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邪神になりました7

 家の中は暖炉が部屋中を暖めており、ローチェアーに女性が座っていた。

少年は強く頼もしく成長し、少女は穏やかな雰囲気を纏う女性へと変わっていた。


「お久しぶりですね。神代さん、安城さん」


 女性は優しく笑いかけながら二人の名前を呼ぶ。


「覚えていたのか」


「はい、忘れるはずないじゃないですか。共に異世界から来た者なんですから」


「そうか、白雪 雫。お前は強くなったな」


 火鉢が覚えている雫は弱々しく護の後ろに隠れているような少女だった。

それが今は急な訪問者に対して余裕の笑みと落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


「そうかしら」


 微笑む少女に神代は面白い者を見るような目を向ける。

そこに敵意はなく、むしろ好感を持った者を見る視線だった。


「二人に頼みたいことがある。今の二人ならば私もいや、私の夫も認めるだろう」


「私のやないよ、私達のやろ」


「そうだったな」


「お二人の旦那さん?どういうことですか」


 雫が不思議そうな顔で、二人の顔を見比べる。

二人はゆっくりとそして楽しそうに、二人の旅の話を夫であるサキュウとの出会いを、そして今差し迫っている危機についてを告げていく。

 

「そう、そんなことがあったのですね」


 話を聴き終えた雫は一度だけ護の方を振り向く。

護は決して何も言わなかったが、その瞳には白雪の好きにすればいいという意思が込められていた。

 

「どうか一緒に戦ってほしい」


 神代は右手を差し出し、雫に握手を求める。

雫はしばし考えるように目を瞑り、そして意を決した瞳で目を開く。


「行きます」


「そうか、よかった」


 神代は何度も握手した手を振り、喜びを表らした。

風香も嬉しそうに二人の手に自分の手を重ねる。


「みんな一緒やね」


 女三人集まればなんとやら、それからの三人は楽しそうにガールズトークに花を咲かせる。

護は邪魔にならないように自分用に用意されている寝室へと移動した。

 護にとっても良い傾向だと思った。

雫が壊れないで精神を保てているのは、自分がいるからだと自負しているが、二人の女性がやってきたことで、雫にとって良い息抜きになっている気がする。

 それは護にとってありがたいことだった。

自分ではできないことをしてくれる存在が現れたのだ。


「雫も息抜きができていいだろう」


 三人のガールズトークは夜通し続いた。


ーーーーーーーーーーーーーー


「白扇の旦那、これからどうするんだ」


 ケルイは白扇に付き合って、フェアリータウンへと帰ってきていた。

白扇もアクの現状を奥方に話さなければならないと思い、フェアリータウンまで戻ってきたのだ。


「まずは奥方に報告だ」


「じゃ俺は生き残った者と村への報告に戻ります」


「頼む。マスターのお蔭で被害は半分で済んだ」


「頼まれた」


 ケルイは同行していた数人の獣人を連れて姿を消す。

白扇はケルイを見送った後、家の玄関を扉を叩く。


「は~い」


 中からエリスの声が聞こえ、白扇は覚悟を決める。


「どなたですか」


 扉を開けながらエリスが顔を出す。


「白扇です。奥方」


「あら、珍しいわね。白扇さん一人なんて」


「はい」


 白扇は告げねばならない、言葉を何とか絞り出す。


「どうかされましたの?」


 エリスは明るく笑顔で白扇に視線を向ける。


「マスターが行方不明になりました」


 白扇の言葉を聞いて、エリスの笑顔は凍りつく。

時が止まったように固まり、動かないエリスに白扇は段々と不安になってくる。

 そして待つこと一分、エリスの笑顔は笑顔のまま口が動く。


「そう、何度も戦争に向かう背中を見てきたから覚悟はしていました。でも彼は死んだわけではないのですよね」


「はい、死体は見つかっておりません」


「そう、なら大丈夫です。彼はきっと帰ってきます」


 先程までのフリーズがウソのようにエリスの言葉には力強さがこもっていた。

 白扇はエリスの言葉を聞いて何て強い女性だと、さすがはマスターの妻だと嬉しくなった。


「必ず、マスターを連れ帰ります」


「任せました。あの人に帰ってきたいと思ってもらえるように私は家で待っていますね」


 フェアリータウンも孤児を受け入れる様になり大分人口が増えた。

さらに獣人や亜人・龍人など、様々な人種が普通に生活する。

 アクの理想の町が出来つつあるのだ。

アクが帰ってきたときのことを考えて、エリスは最高の言葉をくれたのだ。


 白扇に迷いはなくなった。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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