
超合金で作られたかと思うほど土色ではなくメタルカラーであり、顔はヘルメットをかぶっているように能面なのだが、体は子供の頃によく見た戦隊者のロボに間違いなかった。
「面白い形だな」
「そうですか。俺にはこれしかイメージできませんでした」
護が何度か能力を使ううちに形が固められていった。
精霊だと言われたとき、この力は精霊がくれたのものだと何となく納得できた。
だからこそ、精霊の形はこれだと確信を持てていた。
「まぁ二人とも精霊が召喚出来てよかった。次は転移の魔法を覚えてくれるかい?」
サキュウは自身が教えられる、転移や空を飛ぶ魔法を教えていく。
二人にしてほしい仕事があったので、手伝ってもらう為に惜しげもなく自身の知識を披露していった。
「凄いんですね。魔法って」
「君達は行き成り戦闘に参加させられたからね。どうしてもそっち方面の魔法ばかりになってしまっていたんだろう。魔法とは本来無限の可能性があるんだよ」
「それで俺達にさせたいことっていうのは」
護も大分サキュウに慣れてきたので普通に会話ができるようになっていた。
「君たちはカブラギ皇国にいたよね。そこで君達に頼みがある。どうかカブラギ皇国を味方につけてくれないだろうか」
「どういう意味ですか」
一瞬雫は沈痛な顔をした。
護はそれを庇うように雫の前に立つ。
「今起こっている魔王の因子はかなり強力だ。俺が四百年前に封印した暗黒龍よりも強いと思う。だからこそ全世界の者に協力してほしいと思っているんだ。君達が勇者であり、カブラギ皇国と関係が深いことは知っている。だからこそ協力できないだろうか。すでにバンガロウ王国には赴いて連邦との協力は取り付けている。
残るは三つのカブラギ皇国・ルールイス王国・セントセルス神聖国だ」
「なるほど、アスガルト共和国は土の勇者を崇めていた。必ず協力してくれるということか」
サキュウの言葉の中にアスガルト共和国が無かったため、護はアスガルトを訪れたことがあるので、サキュウの言葉の意味を察した。
「まぁそういうことだ」
「頼めないだろうか」
護は雫に視線を向ける。
雫にとってこれ以上カブラギ皇国の者を犠牲にしたくないという思いがあった。
「・・・・話してみます。これは世界を左右することですから」
雫はしばらく考えたあと、決意を決めた。
多くの者を助けるために自分がまた罪を背負えばいいと・・・・
いつも読んで頂きありがとうございます。




