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大魔王になります16

 ダイコクの疑惑はすぐに解けることになった。

砂丘の圧倒的な魔力、知識、行動力にダイコクも魅せられていく。


「ガイル、あいつは何者なんだ」

「さぁな。ここでは素性なんて気にしない。皆がそれぞれ自分たちにできる仕事をするだけだ」

「そうか・・・それもそうだな」


 ダイコクはガイルという顔に傷をつけた男が嫌いではなかった。

むしろ好きだといってもいいだろう。

 人懐っこい笑みを持ち、スッと人の心に入ってくる。

入ってくるが嫌な気分にならない、こんな奴もいるんだなとダイコクは感心しつつも仲間に歓迎してもらえた喜びを感じた。

 ダイコクが加わったことで、村は発展した。

それは他国の情報が入ってくるようになり、行商しているダイコクによって商品が入ってくるようになったことで、人との交流が持てるようになったのだ。

 最初は7人から始まった村作りは、ダイコクの加入で本当の町作りになりつつあった。


 村を見下ろせる丘の上で、ガイルが村から町に変わろうとしている景色を見下ろしていた。


「どうだ。夢が叶うっていうのは」


 そこに砂丘がやってきて声をかける。


「悪い気分になるかよ。最高に幸せだ」


 ガイルはいつもの厳つい顔をしているくせに人懐っこい笑みを作る。

そして恥ずかしげもなく幸せだと言った。

 しかし、その顔には幸せだけでは言い表せない思いがあった。


「俺もあんたに出会えてよかったよ」

「なんどよ急に、気持ちワリいな」

「正直この世界に絶望していた。そこにあんた達に出会って生きる意味みたいなのを手に入れた」


 砂丘の言葉に茶々を挟まずにガイルは聞き続ける。

砂丘もガイルならば胸の内を開いてもいいと思った。


「今日、ダイコクから東にカブラギ皇国という国ができたと聞いた。カブラギ皇国は皇帝という王の代わりのものが言葉を作り、王を立てたようだ」

「そうか、俺に似た考えの奴がいたんだな・・・」


 ガイルは自分以外にもレギンバラ王国に反旗を翻した者がいることに喜びを感じていた。

 これから町に発展していく。

それは王国に狙われる恐れが出てくるということだ。

 町を守るためにガイルはどうするべきかを悩んでいた。

だが、カブラギ皇国の設立をきいてやる気が湧いてきた。


「砂丘ありがとうな。俺は嬉しさと不安とで、正直どうすればいいのかわからなくなっていた」


 砂丘は自分の胸の内を話して、ガイルの不安を少しでも和らげてやりたいと思った。


「もう大丈夫だ。俺は俺が始めたことを最後までやり遂げるよ」

「そうか、なら子供の責任もとれよ」

「子供・・・子供だと!」


 砂丘の何気ない言葉にガイルが驚きの声を上げる。

ガイルは最初からガイルを支えていてくれていたナイジャとの間に子供を作った。

 ナイジャは村で酒場兼宿屋を営んで商人や旅人を受け入れている。

ガイルは子供の話は聞かされていなかったらしく狼狽していたが、ガイルの顔に不安は一切消え去った。


「なんでお前から聞かされなきゃいけねぇのか知らねぇけどな。最高の気分だ。俺が親父になるのか・・・」


 ガイルは国を作ることに本腰を入れようと思った。

産まれてくる自分の子供に恥ずかしい父親にはなりたくない。


「なぁ砂丘、俺は国を作る。そのために村に名前をつけようと思う。それが俺達の国の名前だ。だからお前に名前を付けてもらいたいんだ」

「俺でいいのか?」

「お前がいいんだ。お前がいなかったら俺達は水を見つけられたかわからない。お前がいたから俺達は村を作ることができた。本当はお前の名前をそのままもらってもいいくらいだ」

「それは勘弁してほしいな。そうだな。アスガルトなんてどうだ」

「どういう意味だ?」

「明日があるって意味を込めた」

「明日があるでアスガルトか、ダジャレかよ」


 ガイルは砂丘の言葉に一瞬キョトンとした後、笑い出した。


「ダメか」

「いいや、俺達にはピッタリの名前だ。ありがとうよ砂丘。こうしちゃおれねぇ。早くナイジャの奴にも教えてやんなきゃな」


 ガイルは子供のこともあり家路を急いだ。

そんなガイルの後姿を見ながら砂丘は一人満天の星空を見上げる。


「この平和がいつまでも続けばいいのに」


 それは砂丘の心からの本心である。


 カブラギ皇国が設立したのを聞いたとき、正直胸が熱くなった。

皇帝の名前にカブラギ ゼツキの名前を見て少し涙した。

 白鬼は砂丘の手を受け取り、今は皇帝として羽ばたいた。

砂丘は鏑木に恨まれていると考えている。

 勇者であることを隠し、鬼人達を苦しめた奴として、それでも砂丘は彼らが大成したことを心から喜んだ。


「バカ弟子。よくやった」


 満天の星空の中、誰にも聞こえない声で砂丘は白鬼のバカ弟子、鏑木 絶貴のことを誇りに思った。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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