大魔王になります14
感想ありがとうございます。
しばらくチェックしてなかたったらブックマーク200人突破してました。
本当にありがとうございます(#^.^#)
これからも頑張りますので、生暖かい目で見て頂ければと思います。
黒い黒い闇の中、どこからか聞こえてくる声。
「我の者になれ」
それは黒く歪んだ自身の思想にとても心地よかった。
その者の声に従って身を委ねると体中に力が漲ってくる。
「そうだ。お前と我は二人で一人。我らは共存体なのだ」
声を受け入れられたことへの喜び、女の体に覆いかぶさる。
黒い影が女を覆い尽くすと女の意識はそこで途切れた。
「全ては我がこの世界に体を得るため」
女の体に入った影は女自身に成り変わる。
黒い髪に黒い瞳、彼女が人であった時、彼女は黒金 飛鳥と呼ばれていた。
闇の勇者 黒金 飛鳥であった者は薄らとした笑みを浮かべ、闇の中に消えていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
赤い荒野に夕日が沈むのを眺めながら、砂丘 修二は焚火を眺めていた。
乾燥した大地は寂しく何もない。
水も草も何もない赤い荒野で砂丘は一人だった。
白は断固として付き従うことを望んでいたが、彼女は元々水の精霊が具現化したものだと砂丘にはわかっていたのだ。
そのため彼女がカブラギの地を離れると言うことは、その土地の水を枯渇させる恐れがある。
それはこれからあの地で国を作る者達にとって死活問題になる。
苦労を強いることは極力避けたいと砂丘の思いやりだった。
そのため白にはあの地に留まり、彼らを見守ることを頼んだ。
悲しんだ白を砂丘は、永い眠りにつかせることにした。
パチパチと火花が飛び散り、砂丘の顔を照らす。
「出てきたらどうだ」
砂丘は岩陰に隠れている者達に声をかけた。
じっと見られていると言うのも居心地の良いものではない。
「へへへ、気づいていたのか兄さん」
顔の半分が斬り傷がついた男が姿を見せる。
服装はお世辞にも綺麗とは言えない格好ではあるが、見えている体の部位は鍛え上げられ、彼が戦士であることがわかる。
「何か用か?」
「いや。食い物とか持ってないかと思ってな。俺達もレギンバラ王国が嫌で逃げてきたんだが、手持ちの食料が尽きてしまってな」
「盗賊か」
「おいおい。俺達はそんなチンケもんじゃねぇぞ。ただ分けてほしいとお願いしてるだけだ」
「お願いねぇ~」
砂丘は周りに数人の気配を感じながら、どうしたものかと考える。
彼が言っていることは嘘ではないだろう。
ただ、彼の後ろからこちらを窺っている者の中には殺気を込めている者もいる。
「お前の名前は何ていうんだ」
「俺か、俺はガイルだ。なんだ突然」
「ガイルか、俺はサキュウと言う。ガイルの仲間には俺に敵意を持っている者がいるようだが・・・」
砂丘はワザと名乗り合うことで警戒を解いてから、ガイルに注意を促す。
ガイルも前に出たということは、他の者に頼られているということなのだろうと思っての砂丘の配慮だった。
「おっ、そこまでばれてたのか、こりゃお手上げだな」
ガイルは悪びれない態度で、頭を掻きだす。
「全部で5人か、どうする?」
改めて砂丘は数を数えてガイルを見る。
「お~い、お前ら出てこい」
ガイルの声に反応するように男女5人が姿を見せる。
一人一人年齢はバラバラで、体のどこかに傷がある。
「ガイルどういうことだい」
ガイルの次に年を食ってそうな女がガイルに詰め寄っていく。
「こいつはダメだ。お手上げ」
「いったいどういうことなんだい」
女は砂丘を見る、砂丘は見た目は18歳の少年なのだ。
6人でかかれば余裕で倒せる相手にしか見えない。
しかも自分達の代表として話に出て行ったガイルは、魔法も使えて戦士としても王国で将軍と同等だと言われるほどの手練れだったのだ。
「こいつには勝てない。むしろこいつに助けてもらった方が賢いってことだ」
ガイルの言葉を聞いても訳が分からず、女が首を傾げる。
「なぁサキュウ。これで全部だ。どうだ」
ガイルの態度に全員黙ったまま砂丘を見る。
「そうだな。まぁいいだろ」
砂丘の言葉に焚火の前にガイルが座る。
「ほら、お前らも座れよ」
ガイルの行動についていけない5人が呆然としている。
「いいから座れ」
ガイルが強引に焚火を囲むように座らせる。
「待たせたな」
ガイルが改めて砂丘を見て頭を下げる。
「いい加減説明しておくれよ」
先程の女が我慢できずにガイルに詰め寄る。
「ハァ~お前はまだわかんねぇのか」
ガイルはここまで来てわからないのかと頭を掻く。
しかし、女以外の4人も首を傾げている。
「お前らまだまだだな。こいつは俺が100人いても勝てないよ」
ガイルの言葉が理解できずに全員が砂丘を見る。
ガイルは一目見たときから砂丘が只者ではないことがわかった。
そのためガイル自身も砂丘を試すために殺気をぶつけてみた。
殺気は砂丘をすり抜けていくようで肩透かしを食らったが、自分の殺気をすり抜けさせるだけの器量があるということは遥かな高みから自分は見られているのだと理解できた。
「あんたが言うなら間違いないんだろうね」
女もやっと納得したように顔をすると他の4人も頷きあう。
「ほう。信頼が厚いんだな」
意外なガイルの人望に砂丘が言葉を発する。
「うるせぇよ。そんなことより助けてくれるのか」
砂丘は右手を上げる。
すると地面から6人分のコップが出現して、コップの中に水が注がれる。
「なっ、魔法を二つも」
全員が驚きの声を上げる。
「俺が今からすることにいちいち驚くな」
砂丘は釘を刺してから、地面に触れる。
何かの種を地面に植えて力を込める。
すると地面から芽が出て、芽は木になって大きく成長していく。
成長した気にはリンゴの実が出来上がる。
「食え」
砂丘はリンゴの実を一つガイルに投げる。
ガイルはもう何が何かわからなくなっていたが、空腹と目の前で起きた奇跡を天秤にかけて食欲を優先した。
口にリンゴを含むと口の中に甘い果汁が広がり、空腹を満たしていく。
「うっめ~!お前達ももらえもらえ」
他の5人にも勧めながらガイルは両手にリンゴを持って齧りつく。
今まで食べたどんな食べ物よりも甘くて瑞々しい。
ガイルの様子を見て空腹を我慢していた5人がリンゴの木に群がる。
木には5人が食べてもまだまだ実がなっているので、慌てることはないのだが、言っても無駄だろうと砂丘は黙って見守ることにした。
「本当に助かった。ありがとう」
一通り食事を終えてガイルがお礼を言いながら頭を下げる。
それにならって他の5人も頭を下げる。
「気にするな。久しぶりに人と話した気まぐれだ」
砂丘は目の前に座るガイルと言う男を少し気に入った。
「がははは。お前良い奴だな。俺はお前を気に入ったよ。どうだ俺達と国を作らないか」
「国?」
「そうだ。俺はこの荒野で水を掘り当てて国を作りたいと思ってるんだ。お前が協力してくれるなら俺の夢も早く叶いそうだ」
ガイルが語るのは夢だと言われても仕方がない。
砂丘達がいるのは行けども行けどもどこまでも続く荒野なのだ。
それも赤い荒野は粘土のような粘着性があり、水分を見つけるのはほぼ不可能だと言われている土なのだ。
「お前はバカか」
砂丘が笑顔でガイルに問いかけるとガイルにニヤりと笑う。
「おう。バカだ。悪いか」
しばし二人は見つめ合い笑い出す。
「いいだろう……お前についていくよガイル」
「よし。食料は任せたぞサキュウ」
二人は焚火越しに握手を交わす。
5人は砂丘が出した、リンゴの味が忘れられず反対する者はいなかった。
いつも読んで頂きありがとうございます。




