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大魔王になります17

 レギンバラ王国内、謁見の間


「どうなっておる。どうして獣人を退けたと思ったらこんなにも問題が山積みになっておるのだ」


 レギンバラ王は次から次へと、やってくる問題に頭を悩ませていた。

獣人族を後少しまで追い詰め、アースに閉じ込めるところまではよかった。

 しかし、水の勇者が鬼人に敗北してしまい、そして鬼人族が水の勇者と共に国を作ると言い出して離反してしまった。

 闇の勇者は南の島攻略中に行方不明になり、光の勇者は報酬として土地を与えた途端、聖女として新興宗教を立ち上げ、風の勇者が光の勇者と共に新興宗教の教祖として君臨し出した。

 残ったのは火の勇者だけだが、火の勇者は水の勇者を説得するためカブラギ皇国に向かい、水の勇者との戦いに敗れて療養している。


 レギンバラ王国の最終兵器である勇者達が制御できなくなり、そこにきて三将軍をしていた将軍達の内、一人は謎の仮面をつけた者に殺され、一人は裏切りにより行方を眩ませて、行方が分かったと思えば自身の町を作っていた。

 しかし、将軍よりも危険な水の勇者と鬼人族共が、レギンバラ王国に反旗を翻す形でカブラギ皇国などという国を作ろうとしたのを成敗するべく強制召集を伝令に出したが、出した者は連絡が途絶えた。


 最後に残った将軍にカブラギ皇国討伐を命じたが、戦力として心もとない状態なのだ。


 人材不足に頭を抱えているレギンバラ王は、それでも一人で業務をこなしていた。

 レギンバラ王は一代でここまで登りつめ、王の強さを頼りに国を支えてきた。

そのため王が崩御しない限りは持ちこたえられると王は思っていた。


「恐れながら王様、人手が足りませぬ。人材登用を考えてはいかがでしょうか」


 内務大臣が王へ意見をするが、王は正直気が進まなかった。

 一から人を育てるなどできない王は自身についてこれる者しか重用していないのだ。

 いちいち選んで登用するのではなく、人材とは後から後から湧いてくるものだと思っていた。


「ええい、面倒だ。内務大臣である貴様に全て任せる。我が気に入るような人材を登用してみせよ」


 人材登用は内務大臣へ丸投げして、山積みになった書類の処理に追われる王に内務大臣は溜息を吐いた。

 勇者や将軍が離反したのも仕方がないのかもしれない。

それでも内務大臣が王国から出ていくことはない。

 現在王の次に権力があるのは自分であろうことを、知っている内務大臣は王の知らないところで好き勝手しているのだ。

 そんな都合のよい状況を捨てる者などいないだろう。


 内務大臣は自身の手の者を多数登用した。

それは王国に内務大臣派を作ることになり、また内務大臣と対立している外務大臣側としては面白くない。


「王、どういうことですか。内務大臣が好きなように登用を行なうせいで優秀な人材が集まりませぬ」


 外務大臣に指摘されて、初めてレギンバラ王が現状を見たとき、確かに使えそうな者は少なかった。

 ならばと今度は外務大臣に登用を任されば、今度は外務大臣派が多くなり二つの派閥は王宮内で鬩ぎ合うようになった。

 顔を合わせれば嫌味の言い合い、仕事そっちのけでどちらの派閥が権力を持つのかを争うばかりだった。


 王はこの現状を気付きつつも面倒の一言で放置していた。

しかし、それは新たなもめ事を呼ぶことになる。

 内務大臣が外務大臣を暗殺するために闇の組織を城の中に呼び込んでしまったのだ。

 彼らは古くから世の闇に生き、名前だけは知られていたが実在しない者とされていた。

 だがどこからか内務大臣が連れてきた闇の組織の者達は徐々に城に侵食し始めた。

 それは王の喉元まで迫ってきていた。


 王の間、王のプライベートルーム 寝室


「誰だ?」


 暗い闇のなか、気配を感じて王は目を覚ました。

王は将軍達と肩を並べるほどの剣の腕を持つ。

いかに闇の中に隠れようと気配を感じることはできる。


「寝ている間に済ませてあげようと思いましたのに、野暮な人ですね」


 月明かりの中、レギンバラ王の前に姿を現したのは、闇の勇者こと黒金クロガネ 飛鳥アスカだった。


「闇の勇者殿・・・」


 王は現れた黒金を不審な者を見るような目で見た。

闇の勇者である黒金 飛鳥は、最初から他の勇者に比べると何を考えているか読めない不思議な女だった。

 だが、目の前にいる黒金 飛鳥はドス黒いオーラを纏い、レギンバラ王に向ける殺気を隠そうともしない。

 自身の気持ちを前面に出しているのだ。


「王様。私、レギンバラ王国が欲しくなりましたの、だから死んで頂けませんか」


 黒金の目が猛禽類のような目になり、王に殺気を飛ばす。

王は身が縮む思いがしたが、王もここまで戦い抜いてきた猛者なのだ。

 必死に声を発する。


「誰か、誰かおらぬか?」


 王の声は夜とはいえ、王国の警備をしている騎士に届き3人の騎士が現われる。


「王様。どうされました」

「この者が我の暗殺を謀ったのだ、捕えよ!」


 王の言葉に騎士達が反応するが動こうとはしない。


「ふふふ。王様、すでに詰んでいるのですよ。あなたは」


 ゆっくりと歩いてくる黒金は、召喚された直後よりも二年の月日で成長した体が月明かりで照らされて妖艶な美しさを持つ女性になっていた。

 王も見惚れるほどの美しさに我を忘れた王は、体と胴が離れる瞬間まで呆けていたという。


 レギンバラ王及びレギンバラ王国の最後の日となった・・・・

いつも読んで頂きありがとうございます。

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