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大悪党になります11

 毎度遅くなってしまい、すみません。

 ハッサン達が夜襲に受け退却したことを知らないアク達は、決断を迫られつつあった。

 敵が引いてしまったことで、陽動の役目を負っていたにも拘わらず、その役目を果たせずにいたからだ。

 日が昇ると、すぐに陣を払い場所を移動した。

相手に有利な地形にいては兵を損なうだけなので、兵隊にどこから攻められても見通しのきく場所に移動していた。

 

「白扇、皆に伝えてくれるか。進軍する」


「よいのか?こちらの人数は相手の10分の1にも満たないぞ」


「やるしかないだろ、ここで引いてしまってはバンガロウ王国のこれからに関係してくる」


「マスターがそういうのであれば我に異はない」


「なら頼んだ」


 白扇が天幕から出て行くとルーが入ってきた。


「隊長、いいの?」


「ああ、ここでずっと待機していても兵糧は尽きていく。なら先に進んでどこかの村を押さえた方が早い」


 アクにとっても苦しい決断だということはわかっている。

本来であればハッサン達と一丸になって当たった方がいいことだが、それは作戦を考える段階で終わっている。

 今回はダンに全てを任せて失敗した。それだけのことだ。

 今はハッサンもダンもいない。

ならばこの状況を判断するのは自分しかいない。

 サントンもそれを分かって託してくれたんだろ。

 

「今は動く。敵の軍師は勝つためならば何でもしてくるようだからな。どんな卑劣な作戦を採ってくるかわかならない。それは余裕がないとも受け取れるが、地の利は相手にあるんだ。少しでも有利な状況を作らなければならない」


 アクの言葉にルーはそれでも心配そうな顔をする。


「本当にそうなのですか?市民も関係なく壁にしてくるのですよ。国そのものが敵になっていて、10万全てが敵と言うことになるじゃないの。今までのような作戦を採ろうにも、ここはバンガロウ国でも味方の陣地でもない。策はあるの?」


「辛辣だな。ルーの言っていることは間違っていない。俺がしようとしていることは無駄に兵を傷付けることになるかもしれない」


「じゃどうして?」


「それが俺の役目だからだ」


「役目?」


「そうだ。俺はサントンを王にすると決めた。そのために必要なことをする。それが俺の役目だ」


「サントン様が羨ましいです」


「そんなことはないさ、どちらかと言えばサントンを巻き込んだのは俺だからな」


「いえ、それだけ主様に思われているのが羨ましいのです」


「サントンは親友だ。お前達は俺にとって大切な家族だ。それで勘弁してくれ。」


「・・・はい」


 ルーの頭を撫でた後、アクは進軍の指揮を執るために仮面を装着する。

それはアクが参謀として宰相として動くときの正装になりつつある。

 黒いフードを纏い天幕を出る。


「皆の者聞け~!!!」


 アクが天幕を出るなり、白扇が声を張り上げる。


「我らがマスターのお言葉だ」


 静まりかえる兵士達を一瞥して、アクが声を張り上げる。


「皆の者よ!敵は3万の軍勢に加え、人を人とも思わぬ残虐非道な作戦をとってくる外道の集団だ!そんな奴らをのさばらせておくわけにはいかない。何より我々とって10倍の軍勢など大したことなど無いだろう!我らの力、敵に見せつけてやろうじゃないか!」


「「「「「「おおおおおおおおおおぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉl!!!!!!!!!!!!」」」」」」


 兵士達の叫び声に満足したアクは、手を上げる。


「進軍開始!!!」


 アクの手が振り下ろされる。


 獣人達や亜人達、龍人族など中には初戦の鬱憤が溜まっている者が多くいた。

アクの言葉は溜まっていた欲求を叶えるのに最適な申し出だったのだ。

 獣人族は警戒を強め、敵からの奇襲に備え、鳥人や龍人族は空から警戒をすることにした。


「本格的な戦闘に入るとなると、勢いは今までの比ではないな」


 戦闘隊形に入ったことで活き活きとした表情をする者達に白扇は笑いが込み上げてくる。


「バンガロウ王国では我慢をさせたからな、戦闘では好きにやらせるさ」


 アクの言葉に白扇の目もギラリと戦闘モードに入っていく。


「警戒を怠るなよ。どんな方法で攻めて来るかわからないからな」


「わかっておるよ。まずは我らの力をマスターに見せるとしようかの」


 白扇はそういうと進軍の先頭へと移動していった。


 夜が訪れるまで進軍を続けたが、敵が現れることはなかった。

村を何度か通り過ぎ、夜に差し掛かったところで近くにある村に入り休憩を取ることになった。


「腕が鈍ってしまうわ。奴らめ出てこんとは拍子抜けもいいところだ」


 敵が現れないことに白扇が苛立ちを口にするが、アクの予想では夜襲か奇襲しか来ないと思っている。

 敵は正面から攻めることなど最初から考えていない。

 自身のテリトリーで自分達が有利になるようにしか、戦闘をしかけてこないだろう。

 そんな奴らなのだ、だからこそ昼は堂々と進軍することができた。


「今はそれでいい、だが夜に強い者達には警戒を強めるように言っておいてくれ」


「夜襲があるかもしれないということですかな。なるほど相変らず卑劣な奴らじゃな」


 白扇は楽しそうに笑って天幕を出て行った。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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