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大悪党になります15

明日からは閑話を挟みたいと思います。


明日に間に合わなかったらすいません。

 へーゲル王はご満悦で玉座にふんぞり返っていた。

アク達に大打撃を与えたのが自分の策だったことで、更なる策を考えるのが楽しみになっていた。


「ははは、やはり我こそ王の中の王。元帥の奴め、何が戦えば負けるじゃ。むしろ我々の圧勝ではないか。二手に分かれた敵の片方を撃退し、もう片方も甚大な被害を受けておる。もう勝ったも同然ではないか」


「王の言う通りです。よっ稀代の名軍師、王は王でありながら天才策士」


 宰相のヨイショにも磨きがかかる。


「お前はわかっておるの~そうじゃお前が本当のことばかり言いおるから、またも思いついたぞ。これで相手も一巻の終わりじゃ」


「さすがは王です。もう相手を倒す策が思いつきましたか、してその策とはどんなものなのですか?」


「お前は知りたがりよの~」


「教えてくださいよ。天才軍師のお~う~さ~ま~」


「仕方がないの~」


 王はニンマリと笑い、宰相に耳を近づけさるように言う。


「だからの~こうやって~ああやると~」


「なるほどなるほど」


 宰相は王の話を聞きながら何度も頷く。

謁見の間に控えている兵士達も耳を傾けていたが、何も聞こえてはこなかった。


「さすがは王様。王の考えに感服いたしました。私が責任を持って実行してみせますです」


「そうかそうか、ならばお前に全ての責任をまかせるとしよう」


「はは~必ずや王の策を成就させてみせましょう」


 宰相は王に一礼して、謁見の間を後にした。

兵士達も宰相に続き部屋を出ていく。


「くくく、害虫はこれで居なくなる。明日からはまた我が真の王となるための日々が始まるのよ」


 王はテラスに出て、世界を見通す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 宰相は謁見の間を後にして、宰相の証である緑のマントを脱ぎ捨てる。


「この国はもう終わりだ」


「宰相殿、いったいどんな策を王から授かったのですか」


 宰相と共に王座を出てきた兵士達は、宰相の後を追いながら問いかけ続けるが、宰相は目を血走らせたまま無言で歩き続けた。

 

「宰相」


 兵士は無言で歩き続ける宰相を追いかけ続けた。

結局宰相は何も告げぬまま宰相室へと入って行った。

 兵士達には宰相の部屋に入る資格などなく・・・・何も知らされることもなく宰相は無言を貫いた。


ーーーーーーーーーーーー


 アクは静かに城を見つめる。

目は暗く濁り、真っ黒な瞳に光は宿らない。

 

「マスター、ワシはお主の隣に立てておるのか」


 白扇は城を見つめているアクの後ろで、誰にも聞こえないような声で呟いた。

それは、この場でアクと歩んできた者達全てが感じていることだった。

 アクが目覚めてから城が目前に迫る。

ここまでの道のりを、ほぼアク一人で走破してしまったのだ。

 

 執拗に続く、女子供の人間爆弾は難民が現れると同時に、アクのブラックホールに飲み込む。

 妻子のために戦いに来た男や兵士も、悉くブラックホールに吸い込まれていく。

 敵が老人を盾にした布陣を引いて構えても、アクは瞬間移動したように敵の中心に移動して兵士や老人を全員吸収してみせた。


 いったい軍隊とは何なのだろう。

アクと呼ばれる仮面の軍師に果たして、軍が、仲間が、必要なのだろうか。


 白扇の心は、いや、アクについてきた者全てがアクへ共に行こうと行ってほしかった。

 自分達は必要なのだと言ってほしかった。


「いよいよ城が見えてきたな」


 アクの言葉は独り言なのか、誰も返事は返さない・・・・返せない。

それでもアクはただ城を見つめ続ける。


「入ろう」


 アクは振り返ることなく、城へと歩みを進めていく。

すでに城を護る兵士はいない、へーゲル王国を守る民の半分がアクに吸収され、また半分がバンガロウ王国の歩みに恐怖した。

 生き残った民達は、逃げ出そうと城の裏に集まっているのだ。

 へーゲル王を絶対に逃がす気の無いアクは、誰も逃げられない様に裏門には緑の霧を発生させた。


 一歩一歩確実に玉座に近づくアクに、その後ろにはルーとヨナだけが続いていく。

 白扇には軍の指揮を、サラにはリバーサイドの生き残りの手当てを、ケルイや獣人・亜人には眠っているへーゲル王国の民を片付けさせている。


 ゆっくりと開かれた扉の向こうに、二人の人影が佇んでいる。


「よくぞ来たな、死神軍師よ。我がへーゲルの王である」


 扉が開かれ、玉座の上からへーゲル王の声が響き渡る。


「・・・」


「なんじゃ言葉も発せられんのか、それとも我の威光に恐れ戦いておるのか?」


 へーゲル王はアクを目の前にしても、悪びれた素振りすら見せない。

隣に立つ宰相も下品な笑みを作ったまま黙っている。


「これだから下賤のやからは困るのじゃ」


「お前は誰だ」


 アクは目を見開き、目の前のいるへーゲルに問いかける。


「言ったであろう。我はへーゲル王だと」


「違う。いや仮に貴様がへーゲル王であったとしても、どうして王座にまだいるんだ」


「訳がわからぬことを、王が王座に座っているのは当たり前のことであろう」


 アクは違和感に気づいていた。

へーゲル王は姑息で卑怯、下衆なことを平気でやる相手なのだ。

 こんなにも正々堂々と居残っているはずがない。


 アクが気付いた時にはすでに遅かった。


 城を囲むように逃げ惑っていた人々が光り出したのだ。


「マズイ」


 アクは咄嗟に作れるだけの転移魔法を発動して、この島にいる獣人、亜人、そして仲間達の転移を一斉に発動する。


「アク様」


 それにはルーやヨナ・白扇やケルイも含まれている。

しかし、全員が転移することはできなかった。

 約半分が間に合わず、光の中に飲み込まれていく。

それと同時にへーゲル王も光り出したのだ。


「よくぞ来たな死神軍師よ。だが貴様もここまでだ」


 へーゲル王と名乗る影武者は、自らを爆発させて爆炎はアクを飲み込んだ。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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