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大魔王になります10

砂丘と鏑木が勇者と対峙している間に、10万の軍勢を足止めするため八人はそれぞれの役目を全うしていた。


 八人はそれぞれ砂丘から名前をもらっている。


 赤鬼の少年・アカ

 赤鬼の少女・ベニ


 二人は兄妹であり、それぞれ炎と土の二つの属性を得意としている。


 青鬼の少年・アオ

 紫鬼の少年・ムラサキ

 緑鬼の少年・ミドリ


 三人はそれぞれ一つの属性だけに特化した術を使う。


 アオイは水、ムラサキは風、ミドリは土を得意としている。


 双子の黒鬼の少女達、クロとコク


 二人は闇属性を得意としていて、それぞれ他にも二つ、合計三つの属性を使いこなす。


 最後に一番小さく、そして一番多くの属性を使いこなすことができるオレンジ。

 彼は幼いながらも才能に溢れ、4つの属性を使いこなすことができる。


 鏑木を守る八人の子供達は、一カ月の間に多くのことを学び強くなった。

そして彼らには砂丘から重要な任務が与えられている。

 八人はそれぞれ分かれて、東西より軍を攻め立てる。

東からはカラフルな五人がシノビの極意を発動させる。


 水は蒸発させ霧を作りだし視界を奪う。

風は霧を運び、10万の軍勢を全て覆い尽くしていく。

土は大地を盛り上げ道を作り、10万の軍勢が分断されていく。

迷路のように入り組んだ道が完成していく。

 闇は人を惑わし幻覚を作り出す、心を蝕み精神を崩壊させる。


 全て自然の力によって作り出されたシノビの極意が、10万の軍勢に襲い掛かる。

 10万の軍勢は突然降りかかった自然現象に成す術もなく戸惑い慌てふためく。


「上手くいったな。アオ」

「おう。ミドリ大丈夫か、今までで一番デカい仕掛けだろ」

「大丈夫・・・でもお腹減った」

「これが終わったら師匠に腹いっぱい食べさせてもらおうぜ」


 三人組は大きな仕事を終えても、それぞれの仕事に綻びが出来ないように監視を続ける。


「姉さん、大丈夫?」

「コクちゃんしんどいよ~」

「え~ほとんど私がしたんだけど、何がしんどいのよ」

「え~だってコクちゃんは私のイメージを具現化するだけじゃない。私はずっと考えながらやってるのよ」

「確かにイメージは姉さんだけど私が具現化したんだから私の方が大変よ」

「そんなことないわよ。イメージする私の方が大変よ」


 二人の黒鬼は言い合いをしているが、迷路のいたるところに怪物が徘徊して兵士達を脅かしている。

 怪物は、幻ではあるが実は木を媒介にしているので実体はある。

兵士達は森の木を相手に何度も斬りつけているのだ。

 二人は喧嘩をしながらも、仕事はキッチリとこなしているのだ。


 西側からは赤鬼が炎を纏い、食料や物資を焼き払っていく。


「兄さん。私の方が三台多く馬車を燃やしましたよ」

「何を言ってるんだ、妹よ。俺の方が多く武器を燃やしたぞ」

「あら、私と競うと言うの?兄さん」

「負けるはずがないが、挑むと言うなら受けて立つがな」


 二人は楽しそうに食料と武器を乗せた馬車を重点的に燃やしていく。

二人の役目は、相手が撤退しなくてはならない状況を作るのが目的なのだ。

 炎はシノビの極意で無限に増えていく。


「なんなのだ。この炎は?」

「わかりません。消しても消してもどんどん炎が」


 兵士達は物資を守ろうと奮闘するが、視界の悪い状態で火元の特定ができない。

 兵士達が炎を消し終えたときには、食料も予備の武器や防具も全て灰になっていた。

 小高い丘の上を見上げるようにオレンジ鬼の少年は姿を消していた。

炎の属性で炎の壁を作り、土の属性で自身の姿を同化させて消している。


「はぁ~なんで僕がこんな地味な役なんだ。確かに僕が一番潜入とかしてもばれないけど、天才っていうのも苦労が多いよ」


 独り言を言っている少年に気づくものはいない。


 戦場はすでに混乱を極めていた。

本来司令官が場を納めるものではあるが、ここには最高責任を負うべき大将の姿はない。

 さらに大将と同等の権限を持つ、水の勇者も姿が見えない。

あまりにも大きな力に頼っていた軍は、その力を失ったとき脆く崩れ去る。

 指揮系統は上手くいかず、率いてくれる者もない状態では軍は軍として成り立たない。


 砂丘の思惑はたった八人の少年によって実行され、たった一人の死人も出さないまま成功を収めた。


ーーーーーーーーーー


「ここは?」

「すいませんね。こんな手荒な真似をしてしまい」

「礼儀正しいが、微塵も謝罪の気持ちを感じないね」

「そうですか、今から命を散らすあなたには本当に申し訳ないと思っていますよ」

「やれやれ。私も甘く見られたものだ。お主が誰かは知らぬが我を倒したいなら勇者は三人は連れてきてもらわねば困るな」

「あなたは勇者三人相手でも戦えると?」

「戦い生き延びるだけならできるでしょうな。勝つだけが戦いではないのですから」

「食えない人だ。だけど間違えたな」

「間違えた?」

「ああ。俺は勇者三人より強い」


 フードを被っていた男は将軍の前でフードを脱ぎ捨てる。

将軍は目を見開き、彼の言った言葉を理解する。


「貴様は!!!どうして貴様がここにいる、土の勇者よ」


 将軍は自身の死を覚悟した。


 だが、一秒でも長く目の前の化け物を足止めすることだけに専念することに命を費やそうと思った。

 そうすれば相手が誰であれ水の勇者が倒してくれるだろう。

彼女も目の前の男ほどではないが、化け物と呼ばれる存在なのだ。


 将軍が思ったことは一つだけだった。


彼女と目の前の男を会わしてはならない・・・

いつも読んで頂きありがとうございます。

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