閑話 その他の勇者達 エピローグ2
暖かな体に包まれたあの日から・・・私達は贖罪の日々を送っています。
あの人を失った悲しみによって私の心は壊れてしまいました。
多くの悲劇を生み出してしまった。
それは取り返すことのできない大きな罪として、私達は二人でその罪を背負うと誓いました。
私の隣には彼が寄り添ってくれています。
罪を共に背負ってくれると彼は言ってくれました。
「どうした?」
「なんでもないの」
私達は巡礼を繰り返しています。
戦争終結後、私達はカブラギ皇国に戻りました。
「よくぞ戻ったのじゃ、雫」
「姫様、ご迷惑をお掛けしました」
「よいのじゃ。お主は望むことをした。そして我らはお主の助けをしたかったのじゃから」
「ありがとうございます」
私が涙を流すとアヤメ姫様は優しく私を抱きしめてくれました。
その後は金剛を紹介し、二人の険悪ムードを仲直りしてもらったり、アヤメ姫様の優しさに触れ彼が笑ていたりしました。
私にとっては嬉しいことばかりでした。
絶貴さんや玄夢さんが戦後処理に動いてくれて、ルールイス王国との和平を結べたことは数日後に聞きました。
このときの私は彼に会えた喜びで自分の罪を理解していませんでした。
ですが、数日後私は自分の罪を知ることになったのです。
それはルールイス王国との戦争で死んだカブラギ皇国兵士達の墓参りに行ったときでした。
「あなた~どうしてどうして」
「母さん。もう父さんはいないんだよ」
泣きじゃくる女性とそれを慰める幼い子供がいました。
カブラギ皇国の兵士は全部で38人の命が散りました。
シノビの極意を極められる者は少ないので、戦える者が元々少ないため数としては少ないです。
でも、カブラギ皇国としては38人と言う数はかなり多い数になります。
作られたお墓の前で私は気付いてしまったのです。
自分の我儘で他の方の家族を亡くさせてしまったのだと、自分には彼が帰ってきてくれたのに泣きじゃくる女の人には旦那さんは帰って来ない。
息子さんはもうお父さんの顔をみることはできない。
お墓の前で私は頭の中が混乱して、意識を失いました。
彼に抱きかかえられて、城に戻ってお医者さんに診てもらいました。
すると私の体は魔力欠乏症と呼ばれる奇病にかかっていると診断されました。
魔力欠乏症、極端に魔力を使い続けて魔力の代わりに生命力を魔力に変換してしまい発病する病気。
戦争を仕掛けた私にもやはり罪を背負う時が来たのだと、私は思いました。
彼はお医者様に詰め寄り助かる方法はないのかと問い詰めていましたが、お医者様は首を横に振ります。
「魔力欠乏症になったならば魔力は回復せず、生命力が尽きた時が死ぬときです」
徐々に生命力は魔力に変換され私の寿命を削って行くそうです。
後は私の生命力次第だとお医者様は仰いました。
これが報いなのだと思いました。
私はカブラギ皇国の人たちを巻き込み、ルールイス王国の人たちをたくさん殺しました。
罰を受けるときがきたのです。
私は割とすぐに受け入れることができました。
私の代わりに彼は怒り、アヤメ姫は泣き崩れてくれました。
でも嬉しいこともあったのです。
私のお腹に彼の子供が宿っていると説明されました。
私はお腹の子を産むまで死ぬことはできません。
彼の下に届けてあげなければならないから。
その日から精力的に食事をとるようにしました。
罪を償うための巡礼も行いました。
私の日課はしっかりと食事、軽い運動、そして巡礼に向かい祈りを捧げる日々を送りました。
でも世界は優しくありません。
南の島群の方で黒い柱が立ち上がりました。
私は寒気がして、その柱を怖いと感じました。
黒い柱が現われて数日後に、異世界に共に召喚されて暗黒大陸に渡ったはずの火の勇者と風の勇者が会いにきました。
「どうか一緒に戦ってほしい」
ああ、これも罰なのでしょうか。
魔力を使えば私の命が尽きるのは早くなる。
でも、私が戦いに行かなければもっと多くの命が失われてしまう。
私には最後まで彼に何かを残すことができないのですね。
「行きます」
彼は必死で止めてくれましたが、これは私達がやらなければならないことなのです。
黒い柱を見たとき、恐怖と同時にこのときが来るのではないかと予感めいたものを感じていました。
彼は私の決意を聞いて、悔しそうにしていましたが納得してくれました。
ごめんなさい、せっかく会えたのに我儘ばかりで、ごめんなさい、あなたに何も残せなくて、ごめんなさい、私は罰を受けます。
いつも読んで頂きありがとうございます。




