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大魔王になります7

 レギンバラ王国王城で祝賀会が開かれていた。

獣人を退け、レギンバラ王は中央大陸のほとんどを手に入れる一歩手前まできていた。

 残すは南の島国と獣人達の母国アース大陸のみとなったのだ。

祝賀会と同時に最後の決起集会が行われることになっている。


「皆の者よ。よくぞここまで我がレギンバラの為に活躍してくれた。皆が英雄である。そして異世界から、我々を救ってくれた勇者達にも感謝を述べたい。彼らが獣人族の幹部を倒してくれなければ現在も苦戦していただろう。こんなにも早い決着は望めず、戦いは長引いていたことだろう。本当に皆の活躍があってこそ、レギンバラの領地を広げられることができた。今日は大いに飲んで騒いでくれ」


 王の話が終わり、音楽が鳴り始める。


「よう、こんな壁の隅で何してるんだ?」


 時東の前に天辰がやってくる。

天辰は何かあるたびに時東を構うので、周囲では公認のカップル扱いになっていた。

 しかし、時東自身にその気は無いらしく、いつも天辰が袖にされる。


「いえ、戦いが終盤に向かっているのはわかっているんです。だけど考えてしまって……戦争が無くなるのは喜ぶべきことです。でも土の勇者さん砂丘さんが言っていた言葉が頭から離れないんです」

「ああ。同じ人を殺して何も思わないのかってやつか」

「はい。私達は獣人は人ではないと、この世界に来た時に教えられました。ですが戦っていくうちに人間と変わらず、他を守り、他の為に戦う姿を見て疑問に思ってしまうんです」

「まぁ考えても仕方ないんじゃないか」

「どうしてですか?」

「それこそもう少しで戦いが終わるからだ。俺達はこの手で多くの獣人を葬った。幹部の奴らは本当に武人と言っていい奴らもたくさんいた。だけど勝たなければならない戦いだった。お互いに正義があって、俺達はレギンバラの人たちを選んだってことだろ?」

「そうなのかもしれませんね。天辰さん、あなたと話していて初めて有意義だと思いました」

「おいおい。いつもはどう思ってたんだよ」

「いつもは、正直めんどくさいと思っていました。でも今日の話を聞いて、天辰さんもちゃんと考えているんだと思いました」

「はぁ~俺はこれでも年長者よ。もう少しそこんとこわかってほしいね」

「すいません。いつも陽気にされているので、つい・・・」

「まぁ、いいけどね。今日は時東ちゃんに見直してもらえたわけだし」

「はい。見直しました」

「おっ素直だね。まぁ気が向いたら街へデートでも付き合ってよ」

「いい・・・かも・・・しれませんね」


 時東が初めて天辰を受け入れた。

天辰はまさかOKがもらえると思っていなかったので唖然としていたが、このチャンスを逃す男ではない。


「マジで?約束だぜ。次の遠征が終わったらデートな」

「はい。次の遠征が終わったら買い物ぐらいは付き合います」

「ヨッシャ!やる気出てきた」


 天辰がはしゃいでいると、反対のテラスでは黒金が一人でワインを飲んでいた。


「本当に楽しい。この世界は人の死に満ちている」


 そんな黒金の下に銀髪の少女が話しかける。


「お前は何をしているんだ。味方も敵も関係なく魔法を放って殺しまくっているだろ」

「あら?エレオノールさん。あなたにそんな事を言われる筋合いはないんじゃないですか」

「お前からは禍々しい力を感じる。貴様は戦場でいったい何をしてるんだ」

「別に普通に敵を倒しているだけよ。それがいけないことですか」

「貴様が戦場に出るたびに大量に人が死ぬ。しかもお前が使う闇魔法によってだ」

「何か問題でもありましたか?」

「戦場は人が死ぬところだ、だからお前が何をしているかはわからない。だが、貴様が何か悪だくみをしているのなら私が止める」

「ふふふ。まるで正義の味方みたいね。どうしたのかしらね、エレオノールさん」


 黒金は笑ったままエレオノール・シルビアを見つめた。

エレオノール・シルビアは寡黙なので本来はここまで話をすることはない。

 黒金と話したのもこれが初めてといってもいい。

しかし、エレオノール・シルビアの中で黒金クロガネ 飛鳥アスカを放っておいてはいけないと警戒音が鳴り響いている。


「あの男が言った言葉は、私の中にも生きている」

「あの男?ああ、土の勇者君のことかしら」

「そうだ。今思えば彼は戦士だった。唯一先を見越して動いていた。もし彼が生きているなら、私は謝りたい。そして協力したいと思っている」

「そう。別にいいと思うわ。ただ私には関係ない話、あなたの思想を押し付けるのはやめてちょうだい」

「何も企んでいないと言うのだな」

「さぁ?どうかしら」


 黒金は否定も肯定もせずに、只々エレオノールに笑いかけるだけだった。


「私は貴様を監視する。覚悟しておけ」


 エレオノールは吐き捨てるように言葉を投げかけると、その場を後にした。


「ふふふ。エレオノールに砂丘 修二か、退屈はしなさそうね」


 黒金は楽しそうにワインを飲み干す。

翌日4人の勇者はそれぞれのルートで南の島を目指す。

 

 アース中央大陸制覇を目指して・・・

いつも読んで頂きありがとうございます。

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