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閑話 その他の勇者達 エピローグ1

またまた評価してくれる方がいました。

評価や感想・ブックマークは作者のエネルギーですね。


やる気がモリモリ湧いてきます(*^_^*)

 そこは血沸き肉躍る戦場だった。

多くの人が死に多くの者が悲しみを背負った。

 血色を失った肌は白を通り越して青くなっていたが、静かな寝息を立てている。

目の前で繰り広げられていた地獄絵図のことを思えば、今が彼女にとって一番幸せな時かもしれない。


「どうしてお前が」


 首と胴を切り離された男が、事切れる寸前述べた言葉は疑問だった。

現れるはずがない人物、消滅したと思われていた最強の存在、彼は彼女と出会うことで全てを思い出した。


「ごめんな雫、待たせちまったな。俺がお前を護るって約束したのにこんなにボロボロになっちまって」


 金剛コンゴウ マモルは全てを思い出した。

ランドだったときの記憶も残しており、アリス達のことも覚えている。

 自分がしてきた所業も覚えている、無くした記憶もこれまでの記憶も一つの人物の記憶として統合することに成功していた。

 それを伴い、希薄だと思えていた感情が湧き出てくる。

 白雪シラユキ シズクが愛おしい、雫を護るために生きたいと思った。

 雫を失って、雫を奪われて、異世界に召喚されて、金剛の中にある何かが崩れて行った。

 白雪というストッパーを失った金剛は溢れ出る力を抑えることができなかっのだ。

 金剛はここに来るまでに多くのことをしてきた。その手は赤く染まっていた。

それでも心のどこかで雫への想いがあり、なるべく殺さないようにしてきた。

 しかし、全部が全部殺さずにおれるほど世界は甘くない。

金剛の手は、雫を抱きとめている手は、血に染まっている。


 金剛の中で様々な思いが交差する。


 傷が癒えた雫が目を開ける。


「う、うん・・・」


 開かれた目に入ってきたのは、愛おしい人ずっと会いたかった人の顔だった。

少し肌が焼けて茶色くなっているが、黒い髪にツリ目で怖そうな顔、異世界に来る前よりも逞しくなった体に抱きしめられていることで分かる。

 彼の匂い、間違いないあの人が目の前にいるのだ。


「まもる?」


「ああ、雫。俺だよ。迎えに来たんだ」


 彼が私にだけ見せてくれる優しい笑顔、ああ、護だ。

私の護が帰ってきたんだ、何も考えられずに護の胸に飛び込んだ。


「護!護!!護!!!」


 夢中で彼の名前を叫び続けた、会いたかった。

 彼が死んだと聞いて信じられなかった。

世界が崩壊したように何もわからなくなって、悲しくて全てがどうでもよくなった。

 そのはずなのに彼は目の前にいる。

溢れる涙が止まらなくて、それでも確かめなければならない。


「私は死んだの?だから迎えにきてくれたの?」


「バカ、お前を死なせるかよ。俺もお前も生きてるよ」


 私の問いに護が優しく答えてくれる。

生きていた。生きていると信じていたが、それでも確かめずにはいられなかった答えがそこにあった。

  

 戦争の切っ掛けとなった二人の勇者は泣きながら、お互いのことを話し合った。

離れていた時間を取り戻すように、互いのことを話し合い共有していく。


 血沸き肉躍る戦場のど真ん中にできたお花畑に、戦場を駆け抜けてきた戦士達の毒気は抜かれていく。

 ルールイス王国は総大将を失い、カブラギ皇国もまた戦の象徴である水の勇者が戦線を離脱したことで、いつの間にか戦場は停止していた。


 誰となく剣を置き、疲れたと座り込む。

誰も戦争などしたくないのだ。

 悲しみを生み、得る物は少ない戦争など・・・


「これでよかったのか?」


 いつの間にか絶貴の隣に来ていた玄夢が絶貴に問いかける。


「よかったのだろう。美しき少女は帰る場所に帰った。我々の罪は彼女から彼を奪ってしまったことだ。だからこそ戦争の責任を彼女に負わせるわけにはいかない」


「お前がそういうならば俺はかまわない」


 普段寡黙な玄夢が絶貴を心配して、言葉を交わしにきたのだ。

玄夢の心遣いに感謝しながら、戦後処理に取り掛かからなければならない。

 敵の総大将を倒したのだ。

こちらが有利な和平交渉をするには今が一番の絶好の機会と言えるだろう。

 絶貴はもう一度、戦場の花となった一人の少女に視線を向けた。

彼女は心から笑顔を作り、そして思い切り泣いている。

その場所が自分の胸でなかったことに一瞬チクリと絶貴の胸が痛んだ。

 羨ましいと思ってしまう自分をおかしいと思いつつ、絶貴は戦後処理に向かう為、敵味方関係なく治療を施す指示を出した。

 

 この日をもってルールイス王国とカブラギ皇国の戦争は終結となった。

ルールイス側の総大将が死んだことで、ルールイス側の敗北と歴史に刻まれ和平交渉もカブラギ優位で進められた。

 カブラギ皇国からの要求は戦争の遺恨を忘れ、互いの領土を護ろうというものだけだった。


 戦争を始めたのはカブラギ皇国だったが、それを責めるなという意味が込められていたことはルールイス王国も理解してるのだ。

 

 民の中には不満が残ったが、それ以上国として二国が揉めることはなかった。


 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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