大魔王になります13
過去編?どうなのでしょか?感想などいただければ嬉しく思います(*^_^*)
騒然となる鬼人達、水の勇者 時東は自分は告げることは告げたと顔を逸らす。
「どういう事だよ」
白鬼 鏑木 絶貴が声を荒げて、砂丘に詰め寄る。
他の鬼達も思いは同じで詰め砂丘を囲んでいる。
しかし、砂丘の前に白が立ちはだかる。
「退けよ。白。俺達はそいつに話があるんだ」
「主様に危害を加えようとする者を通すわけにはいきません」
「白。構わないから下がっていろ」
「しかし・・・わかりました」
白が砂丘の言葉で後ろに控える。
しかし、鏑木達への警戒は緩めない。
「話とはなんだ、何が聞きたい」
「はぁ~何が聞きたいだ?ふざけるな、お前は全てわかってたんじゃねぇのか」
「だから何をだ」
「何をって・・・戦争をだ」
「だからどうした。俺がわかっていたからと言って何ができる」
「あんたなら・・・あんたの力があるなら俺達を鬼人族を救えたんじゃねぇのか」
鏑木の叫びは同胞を失った悲しみと、どうしようもない他力本願なことを言っている自分への葛藤が怒りとして言葉に表れていた。
「バカ弟子。お前は力を得た。それで誰か救えたか、救うとしてどうやって救うんだ」
「それは・・・でもあんたなら何とかできたんじゃないのか」
「甘えるな。俺は神ではない。絶対なんて言葉は存在しない。戦いを選んだのはおまえらも同罪だ」
「どういう意味だ」
「お前達は逃げることもできた。だが戦争を選んだのはお前達だ」
「それは・・・だが自分の故郷を奪われるなら戦うのが当たり前だろ」
「当たり前だと・・・やっぱりお前はバカだな。当たり前などない、故郷を奪われてもお前達は生きることはできた。だがお前達は戦って死ぬことを選んだんだ。その戦いが自分達にとって必要だと思ったから戦ったんだろ。そこに他人の入る余地などない」
砂丘の言葉に鬼人達は何も言い返せなかった。
水の勇者は逸らしていた顔を上げる。
「そんなこと詭弁よ。あなたなら私達を救えたはずよ。この世界に来た私達を導くこともできた」
水の勇者の目には涙が溜まっていた。
「私は・・・あなたの言葉で悩まされた・・・獣人も亜人も龍人も人だって・・・あなたが言ったから、私は人を殺しているんだと・・・」
ポツポツと話す言葉に鬼達は何も声をかけられなかった。
「お前達は強くなる必要があった。そして強くなった後は選ぶ力もあった。そのためのヒントも与えた、そこからは自己判断だ。人のせいにするな」
水の勇者は何も言わず、咽び泣いた。
誰も砂丘を責められる者などいなかった。
砂丘の言葉に甘えは一切無く、その正しさに黙ることしかできなかった。
「お前達には失望した。10万の軍勢も追い返した。これ以上お前達にしてやる義理もない」
砂丘が話す言葉に鬼達は段々と驚いた顔になっていく。
「水の勇者を撃破したことで、別の勇者が攻めて来るだろうが、もう俺は知らん。勝手にしろ。死ぬか逃げるかはお前達が決めることだ」
砂丘が鏑木を見る。
「お前との契約も終了だ。お前に差し出す手はもうない」
暗く冷たい砂丘の目に鏑木は何も言い返せなくなった。
そして自分が如何にバカな行動をしたのか、悟った時にはすでに砂丘は闇に消えていた・・・
後の白鬼、鏑木 絶貴は獅子奮迅の戦いをしたと言われている。
水の勇者、時東 椿と結婚して、カブラギ皇国の建国を実現させた。
そして彼は初代 カブラギ皇帝として言葉を残した。
土の勇者によって鬼人族は苦労を強いられた、土の勇者だけはカブラギに近づけるな・・・
絶対に土の勇者にだけは甘えてはならない。
彼は最高の恩人である。土の勇者がこの地を踏むときは最高の持て成しと最高の国を見せることを誓う。
初代が遺したこの言葉は時代の流れと共に最初の二文だけが残ることとなる。
それはカブラギ皇国にとって土の勇者への憎しみとなり、歪んだ思想になっていく。
歴史とは都合よく改竄されていくものである。
本当の気持ちは残りの三文に込められていると言うのに・・・
いつも読んで頂きありがとうございます。




