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大悪党になります2

一週間の休暇ありがとうございます。

ゆっくりとではありますが、書き始めたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。

 バンガロウ王国による世界征服宣言がなされたのは、アクとサントンが会談を行ってから三日後のことだった。

 バンガロウ王国は手始めに連合国の平定を宣言した。

それにより、シーサイド、リバーサイドの両国はバンガロウ王国の下に付くことを宣言し残りの二か国は様子見の構えをみせた。

 しかし連合国代表であり一番大きな島と国家を持つヘーゲル王国はバンガロウ王国の宣言を正面から否定した。


 ヘーゲル王国 謁見の間


「なんだこの文面は!ふざけておるのか」


 ヘーゲル王国国王、シュテーバル・ドグサ・ヘーゲル二十一世は怒り、臣下達に怒鳴り散らした。

 ヘーゲル王国は連邦の盟主として、レギンバラ大陸からも一目置かれている。

それ故ヘーゲル王はプライドが高く自尊心の塊でできている。

 自身が虐げられることなど考えられるのだ。


「王様、これはまぎれも無く我々ヘーゲル王国を蔑ろにした行為です」


 宰相であり、国のナンバー2のベルバル・ゴルジ・ブゼブルが王へ進言する。


「そうであるな宰相よ」


「はい。王様、これは我々に対する宣戦布告として受け止めるべきです」


「ちょっとお待ちください。戦争はまずいですぞ王様」


 王と宰相の間に入るように軍務元帥ヒューゲル・ミツイ・ショーバルが止める。


「なぜだ元帥、これは明らかな我への宣戦布告であるぞ」


「そうかもしれませぬ。しかし、現在セントセルス神興国を倒しアース大陸の獣人達を従えることを成し遂げたバンガロウに我々だけでは勝てませぬ」


「怖気づいたと言うことか、元帥」


 王はまるで汚物を見るような目で、軽蔑した顔を隠そうともせずに元帥を見る。

それでも元帥は言葉を止めようとはしない。


「王よ。私は軍人としてしか生きて行けません」


「それがどうした臆病者め」


「私は軍人としか生きて行けぬため、相手の力量を知ることができます。我々の力ではバンガロウ王国には及びませぬ」


 元帥は決して臆することなく、王への進言をやめなかった。

王にもし臣下の進言を聞く度量があったなら・・・のちの悲劇は生まれなかったかもしれない。


「貴様は反逆者だ。ヘーゲル王の名により命じる。反逆者シューバルを処刑せよ」


 後の世でヘーゲル王最大の過ちと言われる、発言となった。

名将シューゲル元帥の処刑は、王の見ている前で近衛隊長の手により静かに行われた。

 軍務に衝撃が走ったことは言うまでもない、最高司令官である元帥の死刑は、王に逆らう意味を分からせるのに十分な効果を表した。

 逆らう兵士はいなくなったが、軍の士気は地に落ちた。

ヘーゲル王はそれでも強硬にバンガロウ王国との対決を臨んだ。


ーーーーーーーーーー


 フェアリータウン、アクの家。


「また行ってしまうの?」


 裸で朝を迎え、エリスがガウンで肌を隠して起き上がる。

アクはすでに服を着込み、支度を終えている。

 昨日の晩は久しぶりの帰宅ということで、エリスの体を感じることで気持ちを落ち着かせた。


「すまない。バンガロウはこれから大変な時期に入る。いつ帰って来られるかわからないんだ」


「私もついていってはダメ?私も魔法が使えるわ」


「エリス、俺は君に人殺しはしてほしくない」


「皆には人殺しの手伝いをさせているのに?」


 エリスは最初からアクを支え続けている7人の少女のことを引き合いに出した。

7人の少女はそれぞれ別の種族であり、戦いを好まぬ者もいた。

 しかし、今ではアクの手足となってどんなことでもやってのける。

エリスはアクの手足となって働く、少女達が羨ましくもあり妬ましくもあった。


「彼女達にはそれしか生き残る術がなかった。だか、君には人殺しなどしてほしくない。平和な場所で待っていてほしいんだ。エリスは俺の、皆の帰るべき家なんだ」


「勝手な人、あまりにも帰りが遅かったら私待ってませんから。追いかけていきますからね」


「そうならないように早く帰るよ」


 アクはエリスを抱きしめてキスをする。

ヘーゲル王国からの返答は開戦やむ無しという意味が込められていた。

 そのためバンガロウ王国は準備していた軍団を侵攻させることを決定した。

 もちろんアクも戦いに赴く準備をしなくてはならない。

その前にエリスに会って一時の休息と、自分が人間であることの確認のために戻ってきたのだ。

 冷静に人を殺しているとき、アクは自分が人ではなく本当の死神になってしまったのではないだろうかと思うことがある。


「酷い顔。今から出陣する人の顔とは思えないわ」


 アクはエリスを抱きしめながら泣きそうな顔になっていた。

ずっと人を殺さずにいられればよかった。

 しかし、セントセルスでの戦いでは双方合わせて7万人もの人が死に、その7万人が死ぬ作戦を考えたのはアクなのだ。

 直接殺したのも同然と考えていた。


「すまない」


 アクはそのままエリスの膝に顔を埋めて、エリスに強く抱きしめられる。


「いってらっしゃい。私の愛しい人」


 耳元でエリスの言葉を聞いて、アクは顔を引き締める。

自分にとっての愛しい人を戦わせない。


 戦わなくていい世界を作る・・・



いつも読んで頂きありがとうございます。

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