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大悪党になります 終

明日から少し間を開けます。


次で最終章になりますのでどうぞ最後までお付き合いください。

 アクは目の前で繰り広げられた光景を忘れることはできないだろう。

目の前で人が光を放ち爆散していく。

 肉が血が飛び散る光景を見て正気でいられる者がいるだろうか、それまで普通に笑っていた人々、戦争という名目で怯え逃げ惑っていた人々、それが今は何の変哲もない肉塊に変わっていく。


 しかも、肉塊は敵だけではなく味方も呑み込んでいく。

 助けたかった・・・誰も死なずに連れて帰りたかった。

 ブラックホールに包んで転移させられたのは半分だけで、兵の半分は見殺しにすることしかできなかった。

 眩い爆発はへーゲル城全てを包み込み、建物も人も何もかも壊していく。


 魔法を発動することで、アクの体にはダメージはないが、心は・・・・


 人は信じられない光景を見た時どうなるのだろうか、呆然と立ち尽くす、信じられないものを受け入れず見なかったことにする。

受け入れてなお気丈に振る舞うことが本当にできるだろうか、あなたは大切な人が死ぬ姿を受け入れられるだろうか、アクが選んだ選択、仲間を救えなかったアクの心は壊れた。


 魔力の暴走・・・


 強大な魔力を持つ者が、何も考えず自身の体が壊れることも厭わずに力を使うことがいかに恐ろしいことか、アクの魔力は吸収した人々から得ている。

その数は既に10万人を超えようとしていた。

 10万人分の魔力、それはいったいどれくらいのものだろうか、それは一つの国を滅ぼすのに十分な力があった。


 誰もいないはずなのにアクに対して声をかける者がいた。


「あ~あ、やっぱりこうなったね。君は魔に魅入られてしまった。僕のせいじゃないよ。僕は力を与えて力を貸しただけ、選択したのは君自身だ」


 アモン、アクの精霊であり魔王の因子を精霊化した存在、魔王も封印されている間に考えた。

 どうすれば力を手に入れられるだろうか、どうすれば封印されないだろうか・・・・結論は簡単だった、隠れて暗躍すればいい。

 自分を封印しに来る者にばれずに誰かの影に隠れて、その者の中で力を蓄えればいいと考えた。

 

「ここから君の体は僕の物だよ。今までご苦労様。そしてここまでありがとう。マスター」


 アモンはアクに近づいて唇を重ねる。

それと同時にアクの体から黒い魔力が放出し黒い光の柱を作り出した・・・


「スゴイスゴイ。そうだね。君にお礼をしないといけないね」


 アモンは思い出したかのように、一瞬消えて戻ってくる。

戻ってきたときには二人の人物に首を持っている。

 一人はへーゲル王の宰相でやせ細って神経質そうな顔をしている。

もう一人は醜く太り首だけでもかなりの重さを誇るへーゲル王であった。


「この二人が憎かったんでしょ。君が殺したくて仕方なかった二人を殺しておいてあげたよ」


 二人の頭を地面に投げ捨てて、アモンは笑う。


「これで思い残すことはないね。本当は君の大切な者達を犠牲にすれば覚醒してくれるかと思ったんだけど、その必要はなかったね。へーゲル王はいい仕事をしてくれたよ。だって優しいアクを相手に、もっとも効果的な方法で戦ってくれたんだから」


 アモンはこの戦いの間一度もアクを助けなかった。

いつものアモンならば、魔物やモンスターが現われればアクの盾になってくれた。 今回は姿すら見せなかったのだ、アモンは気付いていた。

アクの中に溜まってきていた力の存在に、戦争はアモンにとって、てっとり早く力を手に入れるために最適な狩りの場所だった。


「アクには感謝しているんだよ。これでこの世界を滅ぼせる。僕はね、もう世界征服なんて望んでいないんだよ。今願うのはこの世界を終わらせることだけさ。一緒に行こうね、アク」


 黒い柱を作り続けるアクをゆっくり抱きしめてアモンはアクに語りかける。

封印されて、もう一つアモンが思ったことは孤独だった。

 誰かと眠っている時間は幸せだった。

アクの人生は、アモンにとってもかけがえのないものになりつつあった。

 だからこそアモンは決してアクの人格を消さない。


 アモンは、アクと共に歩むことを選んだ。


 世界の終りを迎えるその時まで・・・・


いつも読んで頂きありがとうございます。

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