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大魔王になります11

 息絶えた将軍を抱えたまま、砂丘は重要な戦いを見下ろしていた。

砂丘にとって宙に浮くなど造作もないことなのだ。


「バカ弟子、お前の力を見せてみろ」


 眼下で戦う勇者と白鬼、勇者はレイピアを抜き、顔前に構えて攻撃態勢を取る。

 対して白鬼は武器も構えずに両手を合わせて目を瞑っている。


 先に動いたのは白鬼だった。目を開き両手を開く。

両手からは青と白の龍が出現し、レイピアを構えた勇者に襲い掛かる。


「水魔法と光魔法を同時に使うなんて」


 勇者は驚きながらも一瞬で態勢を整え、自身の魔法で鷹を作り出す。

氷でできた鷹は青い龍に襲い掛かる。

 青い龍と白い鷹が臨戦態勢に入り、レイピアを持って白い龍の攻撃を弾き返す。

 もちろんレイピアには魔力を注いで強化を施している。


「双龍をモノともしないか、だが俺の攻撃はその二頭だけではないぞ」


 白鬼は自身の背中から巨大な金棒を取り出す。

トゲトゲしい金棒の重みを感じさせないほど白鬼は自在に金棒を操り、白鬼は跳躍する。


「いくぞ」


 白鬼が空中で勇者と対峙する。

金棒とレイピアが鍔迫り合いを始めた。


「ほう、その細い剣で受け止めるか」

「いくら固い金棒を使おうと私の魔力で強化した剣は折れません」


 何合も打ち合っている内に、勇者は囲まれている事に気付いた。

白鬼が参戦したことで、二頭の龍により鷹が蹴散らされていた。

三方向から囲まれる形になった勇者は、それでも一切怯まない。

 白鬼が手を挙げて合図をすると二頭の龍が勇者に襲い掛かる。


「スノーブレス」


 勇者が言葉を発すると白い風が起こる。

スノーブレスに触れた二頭の龍は触れたところから凍り付いていく。


「なっ!」

「あなたが二種類の魔法を使おうと私の水の魔法には勝てません」


 勇者は凍りついた龍をレイピアで斬りつける。

凍った龍は簡単に砕けて落ちて行った。


「簡単にはいかないな」


 白鬼は砕けて落ちた龍を見ても絶望はなかった。

すでに二頭の龍達は一度、圧倒的に負けているのだ。

 スノーブレスは龍を攻撃した威力をそのままに白鬼を襲う。

触れれば氷ついてしまう風を白鬼は水の壁を作って防ぐ。


「ほう。北風を水で防ぐか、同じ属性ならば防げるとでも思ったのですか」


 勇者は白鬼の判断を嘲笑うかのように、スノーブレスは水を凍らせて壁を破壊する。


「時間が稼げれば十分だ」


 白鬼も勇者の技が水の壁で防げるとは思っていない。

跳躍していた空中から降りて、炎に包まれた丘に着地する。

 勇者も空中に跳んだことで、軍の様子が見えた。

目の前にいる者を放置すれば軍に甚大な被害をもたらす、ここで自分が倒さなければならない。


 勇者は丘に下りた白鬼を見る。

白鬼は地面に手を置いて目を瞑る。


「天照」


 白鬼の体が発光し、スノーブレスを飲み込む。

スノーブレスに似た性質の天照は、相手を光に飲み込み消滅させる。


「なっ!私のスノーブレスを」


 光はスノーブレスを飲み込むと消滅する。


「どうだ?この技はまだ完成してないが、いつかあの野郎に食らわしてやるんだ」

「魔法では互角と言うことですか、ならば」


 勇者は白鬼との魔法勝負で互角と感じ、自身の体を強化して急速に相手に接近する。

 落下の速度と合わさりレイピアが白鬼を襲う。

白鬼は間一髪で避けることに成功し頬を掠めるだけに収めた。


「うぉ!」


 勇者の不意な攻撃に白鬼は驚いて後ずさる。


「なんだよ、いきなり」


 白鬼も金棒を構え直す。

しかし、強化して戦闘経験も豊富な勇者に白鬼が押され始めてくる。

勇者は優勢を悟り、スピードを加速させていく。

 白鬼の体には無数の傷が浮かび始めた。


「だ~~~~~~ウザい」


 致命傷がないとはいえ無数にできた傷に苛立ちを覚えて、両手を勢いよく閉じる。


 パン!!!


 勢いよく閉じられた両手が音を鳴らす、その音は音速で動く勇者の動きを一瞬だけ止める。

 戦いの中での一瞬、それは勝負を分ける一瞬。


 勇者が攻撃に転じるために体の向きを変えようとして勇者は膝を突く。


「はぁ~なんか勝った気がしねぇ、でも俺の勝ちだ」

「何をした?」

「師匠の受け売りで悪いけどな。俺の使う技は魔法じゃねぇ。シノビの極意と言って自然を使った技なんだ。そしてシノビの極意の本質のところは、相手に悟られずにシノビとして最大級の成果を出すことなんだそうだ」

「シノビの極意、最大級の成果」

「おう。お前は接近戦を選ぶと思ってた。だから罠を仕掛けたんだよ。天照はそのための囮も兼ねていたってことだ。気付いていたか?この辺が湿っぽくなってるって」

「湿っぽく?」

「そうだ。少しずつお前の体に巻きつくように俺のシノビの極意が発動していたんだよ」

「シノビの極意・・・」

「お前の体は俺に攻撃を仕掛ける度に段々重くなり終いには動かなくなる。」

「くっ」


 いつの間にか炎の壁は消えていた。

しかし、丘から見下ろす光景はもっと酷い光景だった。

 食料や物資を乗せた馬車は燃えてほとんどがなくなり、多くの兵士がいるせいで迷路に閉じ込められる形になった部隊が数多く倒れている。

 遠巻きからは判断できないが、何かと必死に戦いを繰り返している者もいる。


 甚大な被害を受けた軍は、軍としての機能を全て失っていた。


「どうしてこんなことに」

「言っただろ。お前は俺に勝てないって」

「あなたを絶対に許しません」


 顔を上げる水の勇者 時東 椿の前に白鬼、鏑木カブラギ 絶貴ゼッキは勝ち名乗りを上げる。

 それは決して簡単なことではなかったことが彼の全身から流れる血液の跡が物語っている。


「お前を捕虜とする」


 鏑木は最後の力で時東を気絶させて連れて行く・・・・

いつも読んで頂きありがとうございます。

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