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大魔王になります6

 若の修行が一段落ついた頃、若の下には八人の鬼人族の子共がいた。

砂丘と白により助けられた子供達だ。

 子供達は最初こそ若を見る度にひれ伏していた。


 白い鬼とは王族の証らしく、鬼は強さの次に血を大切にする。


「王様、おら達をどうなさるので?」


 子供達の中でも最年長者の赤鬼が若に質問する。


「俺は鬼人族を守りたい。そのためにお前達にも力を貸してほしいんだ」


 王族直々の言葉は幼い子供にもやる気を与えたらしい。

子供達は親を殺されて行き場を失っていた。

 そこに現れた王族からの協力要請に子供ながらに喜びを感じた。

彼らにも意志があり、復讐心や怒りがあるのだ。

 そして同じ鬼人を助けたいという思いを持っていた・・・


 子供は呑み込みが早い。

その上、砂丘が子供達に合った修行方法を考えるので上達が早い。

 八人の子供達は才能に溢れていた。

三人の子供達は三日ほどで地脈を感じ、他の者も一週間で感じるようになった。


 そこからは属性別の修行を行う。


 最初から勘の良かった三人は二週間ほどで若に迫るほど強くなった。

子供達に休憩の指示を出して砂丘が若に近づく。


「そろそろお前の修行も最終段階だな」


 砂丘が若の横に立つ。


「音もなく現れるなよ。相変わらず趣味が悪いぞ、修二」

「師匠と呼べと言っているだろ。バカ弟子」

「俺はバカじゃない若だ」

「どっちでもいい。それより、最終試験をしようと思う」

「どっちでもよくねぇよ・・・最終試験?」

「そうだ。お前も水・光に関しては一通り使えるようになっただろ」

「まぁ俺の属性だからな」

「最終試験はそれらのシノビの極意を使って俺に一撃入れることだ」

「はぁ~舐めてんのか、そんな簡単な試験でいいのかよ」


 若はシノビの極意の修行を積む中で本当に血を吐く修行をしてきた。

血を吐くだけでは飽き足らず、自身の中で血液が全て絞り出される思いまでした奥義も会得した。

 今なら砂丘にも勝てると思っている。


「ほう。簡単か、ならばやってみろ。皆集まってくれ」


 砂丘は休憩している全員を集める。

もちろん白も呼んで現在ここにいる。11人全てが揃う。


「皆を集めてどうするんだ」

「見学兼俺とお前の実力を知ってもらう為だ」

「ふ~ん。まぁいいけど」


 若は砂丘に最初に習った地面に手を置く動作をする。

これは若なりの戦闘を始める前の精神統一でもある。

 奥義を会得する少し前から足の裏で地脈は感じられるようになり、奥義を会得してからは、地面に触れていなくても地脈を感じることができる。


「水龍!光龍!」


 若の左手から水で作られた竜が、右手からは光で作られた竜が現われる。

水龍は若の一番得意な技で、広範囲に攻撃ができ触れれば水圧で斬りつけ、逃げる相手には水を細く遠くに飛ばすことで相手を溶かすことができる、便利な技なのだ。

 光龍は攻撃に使えば光の速さのレー

ザービームのようなスピードと威力を誇り、守りに使えばどんな攻撃も反射し跳ね返す。

 二つの龍は若の一番イメージしやすい形であり、一番慣れた攻撃でもあった。


「お前はそれが好きだな。種が割れているのに使うのか?」


 砂丘は強力な二匹の龍を見ても怯まない。

それどころか砂丘も二匹の龍を召喚する。


「闇龍、土龍」


 力みもない自然体で生まれた龍達は若の龍よりも一回り大きい。


「デカいからなんだ、行くぞ」


 若が光龍を放ち先制を狙うが、闇龍が光龍を迎え撃つ。

さらに上空に放った水龍が雨のように酸を降り注げば、土龍がドーム状になり砂丘を守る。

 砂丘からは攻めないが、一撃には届いていない。


「くそっ水柱、氷の刃」


 土龍のドームを貫くべく地面の中から水の柱を発生させて、さらに水を凍らせて刀のようにして土龍に襲い掛かる。

 土龍はドーム状から、動きだし螺旋状に回り出す。

それはだんだん巨大な竜巻になり、水龍が作った酸の雲を弾き飛ばし、水の柱も氷の刃も吹き飛ばす。


「どうした、お前の力はこんなものか」


 いつの間にか光龍も闇龍に飲み込まれて消滅している。

若が龍を召喚したときは驚きの声をあげていた子供達も、砂丘の圧倒的な強さに寒気すら覚える。


「化け物め、追いついたと思っていたのによ。とにかく奥の手だ」


 若は自身の周りを光で覆って目くらましをする。

砂丘もとっさに目を瞑り直撃は避けるが、一瞬だけ若を見失う。


「味なまねを、だが甘い」


 砂丘は見えないのならば全方位防御すればいいと土龍で自身を包み込む。

だが、若の狙いはそれだった。

 螺旋状に動かない土龍に先ほどまでの威力はない。

土龍を覆うように大気の温度を冷やしていき、砂丘がいる場所を凍りつかせる。


「奥義銀世界」


 それは絶対零度の世界、全てを凍らせる奥義は蜷局を巻いた土龍も凍らせる。

更に極限まで圧縮した光龍を手のひらから放つ。

 それは速度・威力共に若が出せる最高のものだった。


 凍った土龍を貫き、砂丘に襲い掛かる。


「見事」


 若の後ろから砂丘の声がしたときには、若は意識を失っていた。


「なかなかに良い作戦だ。自分が使える技で最高の戦い方をしたな。だが技を知られていることを忘れてはならない。技を知られているということは相手に対策を想定されながら戦わねばならないということだ。それでも相手を上回る戦いが必要だな。わかったかガキ共」


 砂丘の言葉に唖然としていた子供達。


「返事はどうした」


 砂丘の声を聞いて子供達が我に返る。


「はい!!!」


「よし。修行に戻れ」


 子供達を修行に戻し、若を目覚めさせる。


「う、うん?」

「気が付いたか?」

「修二は本当に化け物だな」

「おう。今頃気付いたのか?」

「いや。最初から知ってたよ」

「そうか。試験は合格だ」

「はっ?俺の攻撃は当たってないぞ」

「当たってはいないが、お前は俺の意表をついて光で目くらましをした。あれで俺は一瞬お前を見失った。力が均衡している場合なら、それは命取りになる。だから合格だよ」

「本当にいいのか?」

「おう。それにな合格祝いにお前に名前もくれてやる」

「名前?俺は若だぞ」

「いつまでも若じゃカッコが悪いだろ、だから名前だ。今日からお前は鏑木カブラギ 絶貴ゼッキだ」

「カブラギ ゼッキ?」

「そうだ。それが今日からお前の名前だ」

「俺の名前・・・」


 若は正直戸惑っていた。

だが砂丘から与えられた名前は嫌じゃなかった・・・

いつも読んで頂きありがとうございます。

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